起業するときに最初にぶつかる壁の一つが「資金調達」です。オーソドックスな方法としては、日本政策金融公庫や銀行などで創業融資を受ける方法があります。しかし、支援者の賛同が得られる魅力的なアイデアがあれば、近年注目を集めている「クラウドファンディング」も選択肢の一つです。新規事業を立ち上げるときに有効な資金調達について見ていきましょう。
起業時に必要な資金はどれくらい?
まず起業時に必要な資金についてみていきましょう。
開業費用はどのくらいかかる?
日本政策金融公庫が発表した「2024年度新規開業実態調査」によると、起業にかける費用について次のような結果が出ています。
※事業に充てる時間が1週間に35時間以上の人への調査結果
費用はかからなかった:20.6%
50万円未満:26.8%
50万円~100万円未満:11.1%
100万円~500万円未満:21.7%
500万円~1,000万円未満:10.6%
1,000万円以上:9.2%
業種や事業形態によって必要な資金は異なるため、一概にはいえませんが、比較的少ない元手で開業する人も多いようです。
また、起業した時の金融機関からの借入の有無については80.0%の人が「借入なし」と回答していました。
会社設立費用はそれほどかからない?
近年は、少ない費用で会社が設立できることもあって、株式会社ではなく合同会社を設立する例が多い傾向です。
【最低限必要となる会社設立費用】
株式会社 | 合同会社 | |
定款認証手数料 | 5万円 | なし |
定款印紙代 | 4万円 (電子定款なら無料) | 4万円 (電子定款なら無料) |
定款謄本代 | 2,000円程度 謄本用紙代 250円 ×(定款の用紙枚数+奥書1枚) | – |
登録免許税 | 最低15万円 (または資本金の0.7%のいずれか大きいほう) | 最低6万円 (または資本金の0.7%のいずれか大きいほう) |
登記事項証明書代 (書面請求の場合) | 1通600円 | 1通600円 |
印鑑証明書代 (書面請求の場合) | 1通450円 | 1通450円 |
合計 | 約24万3,050円 | 約10万1,050円 |
新しい資金調達方法として注目されるクラウドファンディング
起業・開業時には、資金調達が必須です。業種や事業形態によっては、多額な資金を必要とする可能性もあります。事業に必要となる費用を十分に調査し、業種特性に合わせた資金計画を作成することが必要です。一般的に、起業・開業時の資金調達の方法としては、金融機関からの融資を受ける方法があります。
しかし、支援者の賛同が得られる魅力的なアイデアや説得力のある事業計画があれば、返済不要のクラウドファンディングによる資金調達も可能です。インターネットを利用してマーケティングも兼ねることができる新たな資金調達方法クラウドファンディングに、ぜひチャレンジしてみてください。
最後にクラウドファンディングのメリット・デメリットについてご紹介しておきます。利用時の参考にしてください。
メリット | デメリット |
・資金調達の選択肢が多い ・種類によって返済不要の資金を集めることができる ・金融機関からの融資を断られてもチャレンジできる ・現金以外のリターンも設定できる ・SNSなどを利用してプロジェクトを公開するため、宣伝効果がある ・マーケティングを兼ねた市場の反応を見ることができる | ・資金が集まらず、起業できないケースもある ・商品やサービスなどのリターンを必要とするため、純資金が思ったより少ない場合がある ・支援者が多数となるため、リターンの発送や準備など管理に手間がかかる ・目標を達成しても、途中でやめることができない ・クラウドファンディング会社への手数料が負担となる場合がある ・事業計画を公開するので、アイデアを盗用される可能性がある |
文・加治直樹(1級FP技能士、社会保険労務士)