「初心者は株を買うな」なんて言われることもありますが、初心者こそ投資方法として株を始める人は多いもの。本記事では、株式投資の基本から具体的な銘柄選びの方法まで、これから株を始めたい人に役立つ情報を解説します。
初心者が投資するなら、何から始めるといい?
投資初心者の場合、まずやるべきことは、勉強ではなく自分の投資環境を整理することです。いくら知識だけが増えても、自分が費やせる予算・時間などが曖昧なままでは、結果を出すことは難しいでしょう。
投資の方針を決めた上で、証券口座の開設、入金、株の購入へと進みます。
1:資金の確認
まずは予算の確認です。一般的な計算式は「預貯金から生活防衛費を除いた額=余裕資金」です。余裕資金の一部を、投資に回すと良いでしょう。
Q.生活防衛費って何?
A.長期入院、失業、倒産、リストラ、自然災害など、何らかの不測の事態に備えた、生活資金のことです。もし突然収入を失ったとしても、生活に困らないためのお金と考えてください。
生活防衛費の計算ポイント
- 最低3ヵ月、できれば半年
- 生活費だけでなく住宅ローンや車のローンを計算
- 車の車検代や保険代なども忘れずに計算
投資を行う上で、無くしてはいけないのが「心のゆとり」「精神的な余裕」です。生活資金を全て使ってしまうのは、投資ではなく単なるギャンブルです。
資金面・精神面ともにゆとりを持ち、投資を始める準備を整えましょう。
2:自分の投資の目的と向き合う
次は、投資の目的です。
よくある投資の目的例は、次の通りです。
- 教育資金
- 老後資金
- 住宅購入の頭金
- 節税
目的によって運用期間も決まるはずです。例えば、教育資金であれば、子どもの大学入学。老後資金なら自分が60歳になる頃など。ここで意識したいのは、今から何年以内に実現すべき目的なのかという点です。
例えば「現在20歳→40年後の老後資金」という場合は、問題ありません。しかし、現在35歳、10歳の子どもがいる。18歳の大学入学時の教育資金を準備したいといったケースの場合、そもそも“投資”で資金を準備するかどうかを見直す必要があります。
なぜなら、教育資金は、使用する時期をずらすことができないためです。もし、子どもが浪人した場合、入学金の支払いは1年延期になるかもしれませんが、予備校の学費など、別の出費が発生します。
また、投資には元本保証はありません。つまり、投資で必要な資金が「用意できなかった」という場合、人生設計にも大きく影響を及ぼしてしまうのです。
さまざまな考え方があるものの「10年以内に資金が必要、かつ必要な時期がずらせない場合」は、全てを投資で準備する考え方は、避けたほうがいいでしょう。
3:証券口座を開設し、入金する
ここまで来たら、まず証券会社を選び口座開設へと進みます。口座開設方法は、インターネットと郵送の2種類があることが多いですが、スピードを重視するなら、インターネットでの口座開設がおすすめです。
メールアドレスと公的な身分証明証、マイナンバー確認書類が準備できれば、スムーズに開設することができます。申込には所定の審査がありますが、書類不備などがなければ、数日で口座開設完了の通知が届くことが一般的です。
口座が開設できれば、システムにログインし、入金しましょう。
入金は、スマホやパソコンから操作できるインターネットバンキングを使うと便利です。証券会社の提携金融機関からの振込の場合、振込手数料不要・タイムラグなしなどのメリットがあります。
次に株の買い方です。
どの株を何株買うかを決め、最後に注文方法を選びます。
注文方法は
- 指値(さしね)
- 成行(なりゆき)
の2種類です。ただし、単元未満株やミニ株の場合は、成行のみのため、注意してください。
指値注文 | 成行注文 |
・買う値段を自分で設定 ・指定した値段以下の株価になったら注文 | ・最も低い価格の売り注文に対し、注文が成立する |
成行注文は、少し難しいイメージがあるかもしれません。成行注文のメリットは、指値注文よりも優先的に売買が成立すること。ただ、相場が激しく変動しているような状況では、自分が想定していた価格よりも安く売却したり、高い価格で購入してしまったりすることもありえます。
(例)
- 株価:1000円
- 最も価格が低い売り注文が1001円
- 最も価格が高い買い注文が999円
↓
成行の買い注文を出すと、1001円で購入決定
初心者のうちは、焦って注文を間違えてしまうことも考えられます。想定外での売買となってしまわないように、まずは指値注文から始めることをおすすめします。
投資初心者の株の選び方3つのポイント
次に、具体的な株の選び方について解説しておきます。銘柄の選び方は、複数ありますが、ここでは最もわかりやすい方法に特化しました。
1:割安株を選ぶ
投資を成功のコツは“安く買って高く売る”こと。つまり、今の株価が安いのか、高いのかを見極めればいいのです。
ここで覚えておきたい言葉が「割安株」。2種類の考え方を基本としています。
ひとつは「将来、さらに会社の成長が見込めるだろう。今の株価は、まだ安い。今後もっと高くなる」という考え方。例えば、ブームが起こりそうなサービスを提供している会社、最先端技術の研究をしている会社なども当てはまりますね。
もうひとつは、「現在、どう考えても、正当に企業価値が評価されていない。おかしい。きちんと評価されれば、株価が上がる」というもの。これを、バリュー株ともいいます。
Q.正当かどうかをどうやって判断するの?
