リフォームがほぼ完了した中古物件に入居。しかし、まだ終わりではありません。荷物の整理に旧居の後始末、エアコンやインターネットの工事など、やるべきことが山積しています。そして「あるある」なのが、住んでみてはじめて直面する思わぬトラブル。我が新居にも、お約束どおりにそれがあったのです。
引っ越し2日目、今日も忙しい!
新居での一夜が明けました。朝はまず娘の登園です。これまではクルマで送っていたのが、今朝からは徒歩。しかも保育園は冗談抜きで目の前、窓からは隣接する緑地のなかに建つ園舎が見えます。なんと便利になったことでしょう。これからは忘れ物をしてもすぐに家に取りに戻れます。
昨晩は「おうち(旧居)帰ろ~」と悲しそうだった娘ですが、そこはさすがの2歳児、この朝はケロリとして保育園に行ってくれました。
家の中は荷物、荷物、荷物、の山です。娘がいない間にできるだけのことをしておかねばなりません。疲れただのなんだのと言っている場合でありません。
この朝は旧居でのインターネットのルーターの取り外し作業があったので、まずは旧居に向かいました。約束の時間に業者さんが来ました。「配線、どうします。残しておきますか?」と問われたので「向かいが大家さんの家なので聞いてきますね」と外に出たら、ちょうど大家さんが家の前にいました。確認すると「たぶん、次の人も使うだろうから」ということで残置決定。ついでに先日、横浜のデパートで買った挨拶の品もお渡ししました。
「すぐに新しい方が入居されるんですよね?」
管理会社の不動産会社からはそう聞いていました。大家さんは笑いながら「そうなんですよ。なんか明日でいま住んでいる部屋の契約が切れるとかで、明後日に引っ越しだそうです」と教えてくれました。
「明日で切れる? じゃあ明後日が引っ越しで、明日の夜はどこで過ごされるんですか」
「荷物は引っ越し屋さんに預かってもらって、自分たちは明日の夜はビジネスホテルに泊まるそうです」
「それはタイトですね……」
新しく入居される方は内見もせずに図面と場所だけ見て「ここがいい」と決められたといいます。修繕なども引っ越し後でいいとのこと。こちらとしては長く住むつもりが2年と5ヶ月程度で退去することになって申し訳ない気持ちだったから、少し救われたような気分です。
旧居の魅力は、なんといっても圧巻の眺望。遠く逗子あたりの山々まで望める窓からの景色を新しく住む人にも堪能してもらえたらと思いました。
トラブル発生! テレビがうまくつかない
旧居から新居に戻ると、今度はインターネットの取り付け工事です。設置は1階、業者さんには2階で使うのに中継機の使用を勧められましたが、作業終了後に試しに2階でつないでみたら問題なくつながりました。動画などもストレスなく見られそうです。
旧居ではケーブルテレビを視聴していましたが、新居では普通に地上デジタルはアンテナで観ることになっています。ここで問題が発生しました。
「やっぱりテレビ、ちゃんとつかないね」
前の晩から気づいてはいたことでした。昨晩、テレビをレコーダー経由でアンテナ端子につないでみたらうまく見られなかったので「明日、もう一度確認してみよう」ということにしていたのです。試してみると、やはりチャンネルによってつかなかったり、ついたり、あるいはついても画像が乱れていたりと安定しません。
「MXは?」
妻はTOKYOMXの『5時に夢中』が大好きです。しかし、チャンネルを選んでもMXはうんともすんとも言ってくれません。
「ダメだ。神奈川だからかな」
「横浜市だったら問題なく観られるはずだよ」
「MX観られないの、きついな……」
MXの深夜アニメを愛する筆者としても、MXなしの人生はなかなか辛いところです。サブスクでいろいろ観られる時代ですが、好きな作品は録画したいのが人情というものです。
「ちょっと待ってて」
妻がさっそく得意の検索で電気工事屋さんをさがしました。すぐにKさんという地域でアンテナ修理などをやっている「家電工事屋」さんが見つかりました。
「問い合わせメール、送るね」
「頼む」
新居に引っ越して、きっと何かがあるだろうとは予想していました。すると、ほらやっぱりね、という感じでした。正味で築18年と7ヶ月の物件です。アンテナがいかれているくらい、あっても不思議ありません。
午後はひたすら荷解きと片付け。夕方に娘を迎えに行き、夜は少しすっきりしたリビングでくつろぎました。妻はカウンター越しに水仕事をしながら、スマホでユーチューブを観ている娘を見ながら「この光景が見られるだけで幸せ」と笑顔満開です。
