事業展開を計画する際、要となるのが資金繰りではないでしょうか。折角、優れた事業計画を策定しても、元手がなくては「絵に描いた餅」になってしまいます。資金の調達方法としてすぐに思い浮かぶのは金融機関からの借入れですが、返済をしなくてはなりません。
返済不要の資金を調達したいと考えるならば、国や地方公共団体等が実施している補助金・助成金制度を検討しましょう。とりわけ補助金は、支給額も高額になるケースもあるため、事業者の方々には魅力のある制度です。
ただ補助金に関しては、こんなことを耳にしたことはありませんか?「申請書の作成が難しい」、あるいは「採択を受けるまでが一苦労だし、給付を受けるためには制約が多くて面倒だ」。
確かに、これは事実です。本業のほかに、補助金申請のためにそんな時間も労力もかけられない、と尻込みするかもしれません。しかし、補助金は融資とは違い、返さなくてもよいお金、つまり「もらえるお金」なのです。これを利用しない手は、ありません。申請に関しては、事業者自身が行うのが基本ですが、助っ人の手を借りるという選択肢もあります。その助っ人が、「補助金申請コンサルタント」と呼ばれる存在です。
今回は、補助金申請コンサルタントについて解説します。
補助金の性格と種類
一口に補助金と言っても、補助事業の目的も規模も様々です。まずは補助金がどのような性格の制度であるかを理解し、併せて代表的な補助金についても見ておきましょう。
補助金とは? 助成金と何が違う?
補助金・助成金は、国や地方公共団体等が、政策を推進するためにあります。政策目的に合致した事業に資金援助し、てこ入れすることにより、政策の実行を図ろうとするのが狙いです。
補助金と助成金ともに公的資金(税金・雇用保険料など)が財源となっており、明確な違いはありません。ただ、助成金が要件を満たした事業者には原則給付されるのに対し、補助金は採択件数や金額が予め決まっているものが多く、申請したからといって必ずしも受給できるわけではありません。
申請から支給までの流れも異なります。
助成金は、一定の条件を満たしていれば、原則として支給されると考えておいてよい資金です。これに対して補助金は、一定期間中に応募された申請書について、厳正な審査が行われ、優秀な事業計画が採択されます。ここで言う優秀とは、その事業が、他の応募者と比べて、いかに制度の目的に合っているかを意味します。従って、申請者全員が採択される、ということはあり得ず、倍率も数倍から数十倍になることもあります。
補助金の種類
ではここで、補助金にはどのようなものがあるか、代表的な制度を確認しておきましょう。
・事業再構築補助金
令和二年度第三次補正 令和三年度補正 令和四年度予備費 事業再構築補助金 第9回の公募が開始されました。締切は2024年3月24日(金)18:00までです。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、売上や需要の回復は当分見込めない状況下で、ポスト・ウィズコロナを見据え、社会や経済の変化に対応しつつ、新分野への展開及び、業態・事業・業種転換を通じて、意欲的な事業再構築を模索する企業を応援する制度です。これにより、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
<補助金額>
[通常枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに、
従業員数20人以下 100万円~2,000万円
従業員数21~50人 100万円~4,000万円
従業員数51~100人以下 100万円~6,000万円
従業員数101人以上 100万円~8,000万円
[大規模賃金引上枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに、従業員数101人以上 8,000万円超~1億円
[回復・再生応援枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに、
従業員数5人以下 100万円~500万円
従業員数6~20人 100万円~1,000万円
従業員数21人以上 100万円~1,500万円
[最低賃金枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに、
従業員数5人以下 100万円~500万円
従業員数6~20人 100万円~1,000万円
従業員数21人以上 100万円~1,500万円
[グリーン成長枠]
中小企業者等 100万円~1億円
中堅企業等 100万円~1.5億円
[緊急対策枠]
従業員数5人以下 100万円~1,000万円
従業員数6~20人 100万円~2,000万円
従業員数21~50人以下 100万円~3,000万円
従業員数51人以上 100万円~4,000万円
<補助率>
[通常枠]
中小企業者等:2/3(6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業当:1/2(4,000万円を超える部分は1/3)
[大規模賃金引上枠]
中小企業者等:2/3(6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業当:1/2(4,000万円を超える部分は1/3)
[回復・再生応援枠]
中小企業等:3/4
中堅企業等:2/3
[最低賃金枠]
中小企業等:3/4
中堅企業等:2/3
[グリーン成長枠]
中小企業者等:1/2
中堅企業等:1/3
[緊急対策枠]
中小企業等:3/4(※1)
中堅企業等:2/4(※2)
(※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、 従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える 部分は2/3)
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、 従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える 部分は1/2)
令和二年度第三次補正・令和三年度補正・令和四年度予備費 事業再構築補助金 第9回
ものづくり補助金
令和元年度補正・令和二年度補正の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の第14次締切分の公募が開始されています。申請締切は、令和5年4月19日(水)17時までです。
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後直面するであろう、数年に渡る制度変更に対応するべく、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的なサービスや試作品の開発、及び生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援することを目的としています。また、通常枠とは別に「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」が新たに設けられました。
<補助金額上限>
【一般型】
[通常枠]
750万円~1,250万円
[回復型賃上げ・雇用拡大型]
750万円~1,250万円
[デジタル型]
750万円~1,250万円
[グリーン型]
1,000万円~2,000万円
※従業員規模により補助の上限金額は異なります。
【グローバル展開型】
3,000万円
<補助率>
【一般型】
[通常枠]
中小企業 1/2 小規模企業者・小規模事業者 2/3
[回復型賃上げ・雇用拡大枠]
2/3
[デジタル枠]
2/3
[グリーン枠]
2/3
【グローバル展開型】
1/2
【小規模事業者等】
2/3
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(14次締切分)
小規模事業者持続化補助金
※令和元年・3年度度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>は2024年2月20日(月)の第11回締切をもって終了の予定です。
本補助金事業は、「補助金適正化法に」に準じ、小規模事業者が自らの事業を見つめ直し、地域の商工会や商工会議所の助言を受けつつ経営計画を作成し、その計画に沿って販路開拓等に取り組む場合、一部の費用を補助する制度です。
<補助金額上限>
[通常枠]
50万円
[賃金引上げ枠]
200万円
[卒業枠]
200万円
[後継者支援枠]
200万円
[創業枠]
200万円
[インボイス枠]
100万円
<補助率>
全ての枠で2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者については3/4)
補助金の申請は事業者自身で行うべき?
