在宅時間が増えるとともに利用頻度が上がったアマゾン(Amazon)。小売業を超えて、もはやインフラといっていいアマゾンですが、社員になると給与はどのくらい支給されるのでしょうか?
アマゾンに日本型のボーナス(賞与)はない
はじめにお詫びしておきます。この記事、タイトルに偽りアリです。というのも、外資系であるアマゾンジャパン合同会社(Amazon)に、いわゆる日本企業型の春夏2回のボーナス(賞与)というものは存在しないからです。
日本人の生活にすっかり馴染んでしまったアマゾンだけど、中身はバリバリの外資。正社員の給与の額は実力次第。年棒制で年功序列はなし。かわりにL1からL12までの12段階のジョブレベルがあり、レベルによって給与の額が決まっています。
このうちL1~L3は、FS(フルフィルメントセンター)やDS(デリバリーステーション)といった配送センターや配送拠点、カスタマーセンターなどに多い非正規雇用のアルバイトや契約社員が属するレベルです。ここではL4以上のビジネス部門の正社員を中心に年収がどのくらいなのかを見てみたいと思います。
20代で年収1,000万円以上の人も
業績絶好調のアマゾン。その売上は正社員の給与にしっかり反映されています。
新卒でアマゾンに入社した場合はL4からスタート。中途採用の場合は、それまでの職歴にもよりますがL5からスタートというケースが多いようです。
年収はL4で400~600万円、L5で600~900万円、マネージャーとなるL6だと900~1,200万円、L7で1,200~2,200万円、L8で2.200~4,500万円となっています。通常、日本のアマゾンジャパンで働いた場合、最高がL8レベルとなります。
12段階と書きましたが、どうしてかL9はなく、L10以上はアメリカ本社の経営陣となります。最上位のL12は創業者であるジェフ・ペゾス専用のレベルとなっています。正社員でいちばん下のL4でも日本人の平均年収を軽く上回る。何年か頑張ってマネージャーになれば年収1,000万円以上は確実という、正直、羨ましいというかため息をつきたくなるような給与制度です。早ければ20代で、遅くても30代前半には年収1,000万円を突破。おそらくこれがアマゾンの正社員の一般的なコースでしょう。
RSU(譲渡制限付き株式)で実質的収入が増える
興味深いのはRSU(譲渡制限付き株式)の制度です。アマゾンでは給与の一部が自社株になっているのです。たとえばL4だとRSUが給与に占める割合は20%。年収500万円だったら100万円が自社株という割合です。
注意せねばならないのは100万円分の株が手に入ったからといってすぐに取得はできない点。RSUはすべて付与されるまでに4年間。1年目は10%、2年目は20%、3~4年目は35%となっています。つまり1年目は10万円分しか取得できないということです(年収500万円の場合、感覚的には90万円が自動的にプールされるような感じです)。
ただし、アマゾンは前述したように業績好調。株価は上がりつづけています。このため100万円分の株も少し寝かしておくだけで価値が上がる可能性が非常に高いといえます。
毎年付与されるRSUに手をつけなければつけないほど、保有資産が増えていく。そういう仕組みとなっています。
同じ年収1,000万円でもアマゾンと他企業では資産の増えるスピードにかなり差がある。どちらがより速いかといえば、もちろんアマゾンでしょう(個人で上手な投資をしている人は別かもしれませんが)。
RSUはレベルがアップすればするほど割合が高くなり、L6からは50%以上となっています。このため長期間勤務している社員のなかには億単位の資産を保有している人が少なからずいることが想像されます。
アマゾンにも「ボーナス」と呼ばれるものがある!?
日本型のボーナスは存在しないアマゾンですが、入社から2年間はサイニング・ボーナス(signing bonus)と呼ばれる特別ボーナスが毎月支給されます。支給額は毎月最高で10万円程度。新卒、中途採用にかかわらず、2年目までの新人社員は合計で100~240万円程度のこのサイニング・ボーナスの恩恵に授かれます。
外資系だけにあまり評価が低いと退職勧告の対象ともなってしまうアマゾンですが(対象となる人はきわめて少ないようです)、社員のやる気をアップさせる給与制度はたいへん魅力的です。
アルバイトの時給なども他社に比べて高めだというアマゾン。日本企業にも見習ってほしいですね。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。