以前から「働き方改革」の旗振りのもと、リモートワークやテレワークへの取り組みは行われてきましたが、一部の業界・業種や大手企業にとどまっていました。しかし今回の新型コロナウィルスの影響により、中小企業においても、リモートワークへの対応は喫緊の課題となっています。ただ、大手企業のように、資金面から機材やICT環境が思うように整わず、スムーズに移行できていない中小企業は多いようです。
新型コロナウィルスの感染拡大を防止する目的で、政府は大手企業及び中小企業に対しても、在宅勤務への移行を呼びかけ、各種の助成金対策を行っています。
この記事をご覧になっている中小企業の経営者の方の中で、リモートワークの導入を検討されている方は多いのではないでしょうか。公的機関が施行するリモートワーク関連の助成金にはどのような種類があるか、再度、確認されてみてはいかがでしょう。
助成金と補助金との違い
国や地方公共団体等が、事業を援助するために支給する資金を、一般的に「助成金」と呼びます。金融機関の融資とは異なり、給付されても返済義務はない資金です。似たようなものに「補助金」がありますが、明確な違いはありません。それぞれの特徴について確認してみましょう。
助成金とは
助成金は要件を満たし、申請に不備がなければ、支給がほぼ確実に行われるものです。予算や採択件数がはっきりと決まっているわけではないため、要件を満たす企業が100社申請してきた場合、100社全てに助成金が支払われることもあります。
補助金とは
補助金は助成金とは異なり、公募時点から予算や採択件数がしっかり決まっています。そのため、審査は厳しく、応募企業の中から特に優れたところにのみ支払われるという特徴があります。要件を満たしている企業であっても支給が受けられない可能性が大いにあることを知っておきましょう。
助成金と補助金 それぞれのメリット・デメリット
・助成金のメリット・デメリット
メリットとしては、原則として1年を通して、申請することが可能です。社員数や業績など、規定された条件に合致すれば、おおむね全額が支給されます。また、条件を満たした雇用を継続すれば、毎年、助成金を受給することができます。一方、デメリットとして、助成金の内容によっては応募が殺到するものもあり、また申請前に現地調査を要するケースもあるので、公示されたタイミングで応募しても間に合わなくなることもあります。
・補助金のメリット・デメリット
補助金は、経済産業省が公募しているものや各自治体や公益法人などが実施しているものなど、多岐に渡っており、助成金に比べて種類が豊富にあります。助成金と比較すると、補助金の支給額は高額になるパターンが多く、場合によっては数百万円から数億円に達することもあります。また、支給の対象となる経費の範囲が広い点も、メリットに数えられるでしょう。これに対してデメリットとしては、公募期間が一定時期で期間も短いことが挙げられるでしょう。また、給付に至るまでには審査があるため、助成金よりはハードルが高く、補助金の種類によっては40%程度になることもあります。
厚生労働省が支給する助成金
ではここからは、リモートワークやテレワークに関する助成金には、どのようなものがあるかご紹介しましょう。
<人材確保等支援助成金(テレワークコース)>※1
在宅やサテライトオフィスにおいて就業するテレワーク勤務を制度として導入、併せて就業規則等の作成やテレワーク用通信機器等の導入・運用等も実施し、従業員の離職率の低下について効果を上げた中小企業に支給されるものです。
新規に導入する場合だけでなく、試行的に導入している、または試行的に導入していた場合も対象となります。
経済産業省が支給する補助金
<IT導入補助金>※3
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者を対象に、自社が抱える課題の解決を目的としたITツール導入経費の一部を補助し、企業の業務効率化と売上向上に貢献するものです。
様々な業種や組織形態に対応しており、自社のニーズに合ったITツールを導入することが可能になります。補助対象となる事業主は、卸・小売、飲食・宿泊、医療、運輸、介護・保育などのサービス業や、製造業・建設業といった中小企業です。また、常勤従業員が5人以下の商業・サービス業、20人以下の宿泊・娯楽業、同じく20人以下の製造業といった小規模事業者も含まれます。対象となる経費は、ソフトウェア費用やIT導入関連費用などで、費用の2分の1を、最大で450万円までを補助してくれます。
※3 IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/first-one/
まとめ:自社の改題を解決する上で必要な助成金・補助金を見極める
4月7日に発令された緊急事態宣言は、1カ月半あまりで全国において解除されました。しかし新型コロナウィルスの脅威は終息したわけではなく、「新コロナ後」の生活や働き方が模索される中、リモートワークという働き方には改めて注目が集まっています。
リモートワークやテレワークは、業務の効率化はもちろん、経費削減、ライフワークバランスの実現など、色々なメリットがあります。また、今回の新型コロナ禍をきっかけに、非対面型のワークスタイルという一面がクローズアップされています。情報通信技術(ICT)を活用して集中的に作業し、遠隔地にいる相手と会議や商談を行うという、場所や時間に縛られない働き方は、これからのビジネスのスタンダードとなるかも知れません。
そうしたビジネス環境にいち早く適応するために、今から公的な助成金や補助金を上手に活用し、リモートワークの導入を進めておくことが、望ましいのではないでしょうか。
助成金や補助金は、給付を管轄する機関により、条件や内容は様々です。
自社の課題を解決する上で、必要な助成金・補助金は何なのか、見極めるようにしてください。