1リッター160円台(レギュラーガソリン)が当たり前となってしまったかのようなガソリン価格。いったいこの高値はいつまで続くのでしょうか。クルマを生活の足としている人や仕事で使用している人にとっては、ガソリン価格のこれ以上の高騰は大問題です。ここでは値下げの切り札といえる「トリガー条項」に注目してみました。
トリガー条項って何?
2月22日に衆院本会議において新年度当初予算案が賛成多数で可決されました。話題となったのは、国民民主党が野党としては異例の賛成にまわったこと。同党の玉木雄一郎代表は「トリガー条項の凍結解除検討を首相が明言したことを踏まえ、予算案に賛成する」と述べています。
同党では昨年秋の衆院選からこのトリガー条項の凍結解除を公約とし、12月6日に「トリガー条項凍結解除法案」を衆議院に提出していました。
ではトリガー条項とはどのようなものなのでしょうか。
- ガソリン価格が3ヵ月連続で160円/ℓ(レギュラーガソリン)を超えた場合、ガソリン税の暫定上乗せ分(特例税率)を一時停止する措置
- 現在は東日本大震災の復興財源確保のために凍結されている
トリガー条項の「トリガー」とは引き金を意味します。ある条件を満たしたら、引き金を引くというものになります。
ガソリン価格が25円/ℓ安くなる
もし凍結が解除された場合、ガソリン価格はリッターあたり約25円安くなると言われています。
つまり、トリガー条項が凍結解除されて発動されれば、レギュラーガソリンで160円/ℓのガソリン価格が135円/ℓ程度、ハイオクで170円/ℓが145円/ℓ程度に下がるわけです。
例を挙げてみます。
(例)Aさん
ミニバン(ハイオク利用 実燃費8km/ℓ)所有
1ヵ月の走行距離1000km(主に生活、レジャーに利用)
1ヵ月に消費するガソリンの量 1000km ÷ 8km = 125ℓ
現在のガソリン代 125ℓ× 170円=2万1250円(消費税抜き価格)
トリガー条項が発動された場合 125ℓ× 145円=1万8125円(消費税抜き価格)
1ヵ月あたりの差額 3125円
1年あたりの差額 3万7500円(消費税を足した場合は4万1250円)
(例)Bさん
軽自動車所有(レギュラーガソリン利用 実燃費18km/ℓ)所有
1ヵ月の走行距離1000km(生活、通勤に利用)
1ヵ月に消費するガソリンの量 1200km ÷ 18km =67ℓ
現在のガソリン代 67ℓ× 160円=1万720円(消費税抜き価格)
トリガー条項が発動された場合 67ℓ× 135円=9045円(消費税抜き価格)
1ヵ月あたりの差額 1675円
1年あたりの差額 2万100円(消費税を足した場合は2万2110円)
Aさん、Bさんとも年間で見たら無視できない金額です。これ以上の距離を乗る人だったら、あるいは複数台クルマを所有する家庭だったら、差額はもっと大きくなります。
トリガー条項の発動条件は?
現在は凍結されているため、解除には法改正が必要となります。また実際に発動が決定した場合、買い控えなどの需給バランスの混乱が予想されるため、現場を含む流通に携わる人たちからは凍結解除に慎重な声もあります。
一方で識者や消費者からは「対象となるガソリン税はもともと2009年に廃止された道路特定財源に含まれていたもので、課税根拠がない現在はトリガー条項の有無にかかわらず廃止すべきだ」といった意見もあります。
トリガー条項の凍結解除・発動はいつ?
2024年2月現在のガソリン価格は、実はレギュラーガソリンでも170円/ℓを超えています。それが店頭で160円台で売られているのは政府が石油元売り会社に「ガソリン価格上昇抑制補助金」を支給しているからです。
この補助金の上限はリッターあたり5円。実施期間は3月までとなっています。政府は大幅な拡充を検討していますが、それがはたしてトリガー条項の25円に及ぶかどうかは明らかになっていません。
補助金が終わるにしても拡充や延期が決定されるにしても、春以降、法改正の時期などを含めてトリガー条項についての新たな動きが出てくるものと思われます。
消費者としてはガソリン価格はできるだけ安いに限る(当たり前ですね)。それもできれば一時的な補助金による対策ではなく、恒久的なトリガー条項の発動、またはガソリン税の撤廃につながることを期待したいところです。
税金を撤廃するということは国の財源が減ることを意味しますが、そのぶん消費者は浮いたお金を別の消費や投資にまわすことができます。結果として経済の活性化につながるのであれば、十分検討に値することだといえるでしょう。
世界情勢を見ても原油高がストップしそうにない現在、政治の早い決断が求められています。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。