補助金の給付を受けるには、管轄する省庁に申請を行わなければなりません。申請手続きは、補助金の種類により色々あり、難易度も異なります。先に述べたように、補助金の申請書は、主たる事業計画について厳しい審査がなされ、その事業が制度の目的にかなっているか吟味されます。審査のポイントは、事業の革新性、実現可能性などですが、それには、マーケティングや組織体制、工場の生産管理、財務会計など、あらゆる角度から調査される訳です。
技術やサービスの優れた点についてアピールするだけなら、事業者自身で行うのがベストでしょう。しかし問われているのは、その事業を実施することで、国や自治体が実施する制度の目的に、どれだけ貢献できるかなのです。審査委員は、大学教授といった知識人や、企業の役員などの要職者ばかりです。彼らを説得できるだけの知識と文章力は、専門家でなければ持ち合わせていない、と言えるでしょう。
補助金申請コンサルタントにはどのようなものがあるか
補助金申請のコンサルタントには、どのような人たちがいるのでしょうか。
まず思い浮かぶのは、税理士、行政書士、中小企業診断士などの士業(さむらいぎょう)ではないでしょうか。ほかには、民間のコンサルティング会社などが挙げられるでしょう。
1 税理士
税理士は、事業所の税務書類の作成、申請等が独占業務です。税務の専門家であり、
多くの中小企業の経営者の方にとって、彼らは一番身近な相談相手と言えるでしょう。
顧問税理士であれば、担当する企業の過去の決算情報などは、十分に把握しているでしょうから、数値分析を含めた事業計画書の作成には長けている人物が多いのではないでしょうか。ただ、補助金の申請に必要な事業計画書は、その企業の事業や市場について、定性的な分析が欠かせません。数値に基づいた定量的な分析は得意でも、数値以外の分析の経験は少ない、という税理士が意外に多いのも事実です。また、税理士だからといって、あらゆる業界に精通しているとは限りません。顧問先企業の事業内容について、限られた知識しか持ち合わせていない税理士であると、補助金申請のコンサルタントとしては、いささか物足りなさを感じます。
2 行政書士
官公署に提出する許認可書類の作成と、申請の代行を独占業務としています。
補助金について明るい人物が多く、補助金の申請書類の作成と、申請代行までを請負っている行政書士もいます。
3 中小企業診断士
経済産業省が唯一認める、経営コンサルタントの国家資格です。経営計画やマーケティング、人事・労務、工場や店舗のオペレーション、財務分析など、経営に関する幅広い知識を有しています。他の士業とは違い、独占業務はありませんが、経済産業省が提供する補助金には詳しい中小企業診断士は多いようです。
4 民間のコンサルタント会社
インターネットで検索すると、補助金申請のコンサルを生業とする会社が無数に名を連ねています。サービス内容は、申請書作成サポート及び代行のみの場合もあれば、採択後の各種の報告書作成、立ち入り検査対策など、実務上のアドバイスを受けられるコンサルタントもあります。
補助金申請コンサルタントの報酬の相場
上記の補助金申請コンサルタントに、申請書類の作成を頼むと、当然ながら費用が発生します。補助金申請コンサルの報酬は、大きく分けて2つあります。1つは着手金、もう1つは成功報酬です。着手金とは、契約を結んだ際に支払うお金であり、補助金が採択されようがされまいが、一律にかかる費用です。また成功報酬は、補助金が採択された時のみ支払う報酬であり、補助金額の数%程度と定められています。
補助金の報酬は、専門家や業者により様々で、相場は一様には言えません。ただ、あえて言うなら、着手金の相場は5万円~15万円程度、成功報酬の相場は、実際に給付された補助金額の10~20%程度です。
まとめ:補助金申請コンサルの手を借り、補助金をうまく活用しよう
補助金や助成金は、金融機関からの融資とは異なり、返済する義務のない、「もらえるお金」です。しかも融資の場合、金融機関が売上や利益等、事業の規模に応じて借入れ限度額を決定しますが、補助金・助成金は予め決められた金額を全額支給されます。
助成金の申請は、申請書類が一定の要件を満たしていれば、誰でも給付を受けることが可能です。これに対して補助金は、申請書類に添付する事業計画書の作成にはじまり、採択後の交付申請書の提出、補助事業を開始してからの各種報告書の提出、確定検査への対応など、公募から支給を受けるまで、やるべき事は山のようにあります。事業者が補助金申請業務のすべてを担い、社内で完結させるケースもあるでしょう。しかし実際は本業が忙しく、中々補助金の申請に踏み出せない、という声も耳にします。
中小企業や小規模事業者を取り巻く環境は、年々厳しさを増す一方です。折角、国や自治体が支援してくれる制度を、利用しない手はありません。補助金を賢く活用して、自社の競争力をつけることを考えてみても良いかもしれません。