「ふるさと納税をしたけど、これって本当に得なの?」そうした疑問をもっている方もいるでしょう。そもそもふるさと納税をした後の手続きをどうするかわからないという場合もあるでしょう。
個人事業主などは確定申告で対応できるのですが、会社員は年末調整で対応できるのでしょうか?それとも会社員でも確定申告が必要なのでしょうか?
「確定申告」や「ワンストップ特例制度」など、手続きの詳細についてお伝えします。
そもそも、ふるさと納税とは
ふるさと納税とは「納税」という言葉がついていますが、実際は「寄附」にあたります。ふるさと納税を行うことにより、都道府県や市区町村への「寄附」を行うことになります。
ふるさと納税の制度を利用せずに自治体に寄附をした場合は確定申告をすることで、寄附金額の一部が控除されます。しかしふるさと納税の場合は、自己負担額である2,000円を除き寄附した全額が控除対象になります。ただ、この金額は個人の所得や家族構成などにより違ってきます。
ふるさと納税、その後の手続きは?
「さとふる」や「ふるなび」など、ふるさと納税専門のサイトはいくつかあります。オンラインショッピングのように、欲しいと思った返礼品をカートに入れることで簡単に寄附は完了します。
しかし、それだけではお得にはなりません。ここで終わってしまうと、実は高めの買い物をしたと同じ事になってしまうのです。
ふるさと納税をして得をするためには手続きが必要です。「ワンストップ特例」と「確定申告」、この二つの方法で、自分がふるさと納税をやったということを公的に証明する必要があるのです。
年末調整ができない?会社員用ふるさと納税マニュアル
毎年、会社が年末調整を行なってくれている会社員であっても、ふるさと納税の控除は、会社に依頼することはできません。
ふるさと納税のような寄附金や医療費は、12月31日が終わった段階で、1年間の総額を確定するものだからです。
会社員がふるさと納税の控除を受けるには、確定申告かワンストップ特例制度の手続きが必要です。
ワンストップ特例制度や確定申告の条件
ワンストップ特例制度を利用するためには、下記の表の条件を全て満たす必要があります。1つでも当てはまらない場合は、確定申告が必要です。
条件 | ●もともと確定申告をする必要のない給与所得者等である 下記条件のいずれにも当てはまらない ・給与が2,000万円を超える ・給与以外に20万円を超える副収入がある ・2つ以上の会社から給与を受けている ・一定額以上の公的年金を受け取っている
●申し込みのたびに自治体にワンストップ特例の申請書を提出している(※) |
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給与以外の20万円を超える収入(副業など) | なし |
株取引 | (※2) |
医療費控除の申告 | なし |
住宅ローンを組んだ(1年目) | 組んでいない |
1年間の寄付自治体 | 5自治体以内 |
※寄付をした自治体のうち、1ヵ所でもワンストップ特例の申請書を提出できなかった方は、確定申告を行う必要があります。
株取引・FX等を行っている場合は、注意が必要
近年、資産運用の一種として株取引やFXを行う会社員の方が増加傾向にあります。株・FXで利益を上げると税金が発生するため、ふるさと納税後の手続きにも影響することをご存じでしょうか。パターン別に見ていきましょう。
源泉徴収ありの特定口座を利用している場合
源泉徴収あり特定口座を利用し、株取引を行っている会社員の方は、確定申告を行わず、ワンストップ特例制度を利用することができます。
一般的に株取引の利益がある場合は、確定申告が必要です。しかし証券会社との契約の際、「源泉徴収あり特定口座(自動的に税金が徴収される)」を選んでいる場合は、確定申告の義務は発生しません。仮に株で得た所得(給与所得以外)が20万円を超えているとしても、すでに所得に応じた税金が源泉徴収されているため、あらためての確定申告は不要です。
ただし、FX取引には、源泉徴収制度はありませんので注意が必要です。
源泉徴収なし特定口座・一般口座を利用している場合
「源泉徴収なし特定口座」または「一般口座」を利用した株取引を行っている場合やF X取引がある場合、利益が20万を超えるかどうかで、やるべき対応が変わります。
・利益が20万円以下の場合
会社員のような給与所得者の場合、給与以外の所得が20万円以下であれば、基本的に所得税の確定申告は不要です。ただし、ここで注意したいのは、住民税の申告が必要な点です。
住民税の申告を行うと、自動的にワンストップ特例制度は利用できなくなります。つまり、ふるさと納税の控除を受けたい場合は、確定申告が必須となります。
・利益が20万円超の場合
株・FXで20万円超の利益がある会社員の場合は確定申告が必要です。
確定申告のメリット・デメリット
確定申告をするのは面倒と思う方も多いと思います。しかしメリットも多くあります。メリット・デメリットを見ていきましょう。
【メリット】
・6自治体以上にふるさと納税ができる
