個人事業主だけでなく、副業を営むサラリーマンにとって大切な「必要経費」。ここでは「経費」「必要経費」「家事按分」の言葉の意味と、必要経費に関するよくある質問についてわかりやすく解説します。「必要経費って一体何?」という方にわかりやすく解説します。
基本のおさらい「経費」とは?「必要経費」とは?
経費とは、事業の利益を出すために発生した費用のことをいいます。FXで使用するパソコン、ネットショップで販売するための商品のように、なければ事業が成り立たないものと考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、経費として申告できるのは、次の3つの所得のみです。
(参考:国税庁 やさしい必要経費の知識)
事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から発生する所得
不動産所得
自分の土地や建物の貸付、資産運用を目的としたワンルーム貸し、自分の土地に建てた看板の使用料など
雑所得
国税庁の分類では「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」のことをいいます。つまり、大きく言えば、他の所得にあてはまらないもの=雑所得として扱われるということになります。
サラリーマンの副業としても人気のFXの収入や自分で運営するネットショップの利益は、雑所得に当てはまることが多いようです。
必要経費になるもの
必要経費とは「事業に関係し、業務を行う上で必要なコスト」です。例えば次のような費用は、必要経費として計上できることが多くなっています。
- 通信費(インターネット料金、電話料金など)
- 旅費交通費(業務中に使用した公共交通機関の料金や駐車料金など)
- 消耗品費(文房具、プリンタのインクなど)
- 新聞図書費(新聞代、本代など)
- 接待交際費(取引先へのお中元・お歳暮代、取引先との食事代など)
- 外注工賃(業務の一部を外部業者・スタッフに依頼した場合の費用など)
ただし、全て「事業のために必要」であることが条件です。厳密には、何が経費で何が経費ではないかを法律で定められているわけではありません。だからこそ、はっきり「事業に必要」と言えるかどうかを判断基準にしましょう。
必要経費にならないもの
次に、必要経費として計上できない例を紹介します。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料(国民健康保険、国民年金)
- 妻や夫、親族に支払う給料(※)
- 罰金
- 人間ドッグや健康診断の費用
- 事業に関係なくプライベートで使用した費用(家族との食事代、友人との旅行の交通費など)
※青色事業専従者給与は除く
所得税や住民税は、個人が負担するものであり、事業には無関係のため、必要経費にはなりません。また社会保険料も、一定金額の所得控除を受けられますが、経費としての計上はできません。
事業とプライベートが混ざる経費は「家事按分」が必要
事業に使った費用のみを「必要経費」として計上するルールですが、事業・プライベートの両方に使用するものもあります
例
- 副業のFXに使用するパソコンをプライベートでも使用する
- 自宅を住居兼事務所として使用する
副業分・プライベート分を分けることを「家事按分」といいます。利用時間や面積(家賃の場合)で分けることが一般的です。客観的に見た際に納得できる分け方をしておきましょう。
不正な申告はペナルティの可能性も!
たいした金額ではないからと、本来経費として認められないものを経費として計上。バレなければ大丈夫と思っていませんか?
不自然な申告に関しては、税務署の調査が入る可能性があります。調査の結果、不正が発覚するとさまざまなペナルティが発生してしまうことに。
例えば、本来の税額より少ない金額での申告の場合は「過少申告加算税」として未納分+10%が加算されます。「去年バレなかったから」「○○さんが大丈夫だと言っていたから」といった理由での不正申告はやめて、適正な申告を行うようにしましょう。
確定申告の必要経費についてよくある質問
必要経費を計算し、いざ確定申告をしようとした際「あれ?これって大丈夫?」と、疑問に感じることも多いもの。ここでは、確定申告と必要経費に関するよくある質問をまとめました。
確定申告の経費は、一体いくらまでOK?
確定申告の際に計上する経費に、上限はありません。金額も割合も、特に縛りはありません。ただし、「上限がない=何でも経費として計上してOK」ではないことに注意してください。
事業に必要な支出=必要経費です。
収入よりも経費が多いと、確定申告で問題になる?
収入よりも経費(支出)が多い場合は、「赤字」の状態です。ただし、税務申告だけに限ると、赤字だからといって問題視されることはありません。
本来経費として計上してはいけないものが混ざっていると問題ですが、収入と経費のバランスだけで問題視されることはありません。
確定申告の際には必要経費の領収書を提出する必要がある?
確定申告の際には、領収書やレシートを提出する必要はありません。ただし、一定期間は残しておく必要があります。
保管方法にも、特に決まりはありません。ノートなど紙に貼ったり、月別に封筒に入れたりと自分が管理しやすい方法でOKです。
必要経費=事業に必要な出費!副業も経費は計上しよう
何より押さえておきたいポイントは、事業に必要な経費=必要経費であるということです。金額や割合ではなく、第三者に説明できるかどうかを基準に考えましょう。また、プライベートと事業両方で使用するものに関しては「家事按分」の考え方を適用してください。
【必要経費まとめ】
- 必要経費=事業に必要なコスト
- 経費の根拠を説明できる必要がある(「なんとなく」はNG)
- 帳簿(ExcelなどでもOK)上で処理しておく
- レシートや領収書は確定申告時に添付不要だが保管しておくこと
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。