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【2024年度】いまさら聞けない!103万の壁、130万の壁どちらが得?

103万の壁と130万の壁って何?どちらが得?結婚して扶養内で働こうとすると、出てくるこのお悩み。制度も少しずつ変わっているため、最新情報にアップデートしておくことが重要です。

今回の記事では2024年度の最新版として、自分に合った選択肢を選べるように、年収の壁の内容から「うっかり130万以上稼いだらどうなるの?」といった疑問までわかりやすく解説します。

103万円の壁で働く3つのメリット

「扶養内で働くためには、年間の給料が103万円以内じゃないとダメ」というイメージが強いかもしれません。まずは103万円の壁を超えないメリットからみていきましょう。

所得税がかからない!

1年間の給与収入が103万円以内の場合、所得税を払う必要がありません。

所得税の計算式は
1年間の収入―(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)×所定の税率
です。

つまり収入が103万円以内であれば、税率が何%だとしても0円となり、所得税はかかりません。

夫にもメリットあり!夫は「配偶者控除」を受けられる

さらに、妻が夫の扶養に入っている場合、夫は「配偶者控除」を受けることができます。つまり、夫が支払う所得税も安くなるというわけです。

ただし、2018年の法改正により、納税義務者(この場合、夫です)の合計所得により、配偶者控除の金額が変更されています。

夫の合計所得控除額(一般)
900万円以下38万円
900万円超〜950万円以下26万円
950万円超〜1,000万円以下13万円
1,000万円超〜0円

夫の会社から「家族手当」が支給されることも

夫の勤務先によっては、家族手当が支給されているケースがあります。特に、年末調整の際、103万円をボーダーラインとして手当を支給するかどうかを決めている会社が多いです。現在家族手当を支給されている場合は、あらかじめ勤務先に確認しておきましょう。

130万円の壁で働くメリット・デメリット

130万の壁とは、社会保険料を納めるかどうかです。103万円から130万未満まで給与をあげるメリットとデメリットを紹介します。

メリット:収入が増える

103万円の壁を超えて働くと、もちろん収入が増えます。ここで多くの方が心配するのは、所得税ではないでしょうか。ただし、所得税がかかるのは実は、103万円を超えた分のみなんです。

(例)120万円

120万円-103万円(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)=17万円

所得税の税率は、金額によって変わります。

今回の例となる17万円であれば、所得税は5%です。8.500円の所得税と179円の復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を支払う必要があります。

17万円―(8,500円+179円)=161,321円

しかし、実際の収入は増えているため、家計にゆとりが生まれる点は大きなメリットといえます。

デメリット:所得税の発生、労働時間の増加

メリットの部分でもお伝えしましたが、103万円を超える分に対しては所得税が発生します。103万円以下の収入時には、所得税がかからなかったため、気持ちの面でデメリットだと感じる方もいることでしょう。

また、同じ時給で収入を増やそうとすると、これまで以上に労働時間を長くする必要があります。

令和4年10月1日時点での東京都最低賃金である1072円を基準に考えてみましょう。

給与収入103万円の場合、労働時間は約960時間です。しかし、130万円の場合は約1212時間必要です。その差は約252時間。つまり、これまでと比べて、1ヵ月につき約21時間多く働く計算です。

収入が増えるメリットがある一方で、出勤日数や労働時間が増えるため、体力面・精神面での問題が発生する可能性も考えられます。

103万、130万の壁のポイントは「税金」と「社会保険」

ここまで103万、130万の壁について解説しましたが、実際にはさらに細かく壁があることをご存知でしょうか。全ての壁のポイントは「税金」「社会保険」に関係しています。

 税金社会保険
100万円の壁住民税が発生
(※自治体により異なる)
 
103万円の壁所得税が発生 
106万円の壁 勤務先で社会保険加入の可能性が発生
(※働き方や事業所規模により異なる)
130万円の壁 夫の社会保険の扶養から外れる
(勤務先で社会保険加入または個人で国民年金・国民健康保険に加入)
150万円の壁夫が配偶者(特別)控除を満額受けられる上限 
201万円の壁
※正式には201万6千円
夫が配偶者特別控除を受けられる上限 

上記の表内容を、ひとつずつ説明していきます。

100万の壁:住民税の課税対象

一般的には、給与収入100万円を超えると、妻本人に対し住民税が発生します。

ただし、自治体によっては住民税が発生するボーダーラインはさまざまです。中には、93万からというところも。パートの場合、給与収入100万をひとつの目安と考えた上で、あらかじめお住まいの自治体に確認することをおすすめします。

