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【実体験】個人事業主がアルバイトを雇ってみた。手続きや注意点を解説

個人事業主としての業務をこなし、順調に仕事量が増えていくと「人手が欲しい!」と感じるようになるはず。でも「アルバイトを雇うって大変?」「雇用するためには何の手続きが必要?」など気になることも多いものですよね。現在、個人事業主として、アルバイトを雇っている私の実体験を元に実際にやったことを解説していきます!

個人事業主がアルバイトを雇うために必要な手続き

働いてくれる人が見つかったら、雇用するための手続きを行います。これが想像以上に大変です!アルバイトとはいえ、人を雇用するのは責任が伴うものだと実感しました。

労働条件を通知する(書面がおすすめ)

個人事業主の場合も、法人と同じく、労働条件を相手に通知しなければいけません。インターネット上にある「雇用契約書」をダウンロードして使用すると便利です。

2部作成し、自分が1部、相手に1部渡します。上記画像は、私が実際に使った雇用契約書です。内容は、次の通りですが、仕事の内容などに合わせてアレンジしてください。

  • 就業場所
  • 職務内容
  • 就業時間
  • 賃金
  • 賃金の支払い方法
  • 給与振込先
  • 退職について
  • その他(交通費など)

保険の手続きをする

次にやるべきことは、保険の手続きです。

私の場合は、アルバイト1人。基本は、月2回、1回5時間という条件です。

この条件下でも、労災保険には加入しなければなりません。なぜなら、労災保険は、アルバイト1人でも加入が義務になっているためです。(農林水産事業の一部を除く)

提出書類は、労働保険関係成立届(雇用から10日以内)、労働保険概算保険料申告書(雇用から50日以内)の2種類です。

 労働保険関係成立届労働保険概算保険料申告書
提出先労働基準監督署労働基準監督署
都道府県労働局
日本銀行
上記のいずれか

参考:厚生労働省HP 労働保険の成立手続

提出の順番は、労働保険関係成立届→労働保険概算保険料申告書です。ただ、両方同時に手続きすることもできるため、一度に終わらせたい方は、労働基準監督署に行くことをおすすめします。私も書き方自体がよくわからなかったため、実際に行って教えてもらいました。

また、私は条件を満たしていないため、手続きを行なっていませんが、条件に当てはまる場合は、次の保険の手続きが必要です。

雇用保険

1週間の労働時間が20時間以上かつ、雇用期間が決まっていない(31日以上引き続いて雇用される見込み)場合は、ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」を提出。

社会保険(健康保険・厚生年金)

従業員5人以上の場合は、社会保険事務所に「新規適用届」「新規適用事業所現況書」「被保険者資格取得届」「健康保険被扶養者届」の提出が必要。5人未満の場合は、任意です。

税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出

次に、税務署に行き「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。開業届提出と同時にアルバイトを雇用する場合は、届出書を出す必要はありません。今回のように、開業から数年後に雇用する場合は、別途提出が必要です。雇用から1ヶ月以内に提出しましょう。

用紙は国税庁のwebサイトからダウンロードすることができます。住所氏名など基本的な情報のほか、給料の支払い予定日を記入します。

「源泉徴収」の手続きをする

アルバイトに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を記入してもらい、保管しておきます。

ただし、アルバイトがダブルワークをしていれば、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を他の会社に提出することも考えられます。

アルバイトを雇用する個人事業主は、給与支払い時に源泉徴収が必要です。本来、源泉徴収した所得税は毎月収めなければいけませんが、個人事業主にとっては、事務作業の負担が増えるのは辛いもの。

税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、年12回→年2回に減らすことができます。

源泉徴収した所得税納税期限
1月から6月まで7月10日
7月から12月まで翌年1月20日

ただし、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出できるのは、従業員が10人未満の場合です。10人以上雇用する場合は、特例を申請できないため注意してください。

個人事業主がアルバイトを雇った場合は経費にできる?

アルバイトに支払った給料は、経費として申告できます。支払った給料は課税対象から外されるため、節税にも役立ちます。

取引種類勘定項目
給与給料手当
賞与賞与
源泉所得税の徴収預り金

ただし、第三者を雇うのではなく、家族に仕事を依頼する場合は注意が必要です。

青色申告の場合は、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を提出します。用紙は、国税庁のwebサイトからダウンロード可能です。

下記条件を満たしている人であれば、青色事業専従者として給与を支払い、経費として計上できます。

  • 青色申告者と生計を一にしている配偶者その他親族
  • 年齢が15歳以上(申告の対象となる年の12月31日時点)
  • 1年のうち6ヶ月を超えて、その事業に本業として従事していること

【賃金設定の注意点】
明確なルールとしては決まっていないものの、一般的に考えて、あまりに違和感のある賃金設定は、経費として認められない可能性があります。(イメージ:データ入力時給10,000円)。また、個人事業主本人の所得と、専従者の給料のバランスにも注意しましょう。

個人事業主がアルバイトを雇うメリット

私自身、アルバイトを雇うようになり、すでに数年が経ちました。今、改めて感じるメリットや他の経営者から聞いた内容について解説します。

業務効率の向上

「自分でやるべき仕事」「人に依頼できる仕事」が明確になり、本業に集中できるようになりました。また、自分の仕事を客観的に見直したり、人に伝えるためにマニュアル化したりするきっかけにもなったと感じます。

