2024年の今も拡大し続けている新型コロナウイルス感染症。中小企業の経営に大きな影響を及ぼしています。「このままでは経営を続けるのが難しくなるかも」という経営者も多いのではないでしょうか。
そこで、今使えるコロナ関連の補助金・助成金をご紹介します。
コロナ関連の補助金・助成金を確認
コロナ関連の補助金・助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。支援策の一覧に加え、自社に合った制度の探し方について解説します。
新型コロナウイルス感染症関連の支援策一覧
経済産業省のホームページでは、新型コロナウイルス感染症で影響を受けた事業者のために以下のような支援策が紹介されています。
- 資金繰り支援
- 給付金
- 事業再構築補助金
- 設備投資・販路開拓支援
- 経営環境の整備
- 税・社会保険・公共料金
- 中小企業・小規模企業の相談窓口
- 在宅勤務の推進
- 企業によるテレワーク支援
ジャンルごとに、さまざまな支援策を一覧の中から探すことができるため便利です。
また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化していることもあり、新たな制度が創設されています。既往制度も随時変更や更新がなされており、実際に支援制度を利用するときは、それぞれの制度の最新情報を確認しなければなりません。
新型コロナウイルス感染症関連の支援策を探している場合は、こちらのサイトで情報収集をしましょう。→ 経済産業省の支援策
自社に合った制度を探すには?
補助金や助成金をもらうには、それぞれの制度の条件を満たす必要があります。補助金や助成金の要件は、「業種や職種を限定するもの」「雇用に関するもの」「売上減少を条件とするもの」など、さまざまです。数多くの制度の中から自社で利用できる条件に合ったものを探し出すのは、たいへんな時間と労力を要するかもしれません。
そのようなときに活用していただきたいのが、経済産業省のホームページ内にある「中小企業向け補助金・総合支援サイトポータル 『ミラサポplus』中小企業向け補助金・総合支援サイト」です。
こちらのサイトを利用して、以下の4種類から自社にあった制度を検索してみてください。
- 制度集から探す
- 人気の制度から探す
- お困りごとから制度を探す
- キーワードで探す
中でも「IT導入補助金」「ものづくり補助金」「持続化補助金」は、注目キーワードとして表示されており、経営者からの注目度が高いことがわかります。
新型コロナウイルス感染拡大 あなたに合った支援|経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus (mirasapo-plus.go.jp)
活用できる新型コロナ感染症関連の支援制度を紹介
新型コロナウイルスの影響により業務量が減少し、休業を余儀なくされている企業もまた多くいます。しかし、事業再開には従業員の協力が必須となるため、雇用の維持を図ることが何よりも重要です。また、新たなビジネスチャンスをつかむためには、事業の再編や事業形態の転換も検討しなければなりません。
ここでは、雇用の維持に役立つ施策や緊急事態宣言、まん延防止等重点措置による影響を受けた企業を支援する制度を中心に紹介します。
雇用調整助成金(特例措置)
※雇用調整助成金は、2024年2月現在、緊急対応期間(〜2024年11月30日)が終了しています。現在は緊急対応期間にコロナ特例を利用した事業者を対象に経過措置期間(〜2024年3月31日まで)を実施しています。
新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業や教育訓練などを行い、労働者の雇用維持を図った場合に助成される制度です。
雇用調整助成金(特例措置)は、「労使間の協定」に基づき、事業主が労働者に支払った休業手当に対して助成されます。
支給対象となる事業主 | 以下のすべてを満たす事業主(すべての業種) 1.新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小 2.最近1ヵ月間の売上高または生産量などが、前年同月比5%以上減少している(比較対象とする月に、柔軟な取り扱いとする特例措置あり) 3.労使間の休業協定に基づく休業などを実施し、休業手当を支払っている ※その他要件あり。詳しくは下記リンクをご確認ください。 雇用調整助成金ガイドブック |
申請対象期間 | 令和2年4月1日から令和4年11月30日までの緊急対応期間までの経過措置期間を1日でも含む賃金締切期間(判定基礎期間) |
支給対象となる労働者 | ・事業主に雇用された雇用保険被保険者(雇用調整助成金) ・学生アルバイト・パートなど、雇用保険被保険者以外(緊急雇用安定助成金)も対象 |
内容・助成率など | 1.休業手当等に対する助成率を引き上げ 中小企業5分の4、大企業3分の2(5分の4) 解雇等を行わない場合の助成率上乗せ 中小企業10分の10 大企業4分の3(10分の10) 2.教育訓練を実施した場合の加算額の引き上げ 中小企業2,400円、大企業1,800円 |
以下に該当する大企業はカッコ内の助成率となるように上乗せされます。
- 緊急事態宣言に伴う特定都道府県知事、まん延防止等重点措置に伴う重点措置区域の知事の要請等を受けて営業時間の短縮等に協力
- 売上高等の生産指標が最近3ヵ月平均で前年または前々年同期に比べ30%以上減少
雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
新型コロナウイルス感染症による 小学校休業等対応助成金
新型コロナウイルス感染症の影響により臨時休業などをした小学校等に通う子ども、新型コロナウイルスに感染した子どもなど小学校を休む必要がある子どもの世話をする労働者に対し、「有給の休暇(賃金全額支給)」を取得させた事業主を支援する助成金です。
申請対象期間 | 特別有給休暇を取得した日および申請期間 取得日:令和4年12月1日~令和5年3月31日 (申請:令和5年5月31日必着) |
