補助金・助成金

中小企業が使える支援金はあるの?/中小企業のビジネスを支える助成金・補助金一覧

助成金、補助金ともに、国や地方公共団体が資金面から、企業を支援しようとする施策の一環ですが、それには狙いがあります。今回は、助成金・補助金の基本的な性格と、両者の違いについて見ておきます。併せて、中小企業・小規模事業者が活用しやすい助成金・補助金をいくつかご紹介します。

助成金・補助金の基本知識

政府は、国民の生活が経済的に向上するように様々な政策を推進しています。その手段の一つとして、事業者に助成金・補助金を給付することがあります。設備投資や従業員への投資を促し、事業を発展させることにより、労働者すなわち一般消費者の賃金を増やすという、狙いがあるのです。

1助成金・補助金の目的

政府や自治体が、自らの政策を推進するため、政策目的に合致した事業に資金援助することで、スムーズに施策を実行に移すのが、助成金・補助金事業の目的です。どのような助成金・補助金があるか、政策を見ていれば分かります。

例えば、温暖化ガス削減が政策目的であれば、CO2排出を減らす設備投資を補助する、といった具合です。

また、どうすれば助成金・補助金がもらえるのかも、おのずと見えてきます。

資金を提供する側としては、そのお金がどう使われたか、気になる所です。貴重な税金や国・地方公共団体の資金から捻出されるのですから、費用対効果が重要視されます。資金援助した事業がすぐにつぶれるのでは、担当者としても立場がありません。従って、その事業に実現可能性があるか否か、が審査のかなめとなるのです。

助成金・補助金は、基本的には返済義務のない資金です。つまり、「もらえるお金」という訳です。ここが、融資とは決定的に違う点です。ただし、誰でも容易にもらえる、というものではありません。申請書を作成して提出し、審査に通る必要があります。ことに補助金は、事業計画の内容が厳しく問われるため、採択を受けるのは簡単ではありません。

また、助成金も補助金も、原則として後払いです。申請が受理された後、計画に沿って事業を実行し、資金の支給を請求して認められれば、晴れて口座に振り込まれるのです。つまり給付までは、発生した費用は全て立て替えとなります。ですから、まずは自己資金で事業を行い、事後に請求払いを受ける形となります。

2助成金と補助金との違い

助成金と補助金には明確な違いはありません。どちらも公的な資金から支払われるため、決まった時期にのみ申請を受け付け、審査もしっかりと行われます。

例えば、厚生労働省が管轄する雇用・労働関係助成金の財源は、企業が支払っている雇用保険が主となります。ですから、助成金を利用しようとする企業も原則として、雇用保険の運用事業の事業主である必要があります。また以下のいずれかに該当する企業は、雇用関係の助成金を受給できません。

・不正受給をしてから3年以内に支給申請をした企業、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした企業

・支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない企業(支給申請日の翌日から起算して2ヵ月以内に納付を行った企業を除きます)

・支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった企業

※その他にも受給不可になる条件がいくつかあります。

ただし、助成金は申請し、支給要件を満たしていればほぼ支給されると考えておいてよいでしょう。

一方、補助金は、国民から徴収した税金、および国や地方公共団体の資金を財源としています。これらの資金は年によって変動があることが一般的なため、予算や採択件数が限られていると考えておきましょう。審査では、提案した事業内容が、他の応募者に比べて、政策の目的に沿っているかが問われます。申請者全員が採択されることはなく、倍率も数倍から数十倍という難易度です。

使える助成金一覧

ではここからは、実際にどのような助成金があるか、ご紹介しましょう。

助成金は、頻繁に制度が更新されます。雇用・労働関係の助成金を多く取り扱う厚生労働省のサイト※1を常にチェックして、最新情報を確認しておきましょう。

※1厚生労働省のサイト

雇用調整助成金

景気の変動や、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を強いられた事業主が、休業や職業訓練あるいは出向など、一時的な雇用調整を実施することにより、従業員の雇用を維持した場合に助成されるものです。ことに今回、新型コロナウィルス感染症の影響により、労使間の協定に基づき、雇用調整を実施する企業には、休業手当の一部を助成することになっています。

雇用調整助成金(新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特例)

トライアル雇用助成金

職業経験の不足から、就職が困難な求職者を、原則として3か月間雇用することにより、その適性や能力を見極め、常用雇用への移行のきっかけとすることを目的とした制度です。労働者の適性を確認した上で、常用雇用できるため、ミスマッチの予防になります。助成金の支給額は、対象者1人当たり、月額最大で4万円です。ただし対象者が母子家庭の母等または、父子家庭の父の場合は、1人当たり月額5万円となります。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

