ついに売買契約成立。外見はまあまあ、内部はボロボロの戸建て中古物件を買うことに決まめた夫婦。ベクトルは「購入」から「リフォーム」へと移っていきます。予定している予算は300万円。さて、300万円でどこまでリフォームが可能なのでしょうか。
中古物件の引き渡しまで3ヶ月
内見編、契約編とつづいてきた本シリーズ。ここで一度、これまでの流れを振り返ってみたいと思います。「年」は2020年。ちょうどコロナ禍が始まった頃のことです。
- 2月下旬 妻が戸建ての中古物件をネットで見つける
- 3月上旬 居住中の物件を内見
- 3月中旬 ローン会社の仮審査を通過する
- 3月中旬 2度目の内見。販売会社にリフォームの見積もりやローン開始時期を確認する
- 3月下旬 売主さんと売買契約
こうやって並べてみるとスムーズかつスピーディーに話が進んでいったように見えますが、しょっぱなから夫婦喧嘩になったり、途中で気持ちがぶれたりと、当人たちのなかでは一筋縄でいなかないことがいろいろあったのはこれまで書いてきた通りです。
それでも4月を迎えた時点で、筆者と妻の意思は一致していました。残る課題は引っ越し予定の7月までに、販売会社の担当者Iさんいわく、内見したお客様の誰もがドン引いたボロボロ物件、を住めるレベルにまで持っていくことです。
ついでにこの先の予定を見るとこんな感じです。
- 4月 リフォームの下見、オーダー
- 5月 準備期間
- 6月 ローン正規申し込み。月末に引き渡し
- 7月 リフォーム。引っ越し
引き渡しまで約3ヶ月。時間があるようなないような微妙な感じです。経験則で言うなら、3ヶ月などという時間はあっという間ですから、ぼやぼやしてはいられません。
リフォーム業者さんと物件を下見
桜も散って新緑の季節を迎えた4月某日。3度目となる現地を訪問しました。今度はIさんだけでなく、リフォーム業者のTさんも一緒です。
中古で購入するとき、リフォームをどこに頼むか。他の人はどうか知りませんが、あけすけに言うと、筆者と妻はさして深く考えていませんでした。リフォーム以前に買うか買わないかという問題に頭を費やしすぎていて、リフォームそのものを考える余裕がなかったのです。
筆者について言うと、もともとリフォームやリノベーションに多少は興味があって、もしいつか自分で家を買うなら中古の物件を買って中をきれいにしたいな、などと考えていたくせに、頭を占めていたのはもっぱら資金繰りで、他のことは二の次となっていました。
リフォームについて何かしたのは一度だけ。販売会社のホームページにあったリフォームの事例を見たくらいでした。事例にあったのはそれほど特徴のない一般的なリフォームの例でしたが、自分たちの身の丈を考えるとこれくらいがちょうどいいという感じでした。
こんな調子だから、リフォーム業者についても深くは考えていませんでした。Iさんが紹介してくれる人なら間違いはないだろう。筆者も妻もそう考えていました。
増えていく修繕箇所
Iさん、Tさんとともに家の玄関に入りました。さっそくTさんが上がり框に触れて言いました。
「これ、外から入るとけっこう目につきますね」
言われてみれば、上がり框の縁がささくれた感じで剥がれています。さすがプロの目は細かいなと感心しつつ家に上がりました。
現在、リフォームで決まっているのは1階の水回り(キッチン、トイレ、洗面台、浴室)の全交換と、1階2階すべての壁紙の交換、1階リビングの窓ガラスの交換、プロパンガスから都市ガスへの転換です。
LDK部分に入ると、Tさんに「床はどうされますか?」と訊かれました。見積もりを依頼された時点で床の張り替えはなしと知っていたはずだけど、施主に直接確かめたかったのでしょう。
壁紙全部を取り替える家なのだから床とてけっしてきれいではないのですが、磨けばなんとか使えるレベルです。
「床はそのままで」とIさんがかわりに答えてくれました。
1階、2階と見ながら、「照明はそのまま」「和室の畳は張り替え」「カーテンレールは曲がっているので交換」「網戸はほつれのあった2枚を交換」「上がり框も修繕」と、次々に交換箇所や修繕箇所が決まっていきます。
「都市ガスへの切り替えってTさんのところでできますか?」
Iさんが筆者の「こだわりポイント」について訊いてくれました。
「もちろん、うちでできますよ」
「ガス栓もリビングにひとつ付けたいんです」筆者の問いに「それもできます」とTさん。念願が叶いそうでこちらは大満足です。
「壁の色は何色にしたいですか」壁紙について訊かれました。
「うーん。迷っているんですよね」
答えたのは妻でした。
「色って選べるんですよね」
「選べます。うちに見本があるので今度お見せします」
Tさんによると、壁紙はもちろん、カーテンレールなどもけっこう種類があるそうで、どれにするか悩みそうです。
リフォーム費用はプラス40万円で350万円に
今回のリフォームで金額的にも物理的にも最大のものは水回りです。キッチン台、お風呂、トイレ、洗面台、いずれも種類があって、これも選択に迷いそうです。
水回りについてはメーカーのショールームでアドバイザーを交えて相談する、ということになりました。ただし肝心のショールームはコロナで5月の連休明けまではお休みだといいます。
コロナ、で思い出したことをIさんに尋ねました。
「そういえば、コロナでトイレなんかが入ってこなくなったって言っていましたよね」
中国で生産されている製品がコロナによる物流の遅延で日本に入ってこない。そう聞いていたのです。
「動き出したみたいです。大丈夫です」
ということは、引っ越しなのにリフォームが済んでいない、という事態はまぬがれそうです。
「リフォームって時間的にはどれくらいかかりますか?」
Tさんに確かめてみました。
「だいたい3週間、ってとこですかね」
となると、引っ越しは7月下旬。梅雨明けの真夏日となりそうです。それまでにエアコンも入れておきたいところです。エアコンだけではありません。その頃には草ぼうぼうとなっているであろう庭の草刈りもしなければなりません。やることはいっぱいあります。
これでリフォームのだいたいのメニューは決まりました。
最後に、筆者と妻はTさんとIさんににいちばん知りたいことを質問しました。
「リフォーム代、いくらくらいになりそうでしょう?」
前回もらった見積もりは310万円でした。それに、今回は畳の張り替えやカーテンレール、網戸交換、上がり框の修繕など細かいものが加わりました。
「いくらくらいですかねえ」
IさんもTさんに訊きました。
「350万くらいはいきますかね」
Tさんは「そうですねえ」と頷くと、言いました。
「細かく見積もってみます。ガスがいくらになるか。あとは何を選ぶかにもよりますし」
いますぐ正確な数字は出せないけれど、だいたい350万と見れば間違いなさそうです。
350万円。最初に聞いていた話より50万円の上積みです。これに引っ越し代や、部屋数に応じて必要なエアコンにかかるお金を考えると、現金で支払えるかどうか、かなりギリギリの線です。
ともあれ、1週間後、壁紙選びなども兼ねて、正確な見積もり金額を聞きにTさんの会社を訪ねることとしたのでした。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。