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軽自動車が人気です。軽自動車の魅力とメリットとは?

2024年にもっとも売れた乗用車は軽自動車であるホンダのN-BOX(販売台数20万2197台)でした。N-BOXに限らず、軽自動車は全体的に売れ行き好調で乗用車全体に占める割合も約4割に達しています。軽自動車はなぜこれほど人気なのか。その魅力を深掘りしてみました。

日本独自の規格である軽自動車

軽自動車は、他の国にはない日本独特の軽四輪車です。その規格の上限は以下の通りとなっています。

全長:3.40m以下
全幅:1.48m以下
高さ:2.00m以下
排気量:660cc以下

これに対し、コンパクトカーなどの小型乗用車は、全長4.7m、全幅1.7m、全高2.0m以下、排気量は2000cc以下となっています。全長だけでもその差1.3m、軽自動車がいかにサイズが小さいかがわかります。

ここで軽く軽自動車の歴史に触れておきます。

軽自動車の規格が制定されたのはいまから70年以上前の1949年(昭和24年)のこと。それまであった小型自動車の規格を大小2つに分類して、小さなものを税制面で優遇される軽自動車と定めたのがはじまりでした。

もっとも、当時の規格は排気量が2サイクル100cc、4サイクルで150ccと小さなもの。全幅も1mまでと狭く、最初の数年間は規格はあっても実際にその規格にあった四輪車がつくられることはなかったといいます。

国もこれではいけないと感じたのか、1951年に4サイクルの排気量を360ccに、1954年には2サイクルも360ccに引き上げると、スズキやスバルなどの四輪メーカーが市場に参入してきました。

その後、軽自動車は規格を変更するごとに新型車が投入され、仕事や生活における気軽な日常の足として人々に愛用されるようになりました。現行の規格となった1998年以降は小型乗用車に匹敵する性能、装備を持つ車種が次々に登場。現在では道路を走る乗用車の5台に2台が軽自動車という状態になっています。

軽自動車のメリット

2024年の軽自動車の総販売台数(軽貨物含む)は163万8136台。このうち乗用車は122万4994台となっています。

軽自動車はどうしてこんなに売れるのでしょうか。理由はひとつ、乗っていてメリットが大きいからです。

軽自動車の主なメリットを並べてみました。

①値段が安い
軽自動車の第一の魅力は購入価格が安いところ。新車の価格は90万~200万円。ひと昔前に比べればだいぶ値上がりましたが、そのぶん装備は充実しているし、普通乗用車と比較するとまだまだ安いといえます。中古となれば、さらに安いクルマがたくさんあります。不人気車であれば思わぬ掘り出し物に出会うことも。

②維持費が安い
車検費用、保険代、整備費用など、どれをとっても軽自動車は普通自動車より安く済みます。タイヤも激安価格であれば4本で1万円を切ることも珍しくありません。税金や車検費用を除いた軽自動車の年間の維持費は、車種にもよりますが12万円程度。普通乗用車で人気のミニバンやSUVは18万円程度なので、年間で約6万円、月にすると約5,000円安いことになります。これに車検費用や税金の差額を足すと、その差はもっと開きます。

③税金が安い
年に一度の自動車税は普通自動車が2万5,000円~(排気量が上がるにつれ高くなる)なのに対し、軽自動車税は1万800円。例えば2,000ccの普通乗用車の3万6,000円(2019年9月30日以前に登録されたクルマの場合は3万9,500円)と比べると、2万5,000円以上も安くなります。また障害者手帳を持っている場合は、軽自動車に限って自動車税(軽自動車税)が免除となるなど、優遇策が取られています。

④高速道路の料金が安い
軽自動車は高速道路や都市高速道路などの有料道路の料金も普通乗用車より安くなります。割引率は道路や利用区間によって変わりますが、高速道路であればだいたい2割、ときにはそれ以上の割引となります。
例えば、関越自動車道で大泉JCTから碓氷軽井沢までETC利用で走ったとして、普通自動車だと3,700円ですが、軽自動車なら3,000円で済みます。東名高速で東京から京都南までのETC料金だと、普通自動車は1万300円なのに対し、軽自動車は8,310円。約2,000円の割引となります。
高速道路以外の有料道路の場合は、まれに普通車も軽自動車も同一料金というところもありますが、たいていの道路で軽自動車用の安い料金が設定されています。

