個人事業主になると気になるのは、必要経費をいくらまで計上できるのか、という点ではないでしょうか。事業運営のために支払った費用を経費として計上すると、所得税を節約できます。
ただ、経費として認められない費用まで計上してしまうと、後々税務署から指摘を受け、追徴課税が課される場合も…。今回は、経費に計上できないケースを挙げ、経費にできるかどうかのポイントを解説します。
個人事業主の経費として計上できない費用とは
使ったお金を経費として計上できればもちろん節税になります。しかし、当然経費として計上できるものには条件があります。
個人事業主が経費として計上できない費用は以下の通りです。
- 福利厚生費
- 健康診断費
- 事業主のための支払い
- 事業主の社会保険料
- 家庭用の支払い
- 10万円以上の事業資産
- 個人事業主と生計をひとつにする家族・親族への支払い
福利厚生費や健康診断費は、法人では経費として認められる費用ですが、個人事業主では認められません。事業主のための支払いや社会保険料も同様です。なお、社会保険料は、別途確定申告時に計上するため、経費には含めません。
家庭用の支払いとは、自宅をオフィスとして使用しているケースです。家賃や光熱費など、自宅にかかる費用のうち、事業分と家庭分を「家事按分」して、事業分のみを経費として計上します。
また、取得金額が10万円以上の事業資産は、固定資産として別途計上する決まりです。各資産には法定耐用年数が定められており、決算時に減価償却費として計上します。
個人事業主の経費として計上する際注意が必要な費用
経費として計上可能ですが、その際注意が必要な費用は以下の通りです。
- 仕入れにかかった原価
- 消耗品費
- 飲食代
仕入れにかかった原価は、仕入れた時点で支払った金額すべてを経費にできるわけではありません。経費にできる仕入れ額は、売れた商品数に対してかかった仕入れ額のみです。例えば、200個の商品を仕入れて100個売れた場合、売上原価として計上できる金額は100個分の仕入れ額となります。
消耗品費は、取得金額10万円未満の物品にのみ認められる点に注意が必要です。10万円以上の物品は、固定資産として決算時に減価償却費として計上します。
飲食代は、事業に関係すると認められる場面での飲食でなければ、経費として認められません。取引先の人と食事をしながら打ち合わせをした場合は、明らかに事業に必要な経費として計上できます。飲食代のレシートの裏側に、取引先の会社名や担当者名、打ち合わせの目的を控えておけば大丈夫です。
逆に、取引先に向かう途中での飲食は、経費として認められにくいと考えてください。
個人事業主が経費を計上するために必要な手順
従来、経費を計上するためには、かかった費用の領収書やレシートを全て「紙」で保存しておく必要がありました。
しかし、2024年1月1日に改正電子帳簿保存法が完全義務化されることにより、電子取引で支払った費用は電子データで残し、帳簿上の経費と紐づけなくてはならなくなります。
電子取引以外は従来と同様紙での保管も可能です。ただ、紙の領収書やレシートをスマホなどで撮影し、電子データとして取り込めば、経費の資料を全て電子データで統一して管理できます。電子データとして保管できれば、原本の領収書やレシートの保管は不要です。
今後のことも考えて、経費を計上する際は、電子データを帳簿の経費と紐づけて記録することをおすすめします。
経費計上のポイントは本当に事業運営に必要かどうか
個人事業主の経費が認められるかどうかは、その経費が本当に事業運営に必要かどうか、という点です。事業運営に必要なら、漏れなく計上して節税しましょう。ただ、売上高とほぼ同額の経費など、多すぎる経費は税務署の調査が入る可能性が高まります。経費計上で迷いがある場合は、税務署に相談してその都度正しい処理方法を確認しましょう。
文・藤森みすず
大手Slerにてシステムエンジニアを経験後、フリーランスのライターに。金融記事をはじめ旅行や時事ネタなど多くの記事を執筆。