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個人事業主の国民健康保険はいくら?計算方法と安くする方法を知ろう

個人事業主は、基本的に国民健康保険に加入します。特にサラリーマンから起業した場合「健康保険料が高すぎる!」と感じる人も多いかもしれません。ただ、送られてくる納付用紙を見て諦めるのではなく、計算方法を知った上で安くする方法を探すことも大切です。本記事では、高すぎる国民健康保険料をなんとかするための方法を紹介します。

国民健康保険料は一体いくら?計算方法を解説

国民健康保険料は

  1. 医療分
  2. 後期高齢者支援金分
  3. 介護分(40歳〜64歳)

の3つから構成されています。

また、それぞれ所得に応じて計算する「所得割」、国民健康保険の被保険者の人数で計算する「均等割」の2種類を計算する必要があります。

【ポイント】

  • 保険料を計算するためには「前年の所得」と「被保険者の人数」が必要
  • 計算は「世帯」単位で行われる

また、お住まいの自治体により、国民健康保険料の計算式が異なります。

例えば、東京都世田谷区の場合は、次の通りです。

 所得割均等割
基礎(医療)分加入者全員の賦課基準額×7.16%加入者数×42,100円
支援金分加入者全員の賦課基準額×2.28%加入者数×13,200円
介護分40歳~64歳の方の賦課基準額 ×2.38%40~64歳の方の加入者数 ×16,600円

Q.賦課基準額とは?

A.賦課基準は、前年度の所得から住民税基礎控除額43万円を差し引いた額のことです。

Q.健康保険料にも限度額はあるの?

A.基礎分65万円、後期高齢者支援金分20万円、介護分17万円と、それぞれ最高限度額(世帯の1年分)が決められています。

(例)所得300万円、世田谷区在住のケース

【賦課基準額】
300万円 – 43万円 = 257万

【基礎分】
(257万×7.16%)+(1人×42,100円)=226.112円

【後期高齢者支援金分】
(257万×2.28%)+(1人×13,200円) = 71,796円

【介護分】
(257万×2.38%)+(1人×16,600円)= 77,766円

39歳以下の場合は297,908円40歳以上の場合は、介護分が加わるため、375,674円となります。お住まいの自治体が決めているパーセンテージを参考に、計算してみてください。

個人事業主は絶対国民健康保険に入らないとダメ?

会社員の場合、会社が保険料を半分負担してくれるメリットがあります。一方、個人事業主の場合は、保険料は全額自己負担です。「保険料が高すぎる」といった声が上がるのも納得です。

私自身も、フリーランスになったばかりのときは、保険料が上がったことに戸惑いました。

しかも「個人事業主が入るのは、何保険?」と考える間も無く、「個人事業主=国民健康保険」のイメージのまま行動していました。今思えば、もう少し悩むべきでした。実際に、条件によっては次に記載する方法を選ぶことも可能です。

  • 会社の加入保険を任意継続する
  • 一定以下の年収の場合、扶養家族として健康保険に加入する
  • 各業界の健康保険組合に加入する

それぞれのメリットについて解説します。

任意継続する

任意継続とは、退職前に勤めていた会社の健康保険に入り続ける方法です。

任意継続の保険料は、退職時点での「標準報酬月額」により決定されるため、個人事業主となり年収が変化しても、原則2年間変わりません。また扶養家族の保険料は発生しないため、扶養家族がいる人にとっては大きなメリットと言えます。

ただ、会社員時代は保険料の1/2を会社が負担してくれていましたが、任意継続になると全額自己負担となります。つまり負担は増加します。さらに個人事業主としての収入が少ないまま、任意継続を選んでしまうと、余分に保険料を支払うことになる点にも注意が必要です。

また、任意継続は退職後20日以内に手続きをしなければなりません。個人事業主になることを決めた段階で、国保に加入するか任意継続をするか、決めておくことをおすすめします。

扶養家族として健康保険に加入する

一般的に年収130万円未満、かつ健康保険の被保険者(配偶者や親など)の年収1/2以下の条件を満たしている場合は、扶養に入る形で健康保険に加入できます。この場合、自分で健康保険料を払う必要はありません。保険料負担がない点は大きなメリットといえます。

ただ、年収が一定額を超えた場合は、扶養から外れます。自動的に国民健康保険への加入義務が発生するため注意してください。

各業界の健康保険組合に加入

医師や税理士、理容師・美容師など、業務ごとの従事者により構成されているのが「国民健康保険組合」です。

国民健康保険料は、年収に応じて増えていくため「稼げば稼ぐほど保険料も高くなる」との問題があります。一方、国民健康保険組合の保険料は、年収に関係なく一定です。

(例)文芸美術国民健康保険組合の保険料(令和4年度)

  • 組合員 21,100円(医療分 16,400円+後期高齢者支援金分 4,700円)
  • 組合員の家族 11,600円(医療分6,900円+後期高齢者支援金分 4,700円)
  • 介護保険料 5,200円