⑤燃費がいい
軽自動車を選ぶ人の多くが理由に挙げるのが燃費の良さ。最近の軽自動車は1リッターで15km~20kmの燃費が当たり前。ガソリン代が値上がっているいま、燃費を考えて普通自動車から軽自動車に乗り換えている人も多いようです。ガソリン代そのものは普通車も軽も一緒ですが、普通車の満タン容量が40~60リッター(車種によってはそれ以上)あるのに対し、軽自動車の場合は満タンでも30リッター程度。1回あたりの給油量が少ないため、支払う金額も少なくて済みます。

⑥運転しやすい
軽自動車のオーナーは6割は女性だといわれています。そうした女性ドライバーからよく聞かれるのが「軽は運転しやすい」という感想です。サイズの小さな軽自動車は自分でコントロールしやすく、狭い道でのすれ違いも普通車ほど緊張感を強いられません。エンジンの排気量は660ccしかありませんが、最近の軽自動車は走行性能がよく、一般道であれば普通車と遜色なく走れます。高速道路でも法定速度の範囲内であればストレスなく走行が可能。むやみに速度が上がらないぶん、スピード違反で捕まることもありません。またサイズが小さいため駐車の簡単。車庫入れが苦手な人でも軽自動車ならばスムーズに出し入れできます。

⑦安全性・先進機能
最近の軽自動車はひと昔前のものと比べると格段の差で安全性が向上しています。車体自体が丈夫に作られているだけでなく、事故を防止するためのさまざまな先進機能を搭載しています。
例えば、軽自動車販売台数1位のN-BOXであれば、安全運転支援システムの「HONDA SENSING(ホンダセンシング)」を装備。衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、歩行者事故低減ハンドリング、路外逸脱抑制機能、アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システム、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、後方誤発進抑制機能、オートハイビーム、、パーキングセンサーシステムなど、普通乗用車と同等の先進機能でドライバーを事故から守ってくれています。

軽自動車のデメリットとは

軽自動車にはもちろんデメリットもあります。その多くは車体サイズの小ささに関係しています。

軽自動車のデメリット

①乗車定員が少ない
普通乗用車ならコンパクトカーで5名、ミニバンで7~8名、ワゴンのハイエースなら10名も乗車可能ですが、軽自動車の場合は4名までとなっています。そのため大家族やグループでのドライブには向いていません。

②荷室が狭い
全長が3.40m以下の軽自動車。さすがにトランクルームまではスペースを確保できません。そのため詰める荷物の量もそう多くはありません。ただしなかにはフラットシートを採用するなど、大きな荷物を積める工夫が施された車種もあります。また車内スペース自体が狭いため、かえってドリンクホルダーなどの収納スペースが無駄なく配置されていたりします。

③衝突事故が不安
最近の軽自動車が丈夫に作られていることは前述しました。とはいえ、やはりクルマとしてはミニサイズの軽自動車。普通乗用車と比較すると事故の際に受けるダメージは小さくありません。これを理由に軽自動車を選択肢からはずす人もいるほどです。

④風に弱い
車体の軽い軽自動車は燃費がいいかわりに強風が吹くとあおられてしまう危険性があります。

⑤エンジンにパワーがない
普通乗用車と比べると、どうしてもパワー不足は否めません。山道の登りなどではアクセルを踏み込んでも思うように走ってくれないという場面があったりします。ただ、最近の軽自動車は排気量こそ変わらなくてもパワフルになってきています。車種によってはターボ搭載車やハイブリッド機能を持つクルマもあり、以前よりもストレスなく坂道を走ることができます。

