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中古物件を買ってリフォームしてみた リフォーム編その⑤

人生初のマイホーム購入は、中古物件をリフォームすることに。引き渡しまであと半月ちょっと、というところで事態は急展開。見積もりのたびに上がっていくリフォーム費用に悲鳴をあげた夫婦は、予定していた工事をすべてキャンセル。限られた予算の中でできることだけをやっていくことに決めました。ボロボロの中古物件の行く末は? マイホーム購入をめぐるドタバタ劇は佳境へと入っていきます。

リフォームと引っ越しで「やるべきこと」

引っ越しとリフォーム費用は合わせて300万円。そう決めてリフォーム業者さんに依頼していた工事をキャンセルした筆者と妻。丸投げ状態に近かったいままでとは違い、今度は必要なすべてを自分たちで進めていかねばなりません。

引き渡しから引っ越しまでの間に、やらねばならないことを整理してみました。

〈工事関連〉

  • 水回り(システムキッチン、バス、トイレ、洗面台等の交換工事)
  • 壁のクロス張り替え
  • 1階トイレ、脱衣所の床の張り替え
  • 2階和室の畳の張り替え
  • 1階リビングの窓ガラス交換、網戸交換、2階洋室の網戸交換
  • エアコンの購入(3台分)、取り付け(4台分)
  • 都市ガスの引き入れ工事と契約
  • インターフォン取り付け
  • 表札の交換
  • インターネット、電話の移設

〈引っ越し〉

  • 引っ越しの準備
  • 引っ越し業者の手配
  • 現在借りている家の管理会社(不動産業者)への連絡

〈手続き関連〉

  • 区役所に転出・転入届とマイナンバーカード等の住所変更
  • 運転免許証の住所変更
  • プロパンガス会社の解約手続き
  • インターネット、電話の移設手続き
  • 電力会社に住所変更手続き
  • 水道局に住所変更手続き

〈契約関連〉

  • 住宅ローンの本申し込み
  • 引き渡しの契約
  • 売主さんへの入金
  • 火災保険の加入

〈その他〉

  • 新居の庭の草刈り・庭掃除
  • ハウスクリーニング
  • 新居の残置物(プロパンガスのボンベ等)の処理

ざっと並べただけでもこれだけのことがあります。もちろん、この他にも銀行やクレジットカード会社、保険会社の住所変更、保育園に転居の報告など、やることは満載です。工事にしても、まだまだ不測の事態が発生するかもしれません(実際、発生しました)。

他にも引っ越しとは直接関係はないものの、この半月ほどの間には町内会の理事業務の引き継ぎや、突然の親戚の逝去、クルマの車検など、いろいろなことがありました。一児の親である共稼ぎ夫婦にとって時間はいくらあっても足りないといった感じでした。

餅は餅屋にまかせる作戦

たくさんある「やらねばならないこと」リストの中でも、最大の課題は工事関連の項目です。他のことは自分たちでできても、物の手配や工事はプロに頼むほかありません。

今回の買物は「古民家を買って自分たちでDIYしてリノベーション」というようなものではなく、あくまでも限られた時間と予算の中での「中古住宅を買ってリフォームする」といったものです。主体となって動くのは自分たちですが、肝心のところは「餅は餅屋にまかせる」作戦でいくのがベストでした。

問い合わせから内見、申し込みという流れのなかで、途中まではなんの疑いもなくすべての工事をリフォーム業者におまかせするという方向でいた自分たちでしたが、調べてみると、水回りなら水回り、壁なら壁、とそれぞれ専門業者に頼んだ方が費用が安く済むということがわかってきました。

「水回りはここ」「壁は壁屋さんに」と数えてみたところ、アポを入れる業者は、引っ越し業者を含めて7~9社はありそうです。工事の項目を細分化して、ネットで検索してみると、それぞれの専門業者がたくさん見つかりました。

1社のリフォーム業者にすべてをお願いするのと違って、やりとりがかなり煩雑なことになりそうですが、筆者と妻は「たいへんだ」と顔をひきつらせながらも「こういうのもおもしろいじゃない」と頷きあいました。リフォームに関するすべてを「楽しむ」こととしたのです。

残りは2週間、綱渡りのスケジュール

引き渡しの日まであと2週間という6月中旬の月曜日、Tさんのリフォーム会社に借りていた壁紙の見本を宅配便で返送しました。

夕方は最寄駅近くの販売会社に行って火災保険の契約。その場で担当のIさんの話が「ちょっと申し訳ないのですが、ローンの借入額が5万円増えました」と、新たに計算した住宅ローンの見積書を見せてくれました。

