「これから投資を始めようと考えているが、何に投資したらよいか分からない」
そのような悩みを抱える方のために、ファイナンシャル・プランナー(以下FP)の資格をもつ筆者が実際に投資を始めた経験や、初心者におすすめの投資方法を紹介します。
投資初心者で始めた投資の種類は?
投資をこれから始める場合、一番悩むのが「何に投資すればよいか」ではないでしょうか。
どの金融商品にもリスクはあり、安全といえる商品はありません。しかし投資するからには、利益を増やしたい気持ちもあり、ある程度リスクの大きい商品に投資すべきか悩みます。
まずは、筆者が最初に投資した金融商品と、その金融商品を選んだ理由について紹介します。
配当金の高い日本個別株
筆者が最初に投資したのは、日本個別株のなかでも配当金の高い銘柄です。
「投資初心者は、日本個別株の株主優待狙いで投資するのがよい」と、聞く機会は多いと思います。しかし筆者はカタログギフトやギフト券をもらうより、現金で還元されるほうがお得だと感じたので、高配当の日本個別株に投資しました。
具体的には「JT(2924)」や「住友化学(4005)」、「ヤマハ発動機(7272)」などを購入しました。目安としては、予想配当利回りが4%を超える銘柄を選ぶのがおすすめです。
分配金の高い海外ETF
高配当の日本個別株のほかに、筆者は海外ETFも投資を始めた直後に購入しています。
というのも、当時はVTやVTI、SPYDといった米国ETFへの投資が人気だったからです。「みんな投資しているなら買ってみよう」と軽い気持ちで始めました。
投資初心者だった筆者が選んだ海外ETFは、SPYDとHDV、BNDの3つ。
SPYDは米国高配当ETFの代表格で、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄を集めたS&P500に連動するよう運用されるETFです。
HDVも米国高配当ETFで、財務健全性の高い銘柄で構成されます。SPYDはとにかく高配当銘柄を組み入れるのに対し、HDVは財務健全性を重視しリスク軽減を図っているのが特徴です。
BNDは債券ETFの代表格で、米国全体の再建市場と同じ値動きになるよう運用されるETFです。国債や社債をバランスよく組み入れているので、債券ETFとして人気があります。
一般的に、株価と債券の値動きは反対に動くとされます。たとえば、株価が上がっているときは債券の価格は下がり、株価が下がると債券価格は上がる仕組みです。株式と債券、両方のETFをもつことで、リスク分散させることが可能です。
コロナショックで投資はどうなった?
筆者が投資を始めたのは、2020年の1月でした。そう、実は新型コロナウイルス感染症の流行直前の時期です。
当時は、コロナがこんなにも社会に大きな影響を与えるとは考えておらず、投資を始めることへ意気込んでいたのを覚えています。
ここでは、コロナショックで投資初心者の筆者の資産がどう動いたかを紹介します。
いきなりマイナス40%の損失を抱える
前述のとおり、筆者は投資を始めて数か月でコロナショックを経験しました。
細かい金額は覚えていませんが、当時は日本個別株を100万円ほどもっていました。しかし2020年4月ごろになると、100万円が60万円近くまで減ってしまったのです。
日本個別株は配当金目的だったため、長期投資する予定でしたが、40%近くも含み損を持っていると思うと胃が痛く、売ってしまおうかと悩みました。ですが、もともとの目的である配当金は通常通り分配されるようでしたので、そのままキープしようと考えました。
「自分の目的は配当金。長期投資だからすぐには売らない」と自分に言い聞かせ、コロナショックをやり過ごすことにしました。
マスクやオンライン会議ツールを扱う企業に投資
株価が下がってしまった銘柄はそのままにして、コロナ禍で値上がりしそうな銘柄の短期投資にも挑戦しました。
たとえば、コロナ禍で需要が高まるマスクやオンライン会議ツールを扱っている企業をピックアップし、最小単位の100株で取引を開始。オンライン会議ツール銘柄の短期投資は損失を出してしまいましたが、結果的にマスク銘柄で25%ほどの利益を出せたのでプラスになりました。
現在は年利4%程度で運用中
コロナショックで株価は一時的に下がったものの、損失を確定せず持ち続けたことで株価は回復。2024年は日本個別銘柄の配当金だけで年利4.6%を実現しました。
2024年6月時点では、以下の比率でそれぞれの金融商品を保有しています。
投資初心者は株価の上下に一喜一憂しがちなため、配当金や株主優待目的の長期投資なら、株価の確認は1ヵ月に1回程度にしておくとよいでしょう。
投資初心者からFPになった!
実は筆者、投資を始めてからお金に興味をもつようになり、FP資格の取得にも挑戦しています。FPの勉強はお金の勉強になるため、投資初心者が投資について勉強したいときにもおすすめです。
FP3級は誰もが知っておきたいお金の情報が満載
FP資格を使う仕事に就いていない人でも、FPで勉強する内容は日頃の生活に役立つものばかりです。たとえば、ライフプランを立てるときに、いついくら必要になるのかを計算したり、相続時の節税なる制度を知ることができたりします。
税金制度を知ることで、節税できる方法を学び実践できるのがFP3級です。FPは3級から1級まであり、1級の受験には実務経験が必要です。しかしFP3級は、日々の生活で知っておきたいお金の情報を効率よく学べるため、FP資格は不要でも投資を始めるなら勉強しておくとよいでしょう。投資で得た利益を確定申告するときにも役立ちます。
FP2級はライフプランを立てられるように
筆者は、2024年にFP3級と2級を取得しました。FP2級の内容はより実践的で、実際に架空の家族のライフプラン作成に必要な試算も試験内容に含まれます。
投資や投資に関わる税金の勉強のために、FP2級まで取る必要はありませんが、自分のライフプランを立てられるようになるメリットがあります。
FP試験は市販のテキスト・問題集を用いて、独学で取得可能です。試験では6割以上の正解で合格となるため、過去問で8割以上正解できるようになれば、投資初心者でも取得しやすい資格でしょう。
FPおすすめビギナー向け投資方法
FP2級・AFPを保有している筆者がおすすめするビギナー向け投資方法は、投資信託で毎月一定金額を投資する方法です。
筆者はいきなり日本個別株や海外ETFから投資をスタートしてしまいましたが、コロナショックで精神的に落ち着かない日々を過ごした苦い思い出があります。そうした不安を抱えないためにも、まずは投資信託から始めて、投資になれてきたら日本個別株や米国株を始めてみるのがよいでしょう。
もし投資信託を選ぶなら、つみたてNISAやiDeCo、クレジットカード積立を利用するのがおすすめです。つみたてNISAやiDeCoは、利益が非課税になるメリットがあります。
またクレジットカード積立はSBI証券がおすすめです。三井住友カードで毎月一定金額を積み立てるとポイントがもらえるため、お得に投資信託を購入できます。
投資初心者でも年利4%で資産運用は可能
筆者の経験では、投資初心者でも年利4%での資産運用は可能です。
ただし4%を達成するためには、多少のリスクも必要になることを理解しておきましょう。筆者は日本個別株だけで年利4.6%を実現しましたが、比較的リスクの低い投資信託で年利4%を得るためには、米国株や世界株、新興国株などリスクが高めの金融商品を選ぶ必要があります。
投資初心者はまず投資信託から始めて、投資の感覚や雰囲気を掴んでから、日本個別株や米国株、海外ETFへと広げていくのがおすすめです。
文・大木千夏
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を保有する独立系ファイナンシャル・プランナー。ライターとしても活動し、年間600本以上の記事を執筆・監修する。自身の投資経験から、資産運用分野に強みをもつ。