タイプ別に見る軽自動車

ひとくちに軽自動車といってもいくつかのタイプに分かれます。ここでは乗用車に限って見てみます。

①セダン
昔からあるベーシックなタイプの軽自動車で、フォルムはコンパクトカーと似ている。個人ユースが多く、地方では通勤、通学、買物、ルートセールスなどによく使われる。リーズナブルな価格の車種が多い。アルト(スズキ)、ミライース(ダイハツ)、モコ(日産)など。

②セミトールワゴン
1993年に登場したワゴンRが切り開いた新ジャンルで、広い室内スペースや高い位置からの運転のしやすさが魅力。走行性能もよくファミリーユースにも向いている。ワゴンR(スズキ)、ムーブ(ダイハツ)、デイズ(日産)、ekワゴン(三菱)、N-WGN(ホンダ)など。

③スーパーハイトワゴン
セミトールワゴンよりさらに背が高く、居住スペースが充実しているタイプ。子供の乗り降りを考慮してスライドドアを装備している車種が多い。人気ナンバーワンのN-BOXもこのタイプ。N-BOX(ホンダ)、タント(ダイハツ)、スペーシア(スズキ)、デイズルークス(日産)など。

他にも軽自動車にはSUVやクロスカントリータイプなどもあり。また荷室スペースを優先した商用バンなども人気です。

軽自動車はこんな人におすすめ

軽自動車のユーザーの多くは公共交通機関の発達していない地方に住んでいる人たちです。いちばん普及率の高い高知県では普及率50パーセント、走っているクルマの2台に1台は軽自動車だといわれています。こうした地方では、クルマは一家に1台ではなく1人に1台が当たり前。そうしないと生活が成り立たないからです。

いっぽう、都市部周辺でも最近は普通乗用車のかわりに軽自動車を選択する人が増えています。N-BOXなどファミリー向けの車種を買う人たちはこうした層に多いようです。

軽自動車はこんな人におすすめです。

・クルマにお金をかけたくない人
・乗りやすい(運転しやすい)クルマがほしい人
・燃費のいいクルマがほしい人
・かわいいクルマが好きな人
・クルマにステータスを求めない人
・毎日クルマを使う人
・セカンドカーがほしい人
・クルマは必要だけど節約もしたい人

この記事を書いている筆者も、実は軽自動車のオーナーです。
クルマは長い間、普通乗用車しか知らなかった自分がはじめて軽自動車に乗ったのは5年前。このときは事情があって急遽それまで住んでいた東京から横浜市のはずれに引っ越したため、とりあえず生活の足がほしいと車両価格19万円という格安の中古車を購入しました(都内に住んでいたときはクルマは不要だった)。

買ったのは、新車で納車されてから13年も経っていたクルマでした。それまで「軽はパワーがないからなあ」と敬遠していた軽自動車でしたが、乗ってみると印象は一変しました。一般道なら普通に流れに沿って走れるし、長距離のドライブもこなしてくれる。燃費は平均でリッター12km程度とあまりよくはなかったものの、他に不満はいっさいなし。車検も2度通しました。

とにかく運転はしやすいし、車庫入れは楽だし、どんな狭い道でも突っ込んでいけるし、その気になれば荷物もけっこう積めるしで、「なんでいままで乗らなかったのだろう」と軽を知らなかった自分がバカに思えたほどでした。

そんなわけで、昨年乗り換えた次のクルマも軽自動車となりました。現在乗っているのは2024年型のセミトールワゴン。ハイブリッド車でもあるこのクルマは燃費が良く、普段使いでリッター18km以上走ってくれます。静粛性も素晴らしく、乗っていて軽自動車とは思えないほど静かです。

自然吸気エンジンですが、加速力も俊逸。走っていてなんのストレスも感じません。高速道路もよく使います。こうなると、「もう一生軽でいいや」という気持ちになってしまいます。そして、本当にそうなるような気がしています。

お金がかからず走行性能や安全性、乗り心地も十分。これから資産形成に励みたいという人にも向いている軽自動車。今後はガソリン車だけでなくEV車も増え、ますます楽しいことになっていきそうです。

クルマを購入予定の方、ぜひ軽自動車も候補に入れてみてください。

文・中野渡淳一

文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。