値上げされたばかりの電気料金やガス料金。これで終わりかと思えばそうではありません。ロシアのウクライナ侵攻によって、ただですら高騰していたエネルギー価格がさらに上がりそうな気配です。エネルギー代を抑える方法は2つ。使用料の節約と料金の削減です。高騰を続ける電気代やガス代、電力会社やガス会社を変えることで安くなるのでしょうか?
まずは電気やガスなど、エネルギーの使用を減らす
3月3日の会見で、岸田首相は「エネルギー価格高騰による我が国経済への悪影響を少しでも減らすべく、これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を少しでも減らす努力をしていただくことが大切だ」と国民に呼びかけました。
政府が具体的に行おうとしているのは、公用車の電動車への置き換えや、庁舎の照明のLEDへの変換、再生可能エネルギー電力の調達などです。あらためて見ると、どれも個人単位でできそうなことばかりです。
毎日使用する電気やガスの節約。「照明はこまめに消す」「エアコンの温度設定を1度下げる」といったことはすでに取り組んでいるという人も多いでしょう。予算が許せば、太陽光発電を取り入れたり、オール電化の家に住み替えたり、EVやHVなどのエコカーに乗り換えるといった手もあります。こんなふうに、まずは生活を見直して使用するエネルギーを減らしましょう。
新電力への乗り換えで電気代を抑える
2016年4月の電力自由化で、現在国内には約700の新電力(新規参入した電気事業者)が存在します。いまだ大手の電力会社と契約している人が多いいっぽう、こうした新電力に乗り換えたという人も少なくありません。
新電力の魅力は、なんといっても大手と比べて料金が安いこと。各社ともにさまざまなプランや割引サービスを用意して顧客獲得に励んでいます。賢い人はそのときどきのニーズやライフスタイルに合わせて、自分に最適な電力会社に乗り換えています。
新電力への乗り換えは超簡単!
電力会社の乗り換えというと「面倒くさそう」と思う人もいるかもしれません。が、実はとても簡単です。必要な手続きは、ネットで乗り換え先の電力会社に申し込むだけ。携帯電話会社を乗り換えるときなどと同様、現在契約中の会社に自分から連絡する必要はありません。申し込みの手続き自体にかかる時間も10~30分程度。実際に乗り換えが完了するのは平均して約3週間後からとなります。
電気代はいくら安くなるの?
気になるのは、乗り換えによっていくら安くなるのか。これは電力会社やその人の電気の使い方によって変わるので一概にいくらとは言えません。ただ、大手と比較して年間数千円以上安くなることは確実なので、乗り換えして損をしたということにはならないはずです。
むしろ注意したいのは、どの新電力に乗り換えるか。たいていの新電力のHPでは現在の電気代から乗り換えた場合の料金がシミュレーションできます。また数社を一括で比較できるサイトも存在します。そういったシミュレーションや比較をいくつか試してみると、自分に合った会社が見つかるはずです。
参考までに、人気の新電力をいくつか並べておきます。
- CDエナジーダイレクト 10Aから契約可能で一人暮らしでも利用しやすい
- ENEOSでんき 電気使用量が多めの世帯向け。ガソリン代も節約可
- Looopでんき 基本料金が0円で電気使用量が多めの世帯向け
- あしたでんき 東京電力グループの新電力。基本料金0円
- 東京ガス ガスと電気のセットで割引に
- おうちでんき ソフトバンクが運営。支払いは携帯料金と一緒
- 楽天でんき 基本料金0円。楽天ポイントが貯まる(2024年3月現在、新規申し込みを一時停止中)
※2024年3月現在、ウクライナ情勢、福島県沖地震等の諸事情により電力調達の先行きが不透明になっているため、複数の新電力が電力小売り事業からの撤退、申し込みの一時停止などを表明、実施しています。ご検討の際は各社ホームページ等にて事業継続か否かをご確認ください。
ガス代も見直そう
2016年の電力自由化に続き、2017年4月にはガス(都市ガス)自由化もスタートしました。ガス会社のなかには新電力も含まれていて、そういった会社では電気とガスをセットにしたお得なプランを提供しています。またLPガス(プロパンガス)は以前から自由化されています。
最近はテレワークの普及など働き方の変化によって、都市部から郊外への移住が増えています。なかには引っ越しで使用するガスが都市ガスからLPガスに変わったという人もいるでしょう。そうした人たちがびっくりするのがLPガスの料金。都市ガスとLPガスでは同じように使用しても料金が2倍から3倍違うなどということがよくあります。知らずに引っ越した人は毎月のガス代に頭が痛くなることでしょう。
住んでいる地域に都市ガスの導管が通っていなければLPガスを使うほかありません(自宅をオール電化に変えるという方法はあります)。しかし、もし近くまで都市ガスが通っているのなら、LPガスから都市ガスに切り替えるという選択肢があります。そうした場合、工事費や給湯器などの設備の交換は原則自己負担となりますが、長い目で見ればガス代の節約になります。
例えば、年間のガス代が都市ガスの頃に比べて3万円高くなった場合。もし30万円で都市ガスへの切り替えができれば10年で元がとれます。5万円だったら6年で済みます。
工事費は分割払いできることも多いので、切り替えを検討したい人は自分の住んでいる地区を担当している都市ガスの営業所や支店に一度相談してみるといいでしょう。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。