新型コロナウイルスで影響を受けた中小法人や個人事業主を対象とした事業復活支援金の申請が1月31日から始まっています。この制度では、対象となる中小法人に上限最大250万円、個人事業主に上限最大50万円が給付されます。申請にあたっては、登録確認機関による事前の確認が必要となります。
事業復活支援金の給付対象は?
事業復活支援金の申請期間は2024年1月31日~5月31日。すでに多くの法人や事業主が申請を行っているいっぽう、「忙しくてできない」「用意する書類が揃わない」「手続きが煩雑」などの理由でまだ申請ができていない人も多いようです。
給付対象となるのは、下記の①と②を満たす資本金10億円未満の中小法人・個人事業主です。
①新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
②2024年11月~2024年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月~2024年3月の間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して50%以上または30%以上50%未満減少した事業者
簡単に言うと、コロナ禍の影響によって、直近5ヵ月間のうち1ヵ月でも去年や一昨年、あるいは3年前の同じ月と比べて売り上げが7割以下になっている月があれば申請できるということです。
給付額は売上高の減少率などによって決まります。
個人事業主の場合は減少率が30%以上50%未満なら30万円、50%以上なら50万円。法人は減少率に加え、年間の売上高次第で60万円~250万円が給付されます。
事業復活支援金の申請方法はちょっと面倒?
申請方法は対象者によって2種類に分かれます。過去に実施されている一時支援金または月次支援金をすでに受給されている人(ホームページにマイページを持っている人)は、必要書類を揃えて申請するだけで済みます。
これに対し、一時支援金または月次支援金をもらっていないという人は、申請まで以下にあるようないくつかのステップを踏まねばなりません。
- 事業復活支援金のホームページの仮登録画面にメールアドレスや電話番号を入力し、申請IDを発番してもらう(アカウントを作成する)
- ホームページで登録確認機関を検索する
- 登録確認機関にメールまたは電話し、事前予約する
- TV会議、対面、電話などによる事前確認を受ける
- 事前確認終了後、マイページから必要書類を添付して申請する
登録確認機関は、不正受給や給付対象を誤って理解したまま申請してしまうことの対応として、申請希望者が「事業を実施しているか」、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けているか」、「給付対象等を正しく理解しているか」等について事前の確認を行う機関となります。
2020年に実施された持続化給付金では給付条件を満たしていない不正受給が多数発覚しました。今回はスムーズな申請を行うと同時に、こうしたことを避けるために登録確認機関を設置し、事前確認を行うことになったのです。
登録確認機関は、銀行、商工会、税理士、行政書士など
登録確認機関に指定されているのは、日本全国にある銀行、商工会、商工会議所、農協、漁協、税理士事務所、行政書士事務所、中小企業診断士事務所などです。申請者は事前確認に際し、自分で登録確認機関をさがさなければなりません。融資などの取引先である銀行や会員になっている商工会、または顧問になっている税理士事務所などがある場合は、そうした登録確認機関に事前確認を依頼するといいでしょう。
問題は、フリーランスなどでとくにそうした登録確認機関がない場合です。その場合は、前述したように事業復活支援金のホームページにある検索機能などを使ってさがしてみるといいでしょう。一覧とともに各機関の電話番号やメールアドレスが確認できます。
事業復活支援金の事前確認にかかる費用は?
登録確認機関に対しては、中小企業庁から1件2,000円の事務手数料が支払われています。このため無料で事前確認を行ってくれるところもありますが、なかにはそれとは別に対価(報酬)を請求している登録確認機関もあります。
無料か有料か、有料ならいくらなのか、これは登録確認機関によって違いがあるので、電話やメールを入れる際に確認するといいでしょう。連絡をする前に相手先のホームページを閲覧するのもおすすめです(中小企業庁からは各機関に対し、有料か無料かをホームページに明記してほしいという協力要請が出ています)。
どの登録確認機関を選ぶといいのか?
たくさんあって迷ってしまう登録確認機関。連絡を入れるときは以下の点に留意してください。
- 銀行などの金融機関は取引実績があれば確実。ない場合(たんに口座を持っているだけ)だと受け付けてもらえない可能性がある
- 商工会や組合などは会員のみ受け付けというところが多い
- 税理士事務所は3月は繁忙期
迷ったときは、とりあえず近くにある登録確認機関に相談、問い合わせをしてみるといいでしょう。いくつかの登録確認機関にメールを送ってみるのもいいかもしれません。
事業復活支援金申請の事前確認に必要な書類
事前確認には申請IDとともに以下の書類が必要となります。
①本人確認書類/中小法人等は履歴事項全部証明書
②収受日印の付いた以下の期間分の確定申告書の控え
・中小法人等の場合 2019年11月、2020年11月、基準期間を含むすべての事業年度
・個人事業主等の場合 2019年、2020年、基準期間を含むすべての年分
③2018年11月から対象月までの各月の帳簿書類(売上台帳、請求書、領収書等)
④2018年11月以降のすべての事業の取引を記録している通帳
⑤代表者又は個人事業者等本人が自署した「宣誓・同意書」(事業復活支援金のホームページからダウンロード可)
これとは別に、事前確認後の申請のときにもほぼ同様の書類が必要となります。
事業復活支援金の申請書類がうまく揃わないときはどうする?
法人の場合は書類を揃えるのに問題はないかもしれませんが、フリーランスの人など、すべてを完璧に揃えることができないというケースもあるかもしれません。
例えば、以下のような場合。
・売上台帳の作成は義務化されているものの、白色申告の場合は提出の必要がないため、いままでちゃんと付けてこなかった
・コロナ禍で外に出ることが減って、気がついたら通帳の記載項目が増えすぎて「おまとめ」になっていた(ひとつひとつの取引が記載されていない)
・ネットバンク利用でそもそも通帳がない
・仕事相手(顧客、クライアントなど)とのお金のやりとりが現金で行われている
・請求書や領収書がない
こうした場合は、売上台帳を過去にさかのぼって作成するなど、できるだけのことをした上で、連絡をとった登録確認期間に相談してみるといいでしょう。書類が不足していても、そこに合理的な理由があれば(なぜなのか、きちんと説明できれば)要件を満たしていると判断してもらる場合があります。
コロナ禍で売上が減少した事業を復活させるチャンス。この機会を逃したくないですね。
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事業復活支援金
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。