※上記は全て月額保険料です。

年額として比較するため、それぞれの数字に12をかけてみます。

39歳までの場合253,200円、40歳以上の場合315,600円です。

先ほどの世田谷区在住、所得300万円のケースの場合、どちらが得か比較してみましょう。

 国民健康保険文芸美術国民健康保険組合
39歳以下297,908円253,200円
40〜64歳375,674円315,600円

組合によっては加入条件に、別途特定の組合員になること(年会費も発生)が必要なケースもありますが、上記表では、40歳以上の場合、文芸美術国民健康保険組合がお得だということがわかります。

ある一定の所得を超えれば「国民健康保険組合」に加入した方がお得です。年収が増えても、健康保険料が上がらないため、仕事のモチベーションにつながるとの声も多いです。

個人事業主が国民健康保険料を安くする方法

国民健康保険に入らない方法について説明しましたが、全員ができる方法ではありません。任意継続は、すでにフリーランスとして活動している人には使えない方法ですし、一定の所得がある場合は扶養に入ることができません。

また国民健康保険組合に入りたいと思っても「自分の業務内容に当てはまる加盟団体がない」「加入資格を満たしていない」などケースもあります。

例えば前述した文芸美術国民健康保険組合に加入するためには、次のような加盟団体に所属している必要があります。

(一例)

  • 東京グラフィックデザイナーズクラブ 
  • (公社)日本グラフィックデザイナー協会    
  • 東京コピーライターズクラブ 
  • 日本出版美術家連盟
  • 日本シナリオ作家協会
  • 日本インテリアデザイナー協会 
  • 日本デジタルライターズ協会
  • 日本漫画家協会
  • 日本ネットクリエイター協会

入会資格は、実務に2年以上携わっていること、会員の紹介が必須など各協会により異なります。「入りたいのに入れない!」人向けに、現実的に使える別の方法も探してみました。

「青色申告」で申告する所得を少なくする

国民健康保険料を決める際に、重要となる「賦課基準額」。前述しましたように「前年度の所得 – 住民税基礎控除額43万円」により決定します。

つまり前年度の所得を少なくすれば、必然的に健康保険料も少なくなるというわけです。

しかし、生命保険料控除や医療費控除、扶養控除などは国民健康保険料の計算では、差し引くことができません。そこで貴重な控除である「青色申告特別控除」を使い、最大65万円の控除を受けましょう。申告する所得が減り、健康保険料も安くなります。

白色申告に比べ、手間は増えるものの、65万円の控除はかなり大きいため、おすすめの方法です。また電子申告をしなければ、55万円控除となってしまう点にも注意しましょう。freeeなどのソフトを使ったり、スマホで申告したりするのもおすすめです。

【2024年】フリーランス1年生の確定申告のやり方【青色申告・白色申告】フリーランスや個人事業主になったばかりの人向けに確定申告とは何か、確定申告のやり方を解説。「青色申告?白色申告?」の疑問、各メリット・デメリットも紹介。確定申告ソフトを使用すると楽に確定申告ができることも記載。...

事業に関する経費をしっかり処理する

個人事業主の場合、「収入 – 経費 = 所得」です。つまり、事業に必要な費用は、レシートや領収書を保存し、しっかりと経費として処理することが、保険料を安くすることにもつながります。

もちろん、経費にするためには、明確に事業で使用したという理由が必要です。プライベートと事業兼用のケースであれば、事業に使用した割合をきちんと把握し、説明できる状態にしておく必要があります。

個人事業主になったばかりの時点では「経費」に対するイメージが湧きにくく、レシートや領収書を受け取り忘れてしまうこともあるでしょう。不要であれば、破棄すればいいのですから、経費かどうか迷うものも、一旦受け取り残しておきましょう。こういった積み重ねも大事です。

【小学生でもわかる】必要経費って何?わかりやすく解説副業をしているサラリーマンや会社員向けに、必要経費とは何かをわかりやすく解説。「経費」「家事按分」の言葉の意味や、経費に含まれるもの・含まれないものを紹介。確定申告と必要経費に関するよくある質問についても回答。...

個人事業主の保険に関するよくある質問

最後に個人事業主の保険に関する質問と回答をまとめました。今回の記事を参考に、自分が納める健康保険料について考えてみてください。

Q.個人事業主の国民健康保険の仕訳はどうする?勘定項目は何費?

A.国民健康保険料は、プライベートな支出のため、帳簿への記帳は不要です。もし、事業用口座から引き落としている場合は勘定項目「事業主貸」で処理してください。経費としては処理できない点に注意です。

Q.個人事業主の国民年金保険料は、いくら払う?

A.令和4年度の国民年金保険料は、月額16,590円です。私は口座振替で1年分を前納(4,170円お得)し、合わせて付加保険料(月額400円)も納めています。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。