税金にはさまざまな種類がありますが「消費税」「固定資産税」などのわかりやすい税金に比べ「住民税」は、一体何のために払っているのか、どうやって計算するのかわかりにくいと感じることはありませんか?今回の記事では、住民税とは一体何か、子供や中学生でもわかるように簡単にまとめて解説します!
住民税の使い道は「生活の行政サービス維持」
私たちは日常生活を送る上で、消防・救急、ゴミ処理、教育、福祉、道路の建設、病気予防など、さまざまな行政サービスを受けています。住民税は、こういったサービスを維持するために使われているお金です。
すべてが住民税でまかなわれているわけではありませんが、簡単にいうと「地域(都道府県、区市町村)に住む人たちがお金を出し合って、自分たちの地域サービスを維持しましょう」ということです。
ここからはさらに詳しく税の違いや住民税の金額がどのようにして決まるのかを解説します。
「市民税」「住民税」「市税」の違いは?
市民税+県民税=住民税といいます。住民税は、毎年1月1日に住民登録がある場所に対し、都道府県税、区市町村税を納める仕組みです。
一方、市税とは、市に納める税金全てを表す言葉です。市税の中には、もちろん市民税も含まれます。
【市税の例:一覧】
- 市民税(法人市民税・個人市民税)
- 軽自動車税
- 固定資産税
- 市たばこ税
- 入湯税
- 国民健康保険税
住民税の額はどのようにして決定する?
令和4年の住民税の場合、令和3年1月から12月までの所得に応じて決定します。納税先は、令和4年1月1日時点での移住地です。
住民税は「所得割」+「均等割」にて計算します。所得割は、前年度の課税所得に応じて一律10%(道府県民税4%+市町村民税6%)を納めます。ただし、移住地が政令都市の場合は、道府県民税2%、市民税8%と税率が異なります。また均等割は、言葉が示す通りほぼすべての人に対し一律に課税されます。
住民税非課税とは?
次のいずれかの条件を満たした場合、所得割、均等割の両方が非課税となり税金が免除されます。世帯全てが非課税の条件を満たしている世帯を「住民税非課税世帯」といいます。
- その年の1月1日時点で生活保護を受けている人
- 未成年者、障がい者、寡婦、ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下(所得が給与所得のみの場合は、給与収入が204万4000円未満)
- 前年の合計所得金額が、各地方自治体で定められた金額以下の人
1、2の条件はわかりやすいですが、3に関しては、それぞれの自治体により基準金額が異なる点に注意が必要です。
東京都の例
35万円×(本人+被扶養者の人数)+21万円(※)+10万円
※21万円は、被扶養者がいる場合のみ加算
ここで特に気をつけたいのは、結婚し扶養控除内で働いているケースです。
東京都内(既婚・扶養家族なし)の場合を例に挙げてみましょう。数万円の差で納める税金が大きく変わることがわかるかと思います。
前年1年間の給与収入 | |
100万円以下 | 住民税・所得税の両方が非課税 |
102万円 | 住民税課税、所得税非課税 |
103万円 | 住民税・所得税の両方課税 |
ただし、上記は東京都の例です。地域によっては、98万円から住民税の納税対象になるケースもあります。
最初にお伝えしましたように、住民税は地域サービスの向上などにも使用されているため「非課税の枠内で抑えるべきだ」というわけではありません。ただ、納税することで手取り金額は大きく変わります。
また前年度の給与収入で住民税は変わるため、後から気づいても、どうすることもできません。あらかじめ計画的に勤務計画を立てることをおすすめします。
個人住民税の税額シミュレーションが役立つ!
