夏のボーナスシーズンです。使い道は人それぞれ。今年は県民割や2024年7月から予定されている「全国旅行支援」などを利用して旅行に出かけようという方も多いのではないでしょうか。今回は地方公務員のボーナスについて説明します。
公務員の約8割を占める地方公務員
地方公務員は全国に約290万人。公務員全体の8割を占めています(残りは国家公務員)。地方公務員というと一般的にイメージされるのは市役所や区役所の窓口にいる職員かもしれません。しかし、実は地方公務員にはさまざまな職種が存在します。
まず知っておきたいのは「特別職」と「一般職」の2つ。特別職とされるのは、都道府県知事や市区町村長、各自治体の議会の議員などです。その他の公務員はすべて一般職。違いは適用される法律。後者が地方公務員法が適用されるのに対し、前者は他の法律(公職選挙法、地方自治法など)が適用されます。
一般職は大別すると、「行政職」「技術職」「公安職」の3つになります。
行政職は、いわゆる事務職。市区町村の役所の窓口業務はこの行政職に属する公務員が行っています。他にも公立学校や警察関連施設などに、学校事務、警察事務として勤務している人たちもいます。
技術職は建築職、土木職、電気職、化学職、機械職、農業・農学職など、それぞれの分野の資格や技術を持っている人々を指します。公安職は警察官や消防官など。こちらも専門的な訓練を受けた公務員となります。
この他、公立学校の教師、公立幼稚園の幼稚園教諭、公立保育園の保育士、公立の医療機関の看護師、保健所の保健師、栄養士、臨床検査技師なども地方公務員です。共通点はいずれも資格が必要な点です。
また地方公務員は、試験の難易度に応じて初級、中級、上級と分けられてもいます。さらに同じ地方公務員でも中卒から大卒までさまざまな学歴の人がいて、それに応じて職種や給与が違います。
職種の多い地方公務員、ボーナスの平均額は?
細く分けたらきりがないほど職種の多い地方公務員。当然ながらボーナス(期末・勤勉手当)も職種や年齢、学歴、勤務している地方公共団体などによって変わります。夏と冬合わせての支給額はだいたい給与(月額給料+扶養手当+地域手当)の4ヶ月強。支給日は6月30日と12月10日(2024年は12月9日)。夏のボーナスは民間企業よりも1週間から10日早く支給されます。
総務省や人事院の資料から推計すると、2024年夏の一般行政職のボーナスの平均は約74万円となります(年間だと約150万円)。
年齢別に見ると、以下のようなイメージとなります。
- 20代(19歳~29歳) 32万~49万円
- 30代(30歳~39歳) 51万~68万円
- 40代(40歳~49歳) 70万~82万円
- 50代(51歳~60歳) 84万~90万円
この他の職種は以下のイメージです。
- 公立高校教員 約86万円
- 小中学校教員 約82万円
- 公立幼稚園教諭 約83万円
- 公立保育園保育士 約83万円
- 警察官 約87万円
- 消防官 約72万円
- 保健師 約69万円
※上記はあくまでおおよその平均値です。
計算が難しい公務員のボーナス
本記事を含めて、ネット上には地方公務員、国家公務員の給料やボーナスに関する記事が数多く見受けられます。それらの記事を見ると、同じ年のボーナスの金額でも違いがあったりします。というのも、公務員のボーナスは計算が面倒で、職種や対象者、どこを平均とするかの条件などによって算出される数字にかなり差が生じてしまうからです。
実際、支給を受け取る当人ですら、だいたいの金額は予想できても正確な支給額の計算は困難だと言われています。
公務員のボーナスは、正確には「期末手当」と「勤勉手当」の2種類に分かれます。便宜上、2つを合わせて「期末・勤勉手当」と呼びます。
このうち期末手当は給与や役職に応じて金額が決まっていて、勤勉手当はそこに本人の勤務態度や成績などを考慮して算出されます。この2つを合わせた支給額がそのときのボーナスの額となるわけです。
計算には、職務段階別加算や管理職加算、成績率や期間率などが加味され、支給額が決定します。また期末手当には扶養手当が計算に加えられますが、勤勉手当には加えられません。
また地方公務員の手当には扶養手当や地域手当の他に、住居手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当、寒冷地手当、災害派遣手当、任期付研究員業績手当などさまざまな手当がありますが、これらは原則期末手当や勤勉手当には加算されません。
複雑でわかりにくい地方公務員のボーナス。ひとつだけはっきりしているのは、そのシステムが基本的に年功序列でできている点です。学歴による収入の差がはっきりしているところも特徴といえます。
地方公務員の平均年収は600万円を超えます。実力主義で自分を評価してほしいという人には不向きかもしれませんが、夏冬のボーナスが必ずもらえて、福利厚生が充実していて、定年までの収入が計算できる公務員は魅力的な職業かもしれません。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneycat』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。