第三者の意見が得られる

個人事業主の場合、基本的に1人で仕事を行います。雇うアルバイトとの関係性にもよりますが、相談できる相手が増えたことで、精神的にも助けられています。

助成金などの対象となる可能性がある

私の場合は対象外であり、実際に活用したことはありませんが、高齢者の方や障がい者の方など、就職困難者と呼ばれる立場の方を雇用することで、助成金が受け取れることがあります。仕事の内容にもよりますが、活用してみるのもいいでしょう。

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個人事業主がアルバイトを雇うデメリット

一方で、アルバイトを雇い感じたデメリットもあります。こちらも実体験と他の経営者からの声をもとに解説します。

最初の手続きが想像以上に大変

必要な書類を揃えた後は、労働基準監督署や税務署に行かなければなりません。私の場合、税務署はともかく、労働基準監督署は、家から1時間弱かかる場所にあります。また、土日は定休日となっていたため、日程調整にも苦労しました。

もちろん、雇用する人数が多ければ、税理士や社会保険労務士に依頼するのも選択肢のひとつです。時間とコストを考え、自分にとって良い方法を選びましょう。

  • 求人
  • 面接
  • 採用・不採用の連絡
  • 雇用契約書の作成
  • 保険手続き
  • 所得税の納付

など、やるべきことはたくさんあります。

育てたアルバイトの退職リスク

雇う側からすれば、できるだけ長く勤めてもらいたいものですが、アルバイトを雇う以上、退職リスクはつきものです。雇用契約書に、退職時のルール(●ヵ月前までに通知)などを記載しておいたとしても、病気やその他の理由で、突然やめてしまうケースも考えられます。

退職したアルバイトの作業分の穴埋めをどうするか、次の採用に向けた求人をどうするかなど、やるべきことはたくさんあります。雇用保険加入者であれば、退職理由によって失業給付の時期、金額が変わるため、丁寧な話し合いが必要です。

税務に関するリスク

税金に関する知識が豊富な個人事業主ばかりではありません。自分の確定申告だけであれば、今は会計ソフトを使うこともでき、スムーズに進むかもしれませんが、アルバイトを雇うことで、やるべきことは急に複雑化します。

給料の金額によって毎月所得税を天引きし、年末には「年末調整」をする義務が発生します。事業規模にもよりますが、税理士に依頼せず自分で行う場合は、誤りのないよう気をつけなければなりません。

もし、税務調査後に問題が発覚した場合は、個人事業主が立て替えて支払うことになります。その後、アルバイトに計算の誤りを伝え、徴収することは現実的にも難しいため、注意が必要です。

個人事業主がアルバイトを雇う以外の選択肢は?

個人事業主にとって、アルバイトを雇うことは、メリット・デメリットの両方があります。アルバイトを雇う以外の選択肢についても知っておきましょう。

友人・家族に依頼

一時的に人手が足りない場合、単発の場合は、友人や家族に手伝ってもらうのもひとつの方法です。完全にボランティア・無報酬での手伝いであれば、問題ありません。

ただ、お礼としてでも賃金が発生する場合は、要注意です。配偶者や家族への給料の支払いの場合は、届出が必要となるほか、一定の条件を満たしていなければ、経費として計上することはできません。

友人に仕事を依頼することに関しては、賛否両論あります。元々の人間関係や個々の性格にもよるため、必ずしもNGとは言えませんが、個人的にはおすすめしません。

「金銭が絡んで、言いたいことが言えなくなった」「気を使ってしまい、注意しにくい」といった声を聞きます。また同時に、これまでお客さんとしてきてくれていた人に手伝ってもらうことも、あまりおすすめできません。顧客とアルバイトでは、見えている世界が異なるためです。

外注

事業内容にもよりますが、業務を外注するのもひとつの方法です。クラウドソーシングサイトを通じて募集をかけたり、SNSなどで直接依頼したりする人も増えてきました。

クラウドソーシングサイトを利用する場合、手数料が発生します。下記は、クラウドワークスの例です。

報酬額システム利用料
20万円超の部分5%
10万円超20万円以下の部分10%
10万円以下の部分20%
タスク形式での場合20%

システム利用料を見込んだ上で、発注する必要がある点に注意です。

在宅ワークの人気が高まっていることもあり、募集内容にもよりますが、1件の募集に人が殺到することも。一人ひとりとのやりとりには、時間も手間もかかります。

個人的には「全く条件に合わない方からの応募には返信をしない可能性があること」を記載しておくことをおすすめします。

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個人事業主がアルバイトを雇う際のよくある質問

Q.個人事業主の労務手続きは?

A.初めてアルバイトを雇う際には「保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。

Q.アルバイト雇用の手続きは?

A.労災保険の加入は、全員に必要ですが、採用したアルバイトの家族構成や勤務形態により、社会保険の加入対象有無が変わります。

Q.個人事業主がアルバイトを雇った場合、試用期間を設けられる?

A.アルバイトにも試用期間を設けることができます。ただし、試用期間中であっても、条件を満たしている場合、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入義務があります。

上手にアルバイトを雇い業務効率化を!

個人事業主にとって、アルバイトを雇う一番のメリットは、業務効率化にあると考えます。求人募集形態も、年々増えてきました。ハローワークや広告チラシだけでなく、Indeedのような無料で作成できる採用サイトなども積極的に利用し、いい人材を確保しましょう!

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。