懸案のエアコン工事は結果オーライ
引っ越し3日目、7月最後の日です。この朝も旧居で引っ越し後の後始末です。午前10時にプロパンガスの業者さんと待ち合わせして最後の精算。これでプロパンガスから卒業です。
管理会社の担当者さんが来たところで鍵を返却。そのあとは一緒に家の中を点検です。1階は壁紙交換、障子や襖は建具屋さんに交換を依頼。契約時に納めた修繕補償金10万円は「ハウスクリーニングで消える」そうです。よく見てみると雨漏りなどもあって、なにげにお金がかかりそうです(後日、別途で10万円以上の請求があった)。
この日も荷解きに部屋の整理。夜、テレビのチャンネル登録を設定してみましたが、MXはもちろん、NHKのEテレもダメ。日テレは映ったり映らなかったりと話になりません。電波がしっかり拾えていないのは明白です。でなければ配線が腐食でもしているか。ここから先はプロに任せるほかなさそうです。
翌朝、最後に残った1台を取り付けにエアコン工事屋さんが来ました。気の良さそうなお兄さん2人組にさっそく工事費を見積もってもらいました。
「ざっと見た感じ、下まで化粧カバーつけて4万円に消費税くらいですね」
「それくらいで済みますか?」
これまで聞いていた額は7万円だとか、5~6万円だとか。それに比べればずいぶん安い額です。
「メーカーによって微妙に工事費が変わるんですよ。ちょっといま詳しく出してみますね」
そう言うと、お兄さんはファイルを開いて値段のチェックをしてくれました。すると「4万ぴったりくらいでできます!」と嬉しい回答。懸念材料のひとつだった「高さ(新居の2階は通常の家の2階より高い)」も「手持ちの梯子で大丈夫です」。いろいろ気を揉んだけれど、工事が延期になってこの業者さんに当たったのは僥倖だったようです。
エアコン工事もこれで完了。室外機はクルマの邪魔にならないカースペースのいちばん奥に設置することができました。大満足です。
午後はネットで購入した洗濯物の竿立てを組み立て。そして悪あがきを承知でテレビの接続コードを予備に交換。しかし、やはり悪あがきでしかなく映りは改善しませんでした。
最後の工事はアンテナ交換
仕事を引き受けてくれた家電工事屋さんには現況を報告。工事は8月7日に決定しました。
調べてみると、レコーダー経由とそうでない場合では映りに差があるようで、チャンネルにもよりますが、テレビではうまく映らないものもレコーダーにはちゃんと録画されていることに気がつきました。それにしても、ケーブルテレビをやめた途端、こんな目に遭うのですから、トラブルの女神というやつは相当に目ざといようです。
当日、家電工事屋のKさんが来てくれました。さっそく受信状態を見てもらうと「レコーダーでだいぶ喰っているみたいですね。MXが映らないのは「アンテナが東京じゃなくて平塚局を向いているからだと思います」とのこと。さすがプロ、説明がわかりやすいです。
外からアンテナを見ると「たぶん破損していますね」。なるほど、映りが悪いわけです。どういう状態か、梯子をかけてさらに詳しく見てもらうと「半分に折れています」とKさん。これはもう、交換以外にありえません。費用は4万7000円です。
数十分の作業でアンテナ交換が終わりました。Kさんによると支柱を支えるワイヤーも切れていたとか。今度は屋根の縁に直接金具で留めるタイプのアンテナなので台風にも強いといいます。
「MXの電波はスカイツリーから出ているんですよ。今度は東京向きにしたから拾えるはずです。試しにつけてもらえますか」
言われるまま、テレビをつけてMXにすると、おお、すごくきれいに映ります。
「ありがとうございます! 妻が喜びます。夕方の番組が好きなんですよ」
興奮気味で御礼を言う筆者にKさんは「『5時に夢中』ですね」と笑顔で頷きました。
「あれ、好きって人多いんですよ」
「そうなんですか」
聞けば、Kさんはエアコン工事なども頼めば請け負ってくれるとのこと。地域で長く商売をしている人だけに、困ったことがあればなんでも相談できそうです。
こうして、想定外のトラブルも含めて中古物件のリフォームは無事に完了。5ヶ月以上に及ぶ初マイホーム購入&リフォームを巡る騒動は幕を閉じたのでした。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。