103万の壁:所得税の課税対象

前述しましたように、103万円を超えた分に対しては所得税を納税する必要が生まれます。

ただ、よく質問される「交通費や通勤手当は、103万に含まれる?」の答えは「非課税分の交通費や通勤手当は含まれない」です。

ただ、自宅から勤務先までの距離が近いけれど通勤手当が支給されている場合は、非課税枠を超えている可能性があります。あらかじめ計算しておくことをおすすめします。

【非課税分って?】

  • 公共交通機関(電車・バスなど)、有料道路を車通勤する場合→月15万円まで
  • 有料道路を使用しない車通勤、自転車通勤の通勤手当→片道の距離による

自動車・自転車通勤の非課税枠は、下記の通りです。

車(一般道路)・自転車の通勤距離1ヵ月あたりの非課税限度枠
片道55km以上31,600円
片道45km以上55km未満28,000円
片道35km以上45km未満24,400円
片道25km以上35km未満18,700円
片道15km以上25km未満12,900円
片道10km以上15km未満7,100円
片道2km以上10km未満4,200円
片道2km未満0円(全額課税)

106万の壁:社会保険の加入対象になる可能性あり

給与収入106万の壁は、健康保険・厚生年金保険の加入の壁です。給与収入106万円以上かつ社会保険の加入条件を満たすと、夫の社会保険の扶養から外れてしまいます。

さらに、令和4年(2024年)10月より、加入条件が大きく変更されました。

【社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件】

  • 被保険者の人数が常時101人以上の会社で働いている
  • 月収8万8000円以上(年収106万円以上)
  • 継続して2ヶ月以上の雇用見込みがある
  • 週20時間以上働いている
  • 学生ではない

さらに令和6年10月から、さらに健康保険・厚生年金保険の適用が拡大されます。

令和6年(2025年)10月〜
事業所規模常時51人以上

現在の勤め先の規模を確認した上で、自分が当てはまるかどうかをチェックしておきましょう。

130万の壁:社会保険の加入義務が発生

130万を超えると次の2点が変わります。

  • 夫の社会保険上の扶養から外れる
  • 妻に社会保険に加入する義務が発生する

【パート・アルバイト先の社会保険に加入できない場合は?】

週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の3/4未満の場合は、勤務先の社会保険に加入することができません。その場合は、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

150万の壁:夫にも影響あり!「配偶者控除」が変化

150万の壁は、扶養者である夫が受けられる配偶者(特別)控除額に影響します。

妻の給与収入150万以下150万超
夫が受けられる配偶者(特別)控除額最大38万円最大36万円(妻の収入が増えるにつれ段階的に減少)

控除額は、150万超から段階的に減少し、妻の収入が201.6万円以上になるとゼロになります。

※配偶者控除及び配偶者特別控除は、扶養者である夫の合計所得金額が1,000万円を超える年は受けられません。

働き損はイヤ!ボーダーラインは「130万の壁」

働き損にならないためのボーダーライン「130万の壁」イメージ

夫の扶養内で働く場合、130万の壁をひとつの目安にするとよいでしょう。その理由は、社会保険料の支払いです。

勤務先が健康保険の加入条件を満たしていない場合、国民年金と国民健康保険を納める必要があります。

国民健康保険料は自治体、年齢などの条件により異なりますが、令和5年度の国民年金保険料は、16,520円です。

ここでは健康保険料と国民年金保険料を月額3万円と仮定しましょう。年間に36万円払うことになれば、その分手取りが減ります。

130万円であれば、納めるのは所得税と住民税のみ。しかし131万円になるだけで「131万円―36万円=95万円」となり、手取りは大幅ダウンします。もちろん、所得税と住民税も納めなければなりません。

もし130万円を少し超える程度ならば、180万円以上働いた方が世帯収入も増え、収入面でのメリットは大きくなります。

「130万円の壁」は「106万円の壁」になることも

「130万円の壁」ですが、実際にはパート勤務先の規模によっては「106万円の壁」になることに注意してください。

令和6年10月から、さらに健康保険・厚生年金保険の適用範囲が拡大されるためです。

特に派遣社員として働いている方は要注意!派遣元の企業の被保険者の数が一定数(現在は101人ですが、令和6年以降は51人)を超えている場合、例えば派遣先が従業員10名の事務所だとしても、社会保険の加入条件を満たすことになります。

※派遣元企業の被保険者

  • 社会保険に加入する派遣労働者の数
  • 派遣元企業の正社員

派遣社員として勤務している方は、早めに派遣元に相談しておくことをおすすめします。

うっかり「130万の壁」を超えたらどうなる?

130万の壁を超えると夫の扶養から外れるため、夫は会社に「扶養控除等移動申告書」「被扶養者異動届」を提出する義務があります。

もし年末調整を終えた後に、扶養から外れることに気づいた場合も、「給与所得者の源泉徴収票」が交付される翌1月末までに提出することで、年末調整のやりなおしが可能です。

ただし、一時的な事情による収入増加の場合、扶養認定が取り消されないこともあります。最終的な判断は、健康保険組合が行うため、まずは相談することをおすすめします。

103万・106万・130万の壁を理解し働き方を探そう

扶養内パートで働くためには、扶養の範囲を理解し「自分はいくらまでなら稼いでも大丈夫か」を把握しておくことが大切です。せっかく頑張って働いたのに、世帯年収が減ってしまった!なんてことになったら悲しすぎますよね。

昔から比べると、被扶養者の認定要件はどんどん変わっています。常に最新情報をキャッチし、損をしない働き方を続けていきましょう。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。