産業雇用安定助成金

新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、事業活動の一時的な縮小を迫られた事業主が、在席型出向により、労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の両方の事業主に対し、出向に要した賃金の一部を助成する制度です。

①出向運営経費

出向元事業主、並びに出向先事業主が負担する賃金、教育訓練、労務管理に関する諸経費など、出稿中に生じる経費の一部を助成するものです。

受給額は、以下の通りです。

◯出向元が労働者の解雇等を行っていない場合:中小企業は9/10 中小企業以外は3/4

◯出向元が労働者の解雇等を行っている場合:中小企業は4/5 中小企業以外は2/3

上限額は、出向元と出向先の合計で1日に12,000円です。

②出向初期費用

就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出港に際して事前に行う教育訓練、出向先事業者が出向者を受け入れるための機器や備品の整備など、出向の成立までにかかった費用の一部を助成するものです。

助成額は、出向元、出向先ともに、1人当たり10万円です。

産業雇用安定助成金

利用したい補助金一覧

経済産業省が関連する補助金については、予算案等の概要を、サイトで確認しておくと、実施中または実施予定の制度情報を取得できます。その他、各地方公共団体等の補助金についてはそれぞれのサイトをチェックしてください。

経済産業省サイト

補助金は、支給額が大きい案件から細かいものまで合わせると、毎年3,000件以上もあります。自社に当てはまる補助金を探すのは、容易ではありません。ここでは比較的、中小企業・小規模事業者が利用しやすい補助金をご紹介します。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

通称、「ものづくり補助金」と呼ばれるものです。中小企業・小規模事業者等が、今後直面するであろう制度変更等に対応するため、彼らが取り組む革新的サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善のための設備投資を支援することを目的とした補助金です。加えて、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により被害を受けた中小企業・小規模事業者等が、ビジネスモデル転換など、前向きな投資を行う場合、通常枠とは別に補助率を上げ、営業経費を補助対象とした新特別枠として、「低感染リスク型ビジネス枠」を新設し、優先的に支援を行います。

補助上限額は、[一般型]で1,250万円、[グローバル展開型]で3,000万円まで。

補助率は、[通常枠]が1/2、小規模事業者等であれば2/3、となっています。

2024年1月11日(水)から、第14次締切分の公募が開始されています。申請受付開始は2024年3月24日(金)17時から、応募締切は2024年4月19日(水)17時までです。

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」公募要領(第14次締切分)

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が今後複数年にわたり直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度の導入等)に対応するため、販路開拓、業態転換、生産性向上の取り組みに乗り出す場合、国が支援する制度です。これにより、地域の産業及び雇用を支える小規模事業者等の生産性の向上と、持続的な発展を図ることを目的としています。補助上限額、補助率は以下の通り。

[通常枠]  補助上限額:50万円 補助率:2/3
[卒業枠] 補助上限額:200万円 補助率:2/3
[創業枠] 補助上限額:200万円 補助率:2/3
[賃金引上げ枠] 補助上限額:200万円 補助率:2/3(赤字事業者は3/4)
[後継者支援枠] 補助上限額:200万円 補助率:2/3
[インボイス枠] 補助上限額:100万円 補助率:2/3

令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領

※小規模事業者持続化補助金は2024年2月20日締切の第11回をもって終了の予定です。

事業再構築補助金(第7回)

新型コロナウィルスの感染拡大により、売上や需要に深刻な被害を受けた中小企業が、それでもポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会を見据え、新分野への展開、業態及び事業・業種転換、思い切った事業の再構築に取り組む際、それらの挑戦を国が支援することにより、日本経済の構造転換を促進させることを目的としています。また、事業再構築により事業規模を拡大し、中小企業等から中堅・大企業へと成長することを志向する事業者、海外市場で新規開拓を展開することで、高い成長率を狙う企業に対しては、さらに強力にサポートするようです。

現在、第9回の公募が開始されており、2024年3月24日18時までが締切となっています。

令和二年度第三次補正・令和三年度補正・令和四年度予備費 事業再構築補助金 公募要領

まとめ:助成金・補助金を賢く利用して、自社に競争力をつけよう

ここまで読まれて、思ったよりも制約が多く、煩わしさを感じた方もいらっしゃるでしょう。ただ、新型コロナ禍の影響により、疲弊している中小企業及び小規模事業者の方は少なくはないはずです。このような時期だからこそ、国や地方公共団体が手を差し伸べてくれているのですから、利用しないのはもったいないことです。助成金・補助金を活用することにより、ポストコロナ、ウィズコロナの市場で勝ち抜く競争力をつけたいものです。

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