確定申告をする場合、ワンストップ特例制度のように、寄付自治体の数に制限はありません。寄付したい自治体が多い場合も、気兼ねなく寄付ができます。
・「医療費控除」「雑損控除」などができる
病気やケガにより1年間で10万円を超える医療費、または所得の5%以上の医療費を支払った場合、確定申告を行うことで医療費控除を受けられる可能性があります。また災害や盗難などで被害を受けた場合には「雑損控除」ができます。そのほか条件を満たすことで住宅ローンの1年目や株で損をした場合にも、控除が可能です。
【デメリット】
・ワンストップ特例制度に比べ、手間がかかる
会社員が確定進行を行うデメリットとして大きいのは、何より手間と時間がかかることです。しかし、確定申告自体はe-taxを利用すれば家から行うことも可能です。今はスマホでもできるので、デメリットよりもメリットの方が大きいと考えて良いでしょう。
会社員がふるさと納税後に確定申告をする流れ
会社員がふるさと納税を行った後、確定申告をする流れについて解説します。
確定申告の必要書類
確定申告を行うにあたり、必要な書類を用意します。
必要書類
寄附金受領証明書(寄付をした自治体から送付)
対象期間の源泉徴収票
還付金受取用口座番号(還付金振込用) 本人名義の口座情報
マイナンバーカード(個人番号カード顔写真付き) 表面および裏面のコピー
マイナンバーカードを持っていない人は、下記の書類のコピーまたは原本が必要です。
番号確認書類 | ・通知カード※1 ・住民票の写しまたは、住民票記載事項証明書(マイナンバーの記載がある場合のみ) |
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身元確認書類 | ・運転免許証 ・公的医療保険の被保険者証(健康保険証) ・パスポート ・身体障害者手帳 ・在留カード などのうちいずれか1つ |
※1 個人番号通知カードは、記載された氏名、住所等が住民票に記載されている事項と一致する場合は、マイナンバー(個人番号)を証明する書類として使用可能。一致しない場合、個人番号通知カードをマイナンバー(個人番号)の証明としての利用はできません。
【会社員向け】確定申告の手順
確定申告の必要書類を用意し、確定申告書を作成します。申告書類は、国税庁のホームページや税務署で作成可能です。
確定申告書の提出
翌年の3月15日までに、申告書類・勤務先の源泉徴収票・寄付金受領証明書(寄付後に自治体から送付される)を翌年の3月15日までに提出してください。e-Taxでの提出、税務署への郵送、直接持参のいずれかを選びます。
控除の開始時期
所得税 | 確定申告後の1〜2ヵ月後 |
---|---|
住民税 | 確定申告後6月から翌年5月まで毎月 |
毎年5〜6月に、会社から渡される「住民税課税決定通知書」を見てください。摘要欄を見ると、控除された金額を確認することができます。
会社員のふるさと納税:「確定申告」よくある質問
Q. 昨年、全部で5ヵ所の自治体に寄付をしました。ワンストップ特例を利用したのは、その中の2ヵ所です。確定申告は残り3ヵ所のみで構いませんか?
A.確定申告を行うと、それまでに行ったワンストップ特例制度の申請は、全て無効と判断されます。ワンストップ特例利用済みの2自治体分も含め、5ヵ所の自治体分すべて確定申告を行なってください。
Q.「寄附金受領証明書」をなくしてしまいました。
A. 寄附金受領証明書は、重要な書類です。ワンストップ特例制度の利用を予定していたとしても、途中から確定申告に切り替えた際には必ず必要となるため、処分しないよう気をつけてください。自治体によっては、寄附金受領証明書の再発行を受け付けているところもあります。まずは早急に寄付をした自治体に、問い合わせてください。
ふるさと納税後「ワンストップ特例」を使う会社員向け
次に、ワンストップ特例を利用したい場合の流れについて紹介します。ワンストップ特例には条件があるため、ふるさと納税を申し込む際には計画を立てておく必要があります。
ワンストップ特例利用の流れ
1.希望する自治体にふるさと納税をする
ワンストップ特例制度を利用したい場合は、1年間(1月1日〜12月31日)の寄付自治体を5ヵ所以内にする必要があります。あらかじめ計画的にふるさと納税を行いましょう。
ただし、同じ自治体に複数回寄付した場合は、1自治体とカウントします。
寄付状況 | A市に3回→1カウント B市に2回→1カウント C市に1回→1カウント | A市に1回 B市に1回 C市に1回 D市に1回 E市に1回 F市に1回 |
---|---|---|
寄付回数 | 6 | 6 |
合計寄付自治体数 | 3 | 6 |
ワンストップ特例制度利用 | OK | NG |
2.「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を準備し記入する
ワンストップ特例制度を利用する場合、確定申告の代わりに寄付した自治体ごとに「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を郵送する必要があります。
