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確定申告の間違いを修正する方法【訂正・是正の請求・修正申告の違い】

確定申告後に「修正したい」「入力忘れに気づいた」と思ったら、何をやるべきでしょうか。実は手続きは「気づいた時期」「税金の納めすぎか不足か」によって、やるべき内容が異なります。確定申告後に修正したい方向けに、手順をわかりやすく解説します。

提出済みの確定申告を修正したい!いつ気づいたかが大事

2024年の確定申告も無事終えて、ほっと一息。…と思っていたら、思わぬミスを発見という方、実は結構いらっしゃるものです。

  • 医療費の申告を忘れていた
  • ふるさと納税の申告を忘れていた
  • 必要経費の中で計上し忘れたものがある
  • 寡婦控除、寡夫控除が適用されるのにチェックし忘れた
  • バリアフリー改修工事、耐震改修工事をしたが控除できることを後から知った

ここでポイントとなるのは、気づいた時期です。「確定申告の期間内に気づいた」「申告期間が過ぎてから気づいた」のどちらかによってやるべきことが変わります。

確定申告期限内の間違いは再提出でOK!

2024年3月15日までの確定申告期限内に間違いに気づいた場合は、「訂正申告」を行います。

郵送で提出した人は、全ての帳票を再提出しましょう。実際に私は記入漏れに気づき、郵送提出後税務署に電話で確認したことがあります。「一度提出した書類は返却できない。もう一度、全ての帳票を郵送で送ってください」との回答でした。

同一人物から複数の申告書が届いた場合は、最後の申告書が正式なものとして取り扱われます。また、表題の余白に「訂正申告」と赤字で記載しておきましょう。

e-Taxソフトで申告した後に間違いに気づいた場合は、次の手順で進みます。

  1. e-Taxにログインし「申告・申請等一覧」に進む
  2. 「送信完了」となっている中から、再送信するデータを選択
  3. 帳票を開き、内容を訂正。「作成完了」をクリック
  4. 「別名保存確認」画面が表示
  5. 「申告・申請等名」欄に入力(30文字以内)し「別名で保存」をクリック
  6. 「署名可能一覧」画面から再送信するデータを選択
  7. 電子署名を付与後、「送信可能一覧」画面から送信

参考:e-Tax よくある質問

訂正申告のポイント

  • 訂正した帳票だけでなく、全ての帳票を再送信する
  • 訂正後、税務署への連絡は不要
  • 必ず提出期限内に行うこと(申告期限後に行うと手続きの内容が変わる)

確定申告期限後の間違いは「更正の請求」または「修正申告」

通常の確定申告の期限である3月15日を過ぎてから、提出済みの確定申告書に記入のし忘れや数字の間違いなどを発見した場合にやるべきことは、「更生の請求」と「修正申告」のどちらかです。

更生の請求→納税額の申告が多かった場合(還付が少なかった場合)
修正申告→納税額の申告が少なかった場合(還付が多かった場合)

それぞれの場合のやるべきことについて解説します。

【確定申告期限後の修正】更正の請求とは

更正の請求は、納税額の申告が多かった場合、還付金を少なく申告していた場合です。更正の請求には、手数料は不要です。請求が可能な期限は、法定申告期限より5年以内です。内容を税務署が妥当と認めた場合のみ還付が行われます。

更正の請求の方法

  1. 「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」を作成
  2. 必要書類を添付し、納税地所轄の税務署長あてに持参または郵送で提出

(例)必要経費を計上し忘れていた場は、経費領収書が必要

是正の請求書の作成方法

是正の請求書は、国税庁のwebサイト「確定申告書等作成コーナー」内にある「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」から作成が可能です。

作成方法は次の3種類から選ぶことができます。

  • マイナンバーカード方式(2次元バーコードまたはICカードリーダライタ)
  • ID、パスワード方式
  • 印刷して提出

どの方法であっても、画面に従い金額などを入力することで、自動的に税額など必要な内容を計算してくれるため、便利です。

更正の請求期限は5年以内

是正の請求期限は、法定申告期限より5年以内です。

令和3年分の確定申告の法定期限→令和4年の3月15日
是正の請求期限→令和9年3月15日

確定申告の期限以外でも、是正の請求は可能です。間違いに気づいた場合は、すぐに請求することをおすすめします。

全ての請求が認められるわけではないことに注意

是正の請求をしたからといって、必ず税金が返ってくるわけではありません。請求内容が認められなかった場合は、理由が通知されます。

理由に不服な場合は、税務署に再調査を請求するか、国税不服審判所への審査請求を行うことができます。

是正の請求にはどんなケースがある? 