「ファンダメンタル分析指標」を参考にします。ファンダメンタル分析指標とは、決算書で発表された数字を元に、会社の状況を推測する方法です。
基本的な指標を理解しておくと、冷静に分析できますよ!
用語 | 計算式 | 内容 |
PER | 株価÷1株あたりの純利益 | 株価成長の可能性 |
PBR | 株価÷1株あたりの株主資本 | 会社の純資産と株価の関係 |
ROE | 当期純利益÷自己資本×100 | 企業の収益性 |
2:低位株(ていいかぶ)を選ぶ
低位株とは、株価水準の低い銘柄を意味する言葉です。明確な定義はないものの、1単元(100株)の購入金額が10万円未満(1株あたり1,000円未満)の株のことを指します。
つまり低位株であれば、数万円程度で100株を購入することもできます。まだ資金が少ないとしても、リスクを抑えつつ分散投資ができることは大きなメリットと言えるでしょう。上昇の余地も大きいこともメリットのひとつです。
Q. 低位株にはデメリットはあるの?
A.業績の悪化により「上場廃止=無価値になる」というデメリットがあります。また急騰→下落のサイクルが大きいため、売り時を見誤ると想定外の損失を出す可能性があります。
例えばツインバード工業株式会社の株価であれば、2020年6月5日時点では474円でした。しかし、6月19日の時点で1999円に高騰。しかし7月17日の時点では709円と再度下落しました。
また、当然ですが低位株の全てが大化けするわけではありません。株価が低い理由はどこにあるのかを理解した上で、会社の財務状況等を調べ、銘柄を選ぶ必要があります。
3:株主優待の内容から選ぶ
「株主優待」とは、企業が自社の株主に対し、お礼の意味を込めて優待品・自社のサービスなどを提供する制度です。(例:日本マクドナルドであれば食事優待券、イオンであれば買い物キャッシュバックなど)
最低株数をクリアすれば、株主優待を受けることができます。企業によっては5万円以下で優待を受けることもできますよ。
メリットは、投資の楽しみが増えること。また長期保有することで、株主優待のグレードが上がる企業もあります。
ただ、株主優待は企業のサービスの一環であり、永遠に続くとは限りません。2024年8月12日には、いきなりステーキなどの店舗を持つ「ペッパーフードサービス」が、株主優待の廃止を発表。8月5日には、百貨店の運営などを行う「丸井グループ」も優待廃止を発表しています。
もちろん、企業によっては内容の変更・改善といったケースもありますが、株主優待だけをメインに株を購入することは、あまりおすすめできません。あくまで、プラスαのお楽しみ要素だと捉えるようにしましょう。
【投資初心者向け】株に関するよくある質問
Q.株初心者の始め方は?
A.「少額」「分散」がキーワード。毎月決まった額で行う「積立投資」であれば、時間も銘柄も分散できます。NISAを利用した投信積立であれば、コストを抑えつつ運用できますよ。
Q.株初心者は何株から買うべき?
A.「何株から買うべき」といった明確なルールはありません。どうしてもこの企業の株がほしい!と思えば、1株から買ってもいいわけです。ただ、最初から大量買いはおすすめできません。まずは投資そのものに慣れることが大切です。
Q.投資株の勉強方法は?初心者は何から勉強すべき?
A.まずは今の自分のレベルを確認した上で、株式投資に関する本を読むことをおすすめします。基本の用語や株の仕組みを理解できた上で、別の書籍やブログ、YouTube、セミナーなど範囲を広げるといいでしょう。
成長が期待できる会社を探すのが投資のコツ
投資自体の勉強も重要ですが、同時に大事となるのが銘柄選び。営業利益または経常利益をひとつのポイントと捉え、企業の業績推移を確認しましょう。
ただ、投資初心者にありがちなのが、過去の業績“だけ”にとらわれてしまうこと。もちろんこれまで順調に業績を伸ばしてきた会社は、これからも信頼できそうです。しかし、株を購入することは、そもそも「企業の未来」に投資をすること。
適切な情報収集とデータ分析も大切ですが、自分の日常生活の中で感じる変化や話題になっているサービスにも、今後期待できる企業を見つけるヒントが隠れている可能性が!株、投資の勉強だけにとらわれず、日常の中でアンテナをはっておくことも大切です。
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。