新型コロナウイルスの感染拡大は、変異株(オミクロン型)の発生以来、新局面を迎えています。全国の新規感染者数は、2024年8月24日の時点で243,483人で、5週連続世界最多となっています。※1
「ポストコロナ・ウィズコロナ」が叫ばれてから久しいですが、まだまだ、本格的な経済回復は見通せない状況です。しかしこんな事態だからこそ、企業経営者の方であれば、自社の強みを見直し、新たな事業展開に備える時期ではないでしょうか。
「とは言え、こんなご時世じゃ、資金繰りは難しい」と眉間にしわを寄せる社長さんも多いことでしょう。資金調達手段は、金融機関からの借入れが一般的ですが、最近では国や地方公共団体等からの支援事業が数多く見られます。今回は、国の支援として知られる助成金と補助金にスポットを当て、両者の違い、それぞれ代表的な助成金・補助金の種類について、詳しく解説します。
助成金と補助金との違い
国や自治体の支援事業の代表格とも言える助成金・補助金ですが、この両者の違い、正確に答えられますか?
実は、助成金と補助金には明確な違いがありません。
両方とも政府や地方公共団体が政策を推進するためや企業支援に行うもので、その政策の目的に沿った事業展開を志向する企業に対し、一定額の金銭面での支援を行うものです。
採択件数の違い
助成金と補助金とでは、採択される件数に大きな違いがありますので押さえておきましょう。
まず、両方とも、申請後に一定の審査を受ける必要があります。
助成金は、審査が形式的な要件を満たしているかが基準対象であるのに対し、補助金は形式要件を満たしているかはもちろん、申請書の中身も詳しく審査されます。つまり補助金の申請では、提案する事業計画が妥当なものか、また、生産性の向上等にどれほど役立つものなのかを確認されるのです。
また、助成金の方は申請書が一定の形式要件を満たせば、ほとんどのケースで支給されるのに比べ、補助金は申請者全員に支給されることはあり得ません。補助金の申請書の採択率の倍率は非常に低く、数十件の申請があっても、採択されるのはその中の数件、ということもざらです。補助金と助成金とでは支給の難易度が大きく違うと考えておきましょう。
助成金の種類
ではここからは、助成金、補助金、それぞれに具体的にはどのような支援事業がるか、見ておきましょう。
まずは、助成金からです。
1 雇用調整助成金
産業構造の変化、景気の変動など、主に経済の外部環境の変化により、事業規模の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整を実施することで、従業員の雇用を維持した場合、休業手当及び賃金の一部が助成される制度です。
売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1ヶ月間の値が、1年前の同じ月に比べ5%以上減少していることなどが支給要件となります。
2024年11月30日までの間、新型コロナウイルス感染拡大防止のための特例措置が講じられました。2024年12月1日から2024年3月31日(緊急対応期間にコロナ特例を利用した事業者が対象)まで経過措置を実施しています。
※2 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
2 新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金
2024年12月1日から2024年3月31日までの間に、保護者として子供の世話を行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主のための助成金です。※3
2024年12月1日~2024年3月31日に休暇を取得した場合の助成金日額上限額は次の通りです。
・2024年12月1日〜2024年3月31日:8,355円
申請期限は2024年5月31日(必着)となっています。
※3 新型コロナウイルス感染症による 小学校休業等対応助成金について
補助金の種類
次に、補助金にはどのようなものがあるか、確認しておきます。
1 ものづくり補助金
正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。正式名称を見れば分かることですが、町工場などの製造業だけではなく、商業・サービス業、IT業など、幅広い業種で活用することが可能です。
中小企業・小規模事業者等が、今後数年に渡って直面するであろう制度変更に対応するために、彼らが取り組む革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善に伴う設備投資等を支援することが助成事業の目的です。
補助上限額は、[一般型]が1,250万円(※グリーン枠のみ2,000万円)、[グローバル展開型]が3,000万円まで。補助率は、[一般型]の通常枠、[グローバル展開型]が中小企業で1/2、小規模事業者で2/3、、[一般型]の回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠が中小企業、小規模事業者ともに2/3となっています。
公募要領
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(14次締切分)
2 小規模事業者持続化補助金
従業員数が5〜20人以下の小規模事業者等を、支援する制度です。
小規模事業者等が、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした事業です。補助上限額は、[通常枠]で50万円、[インボイス枠]で100万円、その他の枠が200万円になります。
公募要領
令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金
※小規模事業者持続化補助金は2024年2月20日(月)締切の第11回をもって終了の予定です
3 事業再構築補助金
この事業は、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中で、売上や需要面で打撃を受けた中小企業が、ポストコロナ・ウィズコロナを見据え、新分野への展開、事業・業種・業態転換、事業再編などの取り組みを支援することにより、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。また、事業再構築を通じて事業規模を拡大した企業、あるいは海外展開を強化することで、新規顧客を開拓することにより、より高い成長率を実現する企業を一層重点的に援助するものです。現在、第9回の事業再構築補助金の公募が開始されており、締切は令和5年3月24日(金)18:00(厳守)となっています。
令和二年度第三次補正・令和三年度補正・令和四年度予備費 事業再構築補助金 第9回
まとめ:助成金・補助金を活用して、競争力をつけよう
この稿では、助成金・補助金について、考察してみました。
両者の相違点としては、管轄の違い、財源・予算の違い、そして採択基準などです。ことに補助金は、申請書に添付する事業計画書の内容は厳正に審査され、採択される確率は30~40%程度と言われています。それでも、補助金の申請件数は、増加の一途を辿っています。それは、中小企業者や小規模事業者の方々が、この支援事業に魅力を感じているからにほかなりません。
事業に要した費用の全額、もしくは一部について給付される訳ですが、活用することにより、事業運営に伴うリスクを低減させることが可能になるのです。
また助成金・補助金共に、帳簿上は、営業外収益に「雑収入」として計上されます。助成金・補助金の給付により、何の労も要さずに、利益を上げることができるのです。
助成金・補助金は、融資などと違い、返す必要のないお金、すなわち「もらえるお金」です。国から手を差し伸べているのに、これを利用しない手はありません。今のように、日本の産業界が停滞している時こそ、国の支援制度を上手に活用して、自社の競争力を上げるべきなのです。