是正の請求が行われる、よくあるケースと必要書類について例を挙げておきます。

医療費の計上漏れ

医療費を計上し忘れていたため、医療費控除を受けられなかったことに後から気づいた場合です。是正理由の証明には、病院や薬局の領収書の添付が必要です。

ふるさと納税の計上漏れ

複数の自治体にふるさと納税をしたため、漏れや抜けが生じるケースもあります。是正理由の証明には、寄付金受領証明証を添付します。

扶養控除のチェックミス

一般の扶養家族控除は38万円ですが、特定扶養親族(その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満)の場合は、控除額が63万円です。

『63万円―38万円=25万円』となるため、差額の25万円を修正します。この場合は、基本的に証明書類は必要はありません。ただし、配偶者控除のチェックミスの場合は、配偶者の所得証明が必要です。

【確定申告期限後の修正】修正申告とは

修正申告は、納税額の申告が少なかった場合、還付金を多く申告していた場合に行うべき深刻です。

修正申告に必要なもの

  • 確定申告書B第一表
  • 所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)

※所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)は、郵送したい場合、webサイトからダウンロードできます。

修正申告の手続き方法

修正申告書も、是正の請求書と同じく国税庁のwebサイト「確定申告書等作成コーナー」内にある「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」から作成が可能です。自分がどちらを作成するのか、間違えないようにしてください。

作成方法は次の3種類から選ぶことができます。

  • マイナンバーカード方式(2次元バーコードまたはICカードリーダライタ)
  • ID、パスワード方式
  • 印刷して提出

さらに修正申告書を提出する日までに、増えた分の所得税や復興特別所得税を納付しなければなりません。延滞税も同じです。

修正申告は気づいた時点ですぐに行おう

修正申告を行う時点で、すでに確定申告の提出期限を過ぎています。数字の入力ミスや抜け、漏れなどに気づいた時点で、できるだけすぐに修正申告を行いましょう。

修正申告自体は、税務署から是正を受けるまでは行うことができますが、いつ受けるかはわかりません。状況によっては、追加納税額が課される可能性もあります。

修正申告には延滞税が加算される

修正申告を行った場合、追加納税の金額に関して、延滞税が加算されます。

延滞税は、法定期限(修正申告の場合は、申告書を提出した日)の翌日から2月経過まで:原則として年「7.3%」、2月を経過した日以後:原則として年「14.6%」です。ただし、年により異なる点に注意が必要です。

確定申告後の修正についてよくある質問

最後に確定申告後の修正について、よくある質問と回答を紹介します。

更正の請求は必ずやるべき?ほおっておくとどうなる?

「更正の請求」は、税金を多く納め過ぎた場合に行う手続きのため、行わなかったとしてもペナルティはありません。

是正の請求が認められないケースって?

是正の請求が認められるケースは、国税通則法第二款更正の請求の第23条(更正の請求)に定められている通り、「法律の規定に従っていなかった場合」「計算ミスがあった場合」のいずれかです。

この条件を満たしていない場合や、法定申告期限から5年が過ぎている場合は、是正の請求が認められることはありません。

確定申告の間違いは、なかなか気づかない。気づく方法はある?

e-Taxでの入力の際には、帳票間チェックが行われます。また「freee」「弥生会計」などの確定申告ソフトでは、取引の二重登録ミスを防ぐため「重複チェック」を行うことができたり、自動で計算してくれたりします。このようなソフトを活用することも、ミスを防ぐひとつの方法といえるでしょう。

また確定申告の締め切り直前に慌てて作業をすると、どうしてもミスが発生しやすくなります。確定申告の間違いや修正を防ぐためにも、期限に余裕を持って準備を行いましょう。

「修正申告」をしたら住民税変更の届出も必要?

個人の場合、税務署に修正申告書を提出することで、自動的に住民税も修正されます。特に何かを行う必要はありません。ただし、法人の場合は、個別に修正申告書の提出が必要となるため、ご注意ください。

修正申告には時効がある?時効を過ぎたら払わなくていい?

修正申告の提出には、5年の期限があります。もし少なく申告していたことに気づいたとしても、法定申告期限(確定申告期限の最終日)から5年が過ぎて税務署から連絡がなければ、修正申告の必要はありません。

ただし「意図的に納税額を少なく申告した」など、悪質だと認められる場合には、期限が7年に延長されます。

税務署に指摘されるよりも前に、自ら申告した方が、過少申告加算税の額が少なくてすみます。気づいた段階で、できるだけ早く修正申告をすることをおすすめします。

確定申告の修正の必要がないようにあらかじめチェックを!

確定申告後に修正が必要だと気づいたときには「訂正申告」「是正の請求」「修正申告」のいずれかを行う必要があります。同じミスであっても、確定申告期限内に対応できる「訂正申告」としての対応は、やるべきことも少ないため、作業の負担も最小限で済みます。

確定申告の修正をしなくてすむように、期日に余裕を持って確定申告を行うことをおすすめします。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。