日額上限額 | 8,355円 |
対象となる保護者 | ・親権者・未成年後見人・その他の者(里親・祖父母など)で子どもを現に監護する者 ・各事業主が有給休暇の対象とする場合は子どもの世話を一時的に補助する親族も含む |
保護者として子どもの世話をする場合は、子どもの人数に関わらず複数の保護者が同時に休む場合も、対象となります。
新型コロナウイルス感染症による 小学校休業等対応助成金について
事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)
新型コロナウイルス感染症の影響により、経済社会の変化に対応するために、以下のようなものに挑戦し、事業規模の拡大や事業の再構築を図る中小企業を支援する制度です。
- 新分野展開
- 事業転換
- 業種転換
- 業態転換
- 事業再編など
支給対象となる企業 | 次のすべての要件を満たす中小企業(個人事業主も含む)や中堅企業 1.2020年4月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月の売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同じ3ヵ月の売上高の合計と比較して10%以上減少 2.新分野展開、業態転換、事業・業種転換などに取り組み、事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定 3.補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加などの達成を見込む事業計画を策定 |
公募期間 | 令和5年1月16日(月) ~ 令和5年3月24日(金)18:00まで |
補助額 | [通常枠] 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円~2,000万円 【従業員数21~50人】100万円~4,000万円 【従業員数51人~100人】100万円~6,000万円 【従業員数101人以上】100万円~8,000万円 [大規模賃金引上枠] 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円 [回復・再生応援枠] 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 [最低賃金枠] 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 [グリーン成長枠] 中小企業者等:100万円~1億円 中堅企業等 :100万円~1.5億円 [緊急対策枠] 中小企業等、中堅企業等ともに 【従業員5人以下】100万円~1,000万円 【従業員6~20人】100万円~2,000万円 【従業員21~50人】100万円~3,000万円 【従業員51人以上】100万円~4,000万円 |
補助率 | [通常枠] 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) [大規模賃金引上枠] 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) [回復・再生応援枠] 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 [最低賃金枠] 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 [グリーン成長枠] 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 [緊急対策枠] 中小企業等 3/4(※1) 中堅企業等 2/3(※2) (※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3) (※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2) |
不正受給は返還のペナルティに加え、事業継続が困難に
持続化給付金などの不正受給報道を耳にしたことがある方も多いことでしょう。
中小企業庁は、持続化給付金を不正に受給した者として1447者を認定し、悪質な認定者・所在地を公開しています。2024年8月25日時点、不正受給の総額は14億6198万8130円にものぼります。
悪質な場合は、刑事告発され逮捕される可能性もあるため、安易な行動は慎むべきです。
先に紹介した雇用調整助成金も、不正受給への対応が強化されています。不正が疑われる場合だけでなく、申請をした事業主、支給決定を受けた事業主の一部に事業所訪問・立ち入り検査が実施されます。
支給を受けた事業主に不正受給があった場合は、返還請求が行われます。事業主の名称、代表者氏名、事業所の名称、所在地、事業概要、支給決定取消日、不正受給金額、不正の内容が公表されます。また、雇用調整助成金はもちろん、他の雇用関係助成金も5年間の不支給措置となります。
特に悪質な場合には、刑事告訴などが行われることもあり、事業の継続が危ぶまれる事態にもなりかねません。
まとめ:補助金や助成金を活用してコロナ不況を乗り切りましょう
今回紹介した制度以外にも、新型コロナウイルス感染症で影響を受けた事業者のための支援策はたくさんあります。新型コロナウイルス感染症の影響は、予想以上に長期化しているため、多くの企業が苦しい経営状況です。
しかし、これを機に新しいビジネスモデルを構築し、困難を乗り越えている企業も多くあります。
雇用の維持や事業継続のためには、資金調達が企業の重要な営業戦略の一つです。しかし、補助金や助成金を利用したいと思っていても情報収集を怠れば、せっかくのチャンスを逃してしまいかねません。
数ある新型コロナウイルス関連支援策の中から、活用できるものを選択し、コロナ不況を乗り切りましょう。
※2024年8月アップ時点でのデータになります。実際にご利用の際は関係省庁などで詳細をご確認ください。
文・加治直樹(1級FP技能士、社会保険労務士)