区市町村によっては、個人住民税の税額シミュレーションを提供しているケースがあります。例えば、神奈川県横浜市「個人住民税 税額シミュレーション(税額の試算・申告書作成)」、東京都中央区「個人住民税額シミュレーション」、北海道札幌市「住民税額シミュレーションシステム」などが挙げられます。
シミュレーションにより計算される額は、確定額ではありませんが「今年の自分の住民税がどれくらいか」を知るには便利です。
住民税の支払い方【特別徴収】【普通徴収】
住民税の支払い方法は「特別徴収」「普通徴収」の2種類です。
特別徴収 | 普通徴収 | |
対象者 | ・給与所得者 | ・個人事業主 ・退職後、次の勤め先が決定していない人 ・退職後次の勤め先は決定しているが、手続き中の人 ・特別徴収から普通徴収への切り替えが認められた人 |
支払い方法 | ・毎月の給与からの天引き | ・年に4回(6月・8月・10月・1月)または一括 |
会社員、アルバイト、パート勤務で住民税が課税される人は、特別徴収が一般的です。一方、個人事業主や副業が会社にバレたくない給与所得者のように普通徴収を希望している人などは、お住まいの市区町村から届く「納付書」に従い、納税します。
ちなみに個人事業主である私は、年に4回支払いをしています。収入が同額であれば、普通徴収、特別徴収どちらも納税額は同じです。しかし、1回分の支払額が増えるため、最初は、負担額が増えている印象を持っていました。
また特別徴収の場合は、給与から天引きされるため、納税し忘れるといったことは起こりにくいです。しかし、普通徴収の場合は自分で納付書を銀行窓口やコンビニに持参し、払わなければなりません。
うっかり期限が過ぎてしまうと、住民税の滞納の扱いにもなるため、注意が必要です。次の就職先が決まるまでの一定期間だけでなく、個人事業主のように普通徴収を継続する場合は、住民税の口座振替手続きを行なっておくと便利です。
自治体によっては住民税をクレジットカードで払うことが可能ですが、別途手数料が発生します。クレジットカード払いを希望する場合は、あらかじめクレジットカード払いによるポイント還元率と、手数料を調べた上で、最適な方法を選ぶことをおすすめします。
住民税がふるさと納税で得する理由
「ふるさと納税をすると住民税がおトクになる」といった話を聞くことが増えていませんか?ふるさと納税をすること事態はメリットが多いものの、間違った知識のまましてしまうと、おトクになるどころか家計にマイナスの影響を与えてしまう可能性も!
ふるさと納税と住民税の関係について見ていきましょう。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体を選び寄附をする仕組みのことをいいます。寄附金の使い道を選べるほか、寄附金内の一定額以内の返礼品を選ぶことができます。ここまではイメージがしやすいのではないでしょうか。
しかし、最も大きなメリットは、寄附をした分だけ税金が控除できる点です。
ふるさと納税による住民税・所得税控除の仕組み
住民税の控除は「基本分」「特例分」の2種類があります。
基本分=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
※控除の対象となるふるさと納税額の上限は、総所得金額等の30%
特例分=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
※ただし、上記は住民税所得割額の2割を超えない場合の計算式です。2割を超える場合は、住民税所得割額×20%として計算します。
ちなみに所得税の控除は、(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」により計算します。
※控除の対象となるふるさと納税額の上限は、総所得金額等の40%
ふるさと納税で住民税の納税額を減らしたい際の注意点
ふるさと納税は「寄附をすればするほど住民税の節税になる」わけではない点に注意しましょう。所得税の場合、控除対象となるふるさと納税の寄付額は総所得金額などの40%、住民税の場合、総所得金額などの30%と決まっています。
またふるさと納税自体は、1月から12月までどの期間にも行うことは可能ですが、総所得金額がはっきりしない時期から多額の寄附をすることは、あまりおすすめしません。総所得の金額によっては、2,000円以上の自己負担金が発生するためです。
ただ、年末が近づくと、寄附者も増えるため、人気の返礼品が品切れになってしまうことも考えられます。クレジットカード払い以外の納税方法は、12月31日までに締め切られるケースもあるため、あらかじめ最終申し込み日を確認しておきましょう。早期の寄附のメリット・デメリットを考えた上で、自分にとってのベストなタイミングを見つけてください。
住民税がホントに控除されているか確認する方法
ふるさと納税により正しく税金が控除されているかを確認することができます。
ワンストップ特例制度を使用した人
- 控除額の全額が住民税から控除
- 住民税決定通知書の「税額控除額」に記載
市町村の「税額控除額」+道府県の「税額控除額」=ふるさと納税額から2,000円を引いた額であれば、正しく控除が行われています。
確定申告をした人
- 住民税と所得税から控除される(合計額はワンストップ特例制度を使用した場合と同じ)
- 確定申告書の課税所得金額を確認後、(ふるさと納税額-2,000円) ×「所得税の税率」×1.021(復興特別所得税)にて計算
- 住民税の控除分は、住民税決定通知書の「税額控除額」に記載
こちらも所得税控除分と住民税控除分がふるさと納税額から2,000円を引いた額であれば、正しく控除が行われています。
もちろん、ふるさと納税以外にも寄附をしている場合は、控除額が増えます。
住民税は“前年度の所得に対して”課税されるため注意
所得税は今年の所得に対する税金ですが、住民税は前年度の所得に対して発生します。つまり、仕事を辞めて収入がない状態だとしても、6月になると住民税の納付通知書が届きます。
これまで特別徴収で住民税を払っていた方の中は「住民税を支払っている意識」が乏しい方もいるのではないでしょうか。実は私もそうでした。しかし、税金を理解することは、節税意識の高まりにもつながります。住民税の納付書が届いた時点で慌てなくて良いように、住民税の仕組みや計算方法を知った上で、準備をしておきましょう。
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。