老後資金のためにと多くの人が始めているiDeCo(個人型確定拠出年金)。資産形成のメリット以外にも、掛け金が節税になるメリットも。ただ、確定申告または年末調整をしなければ節税効果は得られません。ケース別のやるべきことや手続き、必要書類を解説します。
iDeCo (個人型確定拠出年金) は確定申告や年末調整が必要?
貯蓄以上に資産形成ができる可能性の高いiDeCo。受け取り自体は60歳以降ですが、現役時代にも掛け金を節税できるメリットがあります。その仕組みに加え、なぜ確定申告や年末調整が必要かを紹介します。
所得控除の対象となるiDeCoの掛け金
税制上の優遇措置が魅力のiDeCoですが、優遇措置を受けるためには個別に手続きを行う必要があります。
所得税、住民税の計算の際に必要となるのが、課税所得です。しかし、iDeCoで支払った掛け金は、所得控除の一種「小規模企業共済等掛金控除」の対象となるため、所得からマイナスすることができます。
【計算式】
課税所得=所得金額(収入―経費【※】)―所得控除
※会社員・公務員は給与所得控除
つまり所得控除額が高ければ高いほど、課税所得が下がり、税金を抑えることが可能となります。
「年末調整」「確定申告」自分がするのはどっち?
確定申告と年末調整は、それぞれ対象者が異なります。
会社員・公務員 | ・年末調整 ・確定申告 |
---|---|
自営業(個人事業主、フリーランスを含む)・無職 | ・確定申告 |
会社員・公務員の場合、年末調整で行うことが一般的ですが、年末調整には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。締め切りに間に合わない場合など、下記のケースでは、個別に確定申告を行う必要があります。
・iDeCoの初回の掛け金払い込みが、11月以降の場合
・小規模企業共済等掛金払込証明書の送付後に、掛け金額が変更になった場合
ただし、iDeCoの掛け金を毎月の給与から天引きしている場合は、年末調整も確定申告も不要です。(事業主が手続きをしてくれています)
iDeCoの年末調整に必要な書類・書き方
iDeCoの年末調整に必要な書類は
・小規模企業共済等掛金払込証明書(ハガキ)
・給与所得者の保険料控除申告書
です。
ただし、医療費控除を受ける場合、住宅借入金等特別控除の初年度申告の場合は別途書類を準備する必要があります。
ここではiDeCoの申告に必要な各書類についてのみ説明します。
小規模企業共済等掛金払込証明書
小規模企業共済等掛金払込証明書のハガキは、国民年金基金連合会から届きます。ただし、証明書が届く時期は、掛け金の払い方により異なるため注意してください。
年単位拠出を選択・掛け金を月別に指定→10月下旬頃に証明書が送付
月単位拠出→初回の掛け金を払い込んだ月により異なる
また、証明書発行後に掛け金の額を変更した場合も気になるかもしれませんが、この点はご安心ください。手続き不要で、自動的に変更後の金額が記載された書類が送付されます。
小規模企業共済等掛金払込証明書は、1年間(予定額含む)の掛け金を証明するための重要な書類です。年末調整の準備時期より早めに届くこともありますが、紛失しないよう気をつけてください。
給与所得者の保険料控除申告書
給与所得者の保険料控除申告書は、勤務先からもらう書類です。
小規模企業共済等掛金控除の2ヵ所
・確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金
・合計(控除額)
に「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載されている合計金額を書き写します。
「給与所得者の保険料控除申告書」に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、勤務先に提出してください。年末調整の手続きは、以上です。
iDeCo (個人型確定拠出年金) の確定申告の手順・書き方
次に、「会社員・公務員」、「自営業、無職」のパターン別に確定申告の手順・書き方を紹介します。
会社員・公務員がiDeCoを確定申告する場合
必要な書類(用紙)
・小規模企業共済等掛金払込証明書
・確定申告書A
「小規模企業共済等掛金払込証明書」の受け取り方は、年末調整に使用する際と同じため省略します。
「確定申告書A」第一表
『小規模企業共済等掛金控除⑦』の欄
↓
「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額を記入
「確定申告書A」第二表
1.『⑦小規模企業共済等掛金控除』『掛金の種類』の欄
↓
『個人型確定拠出年金』と記入
2.「確定申告書A」第二表『支払掛金』の欄・『合計』の欄
↓
「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額を記入
確定申告期限内に
・小規模企業共済等掛金払込証明書
・源泉徴収票
を添付した「確定申告書A」を提出します。提出先は税務署です。
令和3年度の確定申告は、スマホでe-Taxを使って行うこともできます。
【スマホで確定申告を行うために必要なアイテム】
・スマートフォン、タブレット
・源泉徴収票
・マイナンバーカード
・領収書や控除証明書
会社員・公務員がiDeCoを確定申告する場合の手続きは以上です。
自営業・無職がiDeCoを確定申告する場合
必要な書類(用紙)
・小規模企業共済等掛金払込証明書
・確定申告書B
「小規模企業共済等掛金払込証明書」の受け取り方は、会社員・公務員と同じため、省略します。
「確定申告書B」第一表小規模企業共済等掛金控除⑬』の右側の空欄
↓
「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額を記入
「確定申告書B」第二表
1.『⑬小規模企業共済等掛金控除』の『掛金の種類』の欄
↓
『個人型確定拠出年金』と記入
2.『支払掛金』の欄『合計』の欄
↓
小規模企業共済等掛金払込証明書に記載された金額を記入
確定申告期限内に「確定申告書B」に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、提出します。提出先は税務署です。
iDeCo の確定申告を忘れていた!ペナルティはある?
会社員・公務員の場合、年末調整での申告を忘れてしまっても、確定申告にて対応することができます。しかし、中には「確定申告も忘れていた」「確定申告はしていたが、過去数年間、記入を忘れていた」といったケースも存在しています。
結論から言いますと、iDeCoの掛け金を申告し忘れていたとしても、ペナルティは何もありません。ただ、iDeCoの掛け金を申告していない分、必要以上に所得税を納めている状態です。
手続きを忘れていたとしても「還付申告」をすることで、さかのぼって還付を受けることができます。
還付申告ができる期間は、iDeCoの掛金を支払った翌年1月1日から5年間です。期限が過ぎていた場合は、還付申告は不可能です。
(例)
平成29年分の所得税の還付請求可能期間
→平成30年1月1日から令和4年12月31日
還付申告はさかのぼって行うことが可能ですが、申告には期限があります。まずは確定申告を忘れないように、そして忘れていた場合は、すぐに還付申告の手続きを始めましょう。
小規模企業共済等掛金払込証明書を紛失したら?
小規模企業共済等掛金払込証明書を紛失した場合、利用している金融会社に払込証明書再発行申請書の代理作成を依頼することができます。依頼書のフォーマットも、金融機関から取り寄せてください。
所得控除で節税するためにも、万が一紛失した際は、早めに手続きを行うようにしましょう。
iDeCoは節税効果大!確定申告・年末調整をお忘れなく
iDeCoの所得控除手続きは年末調整、確定申告共に、所定の場所に「小規模企業共済等掛金払込証明書」の数字を転記することでほぼ完了します。また、確定申告も、スマホからe-Taxで行うことで、より簡単にできるようになっています。
全額所得控除ができるため、節税効果も高いiDeCo。小規模企業共済等掛金払込証明書が届く時期と、年末調整、確定申告の時期に差があるため、うっかり忘れてしまうことのないように意識し、毎年必ず申告するようにしましょう。
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。