5万円の使途が何かは聞かずともわかります。キャンセルしたTさんの会社への支払いです。工事を完全にキャンセルしたとはいえ、Tさんの会社にはリフォームの下見や水回りのメーカーのショールーム訪問、他にも筆者たちの見ていないところで屋根や基礎のチェック、見積書の作成などをしてもらっていたので、これくらいの金額は発生して当たり前です。なのでこの5万円は気持ちよく払うこととしました。

火災保険の契約を終えて外に出ると、妻が「やばいよ」と笑顔で言いました。
「さっきもらった住宅ローンの見積もり見た? 毎月の支払いが6万5000円くらいになっていたよ」
「リフォームのローンがなくなると、そんなもので済むんだね」

6万5000円なら、現在の家賃(8万9000円)と比べて2万4000円安くなります。生活者としてたいへん助かります。

そのまま買物をしていると筆者の携帯電話に「月曜日に電話をくれる」ということになっていたガス会社の担当者から電話が入りました。

Yさんという名前の担当者さんは、こちらの用件がプロパンガスから都市ガスへの切り替え工事だと確認すると「現地の内側と外側を見積もりをさせていただきたいのですが」と言ってきました。

横でそれを聞いていた妻が、すばやくさっきまでいた販売会社に電話をしてIさんにそれを伝えました。まだ引き渡し前ということもあって、物件の内部に入るにはその都度販売会社から鍵を借りねばならないのです。

Iさんによると「鍵はご足労をおかけしますが業者さんにうちの支店まで直接取りに来てもらえますか」とのこと。引き渡し当日までは買主は鍵を持つことができないというルールです。

Yさんとは同じ週の金曜日に現地で打ち合わせをすることにしました。聞くと、ガス工事は着手してガスが通るまで長くて1ヶ月ほどかかるといいます。ということは、ガスが使えるのは7月末。引っ越しはできればガスが通ってから(お風呂やシャワーが使えるようになってから)にしたいものです。現在借りている家は7月いっぱいで退去するつもりだったので、ガスが通ったと同時の引っ越しということになりそうです。かなりアクロバティックです。

もっとも、ガスが通って、引っ越しが終わったとしても、肝心の水回りの工事が終わっていなければ意味がありません。

その肝心の水回り工事について、Iさんとの電話を終えた妻が先日ネットで見つけた業者さんとメールでやりとりをしていました。こちらは土曜日に現地で会うこととなりました。

フラット35の契約手続きをする

火災保険の契約の翌日、ローン会社で住宅ローンの契約手続きがありました。前回も担当してくれたSさんに説明を聞きながら、サインと捺印を繰り返しました。

ローンは34年で初回の支払いは8月上旬、最初の5年間は毎月6万5000円、それ以後は6万7000円。ここになってやっとローンの正確な金額がわかりました。団信は3大疾病付き。繰り上げ返済は聞いていたとおり、ネットで簡単にできるとのこと。

いったい何枚の書類に記入をしたのでしょうか。さすがに疲れを感じた頃、すべての手続きが終了しました。

「34年払うと、結局全部で2700万円くらいになるんだよね」

契約が終わっての帰り道、できれば口にしたくない。しかし目をそむけてはいけない話題に妻が触れました。

「頑張って繰り上げ返済しよう」
「そうしよう」
誓い合う夫婦なのでした。

都市ガス工事への切り替え工事を発注

金曜日の午後2時、現地で東京ガスエコモのYさんと待ち合わせました。

さっそくガスの配管を見てもらうと「家の中はそのままでOKです」とのこと。

外は「道路の下にガスの本管が通っているので、そこから下水溝を避ける形で駐車場から家の端にあるガスメーターまで新たにガス管を通す工事になります」。距離にして5メートルほどの工事です。

他にはLDKにガスファンヒーター用の口をひとつ増設してもらうことにしました。お値段は「25万円から30万円の間くらいですね」とYさん。Tさんの会社だと35万円だったので、30万円だとしても5万円は安くなる計算です。分割払いも金利ナシでできるといいます。

詳細な見積もりはメールで送ってもらうこととして、Yさんと名刺交換をしました。

これは絶対にやりたいと思っていたプロパンガスから都市ガスへの切り替え工事に目処がついてひと安心です。

翌日には最大の大物である「水回り4点セット」の見積もりが待っていました。

(リフォーム編その⑥へつづく)

文・中野渡淳一

文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。