申請書は、寄附先の自治体から送付されることもありますが、総務省のサイトやふるさと納税ポータルサイトなどから自分でダウンロードすることも可能です。
3.必要書類の準備
カードの種類 | 準備するもの |
---|---|
マイナンバーカード | 表裏のコピー |
通知カード(マイナンバーを通知するカード) | 通知カード+本人確認書類のコピー |
マイナンバーカード、通知カードどちらもない場合 | 個人番号が記載された住民票の写し+本人確認書類のコピー |
※1 個人番号通知カードについては、記載された氏名、住所等が住民票に記載されている事項と一致する場合は、マイナンバー(個人番号)を証明する書類として使用可能。一致しない場合は、個人番号通知カードはマイナンバー(個人番号)の証明としての利用NG。
【本人確認書類】
- 運転免許証
- 運転経歴証明書
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 公的医療保険の被保険者証(健康保険証)
- 年金手帳
- 各自治体が認める上記以外の確認書類
4.提出期限までに各自治体へ郵送
申請書と必要書類の準備を終えたら、寄付をした各自治体に郵送します。
【注意】1つの自治体に複数回寄附した場合も、自治体数は1として数えます。ただし、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」は、寄附するごとに郵送する必要があります。A市に3回寄付をした場合、申請書も3回郵送してください。
ワンストップ特例のメリット
・確定申告が不要、気軽にふるさと納税ができる
会社員などの給与所得者の場合、わざわざ確定申告に行くのは面倒だと感じる人もいるでしょう。寄附先が5自治体以内、医療費控除などを行わないなどの条件を満たしていれば、確定申告不要で寄附金控除が可能です。
・手続きがカンタン
ワンストップ特例は、必要事項を申請書類に書き、期日を守って寄付先の自治体に送るだけです。
・住民税から自動的に控除される
翌年の6月以降に支払う住民税から自動的に控除されます。所得税分・住民税から控除されるため、基本的には控除額は確定申告と同額となります。
会社員のふるさと納税「ワンストップ特例」よくある質問
Q.ワンストップ特例制度を使うと所得税から控除されないってホント?
A.ホントです。ただし、控除額のすべてが翌年度の住民税から控除されます。多くの場合は、控除額は同額となりますが、個別に違いがあるため、確認が必要です。
Q.医療費控除や住宅ローン控除初年分を申請したいけど、ワンストップ特例制度も使える?
A.医療費控除や住宅ローン控除初年分などを届け出る場合は、確定申告が必要です。確定申告を行い、ふるさと納税は寄付金税額控除として申請してください。
Q.ワンストップ特例制度を申し込んだ後に、確定申告が必要になったのですが?
A. ワンストップ特例での申請書等を寄付自治体に送付した後に、確定申告の必要が発生した場合は、寄付先の自治体が発行した「寄附金受領証明書」が必要です。また、ワンストップ特例申請から確定申告へと切り替えた場合も、自治体に連絡する必要はありませんのでご安心ください。ワンストップ特例制度、確定申告の両方が行われた場合は自動的に確定申告が優先されるためです。
Q. ふるさと納税をしたあと、転勤し住所が変更になりました。どうすればいいですか?
A.控除を受ける場合、寄付した翌年1月1日時点での住民票の所在地の登録が必要です。すでにワンストップ特例制度を利用している場合は、翌年の1月10日までに申告特例申請事項の変更届を、寄付を行った自治体全てに郵送してください。結婚等で氏名が変更になっている場合も同様です。一般的には下記の2点が求められることが多いです。
- 寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書(ワンストップ特例申請事項変更届出書)
- 変更となった箇所が確認できる書類の写し(住民票や運転免許証など公的機関が発行しているもの)
ふるさと納税をした会社員は「確定申告」または「ワンストップ特例制度」を活用しよう
会社員がふるさと納税を行う際の流れについて「確定申告」「ワンストップ特例制度」それぞれの条件と実際の申告方法について紹介しました。ワンストップ特例制度を活用することで確定申告を行わずに済みますが、寄付自治体が5ヵ所以下、副業収入が20万円を超えていないなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
また当初ワンストップ特例制度を使うつもりでも、医療費控除などを使いたくなった場合は、確定申告に切り替える必要も出てきます。せっかくのふるさと納税、お得に活用するためにも、自分がどちらに当てはまるのかを知った上で、両方の手順について理解しておきましょう。
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。