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正社員なのに給料が最低賃金以下!?今すぐ自分でできる計算方法を紹介

最低賃金の引き上げのニュースを耳にする機会があるかと思います。この最低賃金、時給だけでなく月給の給料にも適用されることをご存知でしょうか。「正社員だけど最低賃金以下で働いている」ということがないよう、月給の最低賃金の計算方法を解説します。

自分の給料が最低賃金を上回っているか調べる方法

まず月給から最低賃金を計算するための方法について、東京都内の会社で働くAさん
を例に挙げて紹介します。

1日の労働時間8時間/年間所定労働日数245日

 

基本給:150,000円
時間外手当:40,000円
通勤手当:10,000円
家族手当:10,000円
合計:210,000円

【年間所定労働日数とは】
年間所定労働日数は、1年間の暦日数から、就業規則で定めた休日の日数を引いた日数です。

例えば年間休日が120日の場合
計算式は「365日-120日=245日」、年間所定労働日数は245日です。

※うるう年の場合は、366日から年間休日を引きます。

給料として支払われている中から、最低賃金の計算から省くものがあります。

Aさんの場合「時間外手当」「通勤手当」「家族手当」は、計算から省きます。

【最低賃金の対象とならない賃金】

 

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

引用:厚生労働省HP

【計算式】
1.月給から、最低賃金計算の対象とならない賃金を引きます。

210,000円―(40,000円+10,000円+10,000円)=150,000円

2.1年分の給料を年間の労働時間で割り、1時間あたりの賃金を計算します。

(150,000×12ヵ月)÷(8時間×245日)
=1,800,000÷1960
=918円

令和3年10月1日時点での東京都の最低賃金は1,041円のため、123円下回っていることになります。

固定残業代がある場合の計算方法

固定残業代を含む月給の場合、最低賃金以上かどうかの計算が少し複雑になります。

ここでは大阪府で働くBさんを例に挙げます。

1日の労働時間8時間
所定労働時間/10:00〜19:00(休憩1時間)
年間休日110日

 

基本給:220,000円(うち35時間分の固定残業代:40,000円)
通勤手当:10,000円
家族手当:10,000円
合計:240,000円

【計算式】
1.基本給から固定残業代を引きます。

220,000円―40,000円=180,000円

2.1年分の給料を年間の労働時間で割り、1時間あたりの賃金を計算します。

(180,000×12ヵ月)÷(8時間×255日)
=2,160,000÷2040
=1,058円

2024年1月現在の大阪府の最低賃金992円を上回っているため、問題ありません。

3.次に固定残業代が、最低賃金を上回っているかどうかを確認します。

計算する前に、固定残業代には何が含まれているかを洗い出します。
一般的には

  • 時間外労働
  • 深夜労働
  • 休日労働

が対象として考えられますが、今回のケースでは時間外労働のみを対象とします。

また、固定残業時間は、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えるため、1.25倍の割増賃金で計算する必要があります。

固定残業代÷(固定残業時間×1.25)
=40,000÷(35×1.25)
=40,000÷43.75
=914円

2024年1月現在の大阪府の最低賃金992円を下回っています。

固定残業代と最低賃金から逆算し、本来の企業が設定すべき残業時間を調べることができます。

計算式は
固定残業時間=固定残業代÷(大阪府最低賃金×1.25)
です。

40,000÷(992×1.25)
=40,000÷1240
≒32時間

※小数点以下を切り捨て

現在の固定残業代であれば、32時間分として設定すれば合法です。

最低賃金とは?地域別・特定産業別の違い

最低賃金とは、国が定めた賃金の最低限度です。賃金を支払う側は、必ず最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。

また最低賃金には、都道府県ごとに異なる「地域別最低賃金」と特定地域の特定産業に対して定められている「特定最低賃金」の2種類があります。

ただし、東京都のように地域別最低賃金(1,041円)が、下記の東京都「特定最低賃金」を上回る場合は、「地域別最低賃金」が適用されます。

業種時間額
鉄鋼業871円
はん用機械器具、生産用機械器具製造業832円
業務用機械器具、電気機械器具、情報通信機械器具、時計・同部分品、眼鏡製造業829円
自動車・同附属品製造業、船舶製造・修理業,舶用機関製造業、航空機・同附属品製造業838円

都道府県ごとの最低賃金の最新情報は、厚生労働省の公式サイトにて確認することができす。令和3年10月に改正されているため、必ず最新情報をご確認ください。

下記は主な都道府県の地域別最低賃金一例です。地域により差があることがわかります。

都道府県名地域別最低賃金時間額
東京1,041円
神奈川1,040円
千葉953円
大阪992円
愛知955円
福岡870円

また派遣社員の場合は、派遣先の事業所の最低賃金が適用されるため注意してください。

(例)
派遣元事業所:千葉県
派遣先事業所:東京都

この場合、派遣社員の最低賃金は東京都の地域別最低賃金である1,041円です。

給料の手取り額が最低賃金を下回る?これって違法?

ここでひとつ注意したいことがあります。

給料が最低賃金を下回っているかどうかを調べる際に「手取り額」で計算する方がいらっしゃいます。

しかし、これは間違いです。

そもそも手取り額とは、基本給と手当を足したものから、社会保険料・税金を差し引いた金額をいいます。「手元に残る金額=手取り」です。

前述しましたように、最低賃金を計算する際には、通勤手当や家族手当、さまざまな控除は含みません。

もし手取り額を用いて計算した際に、最低賃金を下回っていたとしても、実際には法律違反ではない可能性もあるため注意してください。

給料が最低賃金を下回っている場合にやるべきこと

給料が地域別最低賃金を下回っている場合は、最低賃金法違反のため、勤務先は50万円以下の罰金対象です。また特定(産業別)最低賃金を下回っている場合は、労働基準法違反のため、30万円以下の罰金の対象となります。

自分の給料が最低賃金を下回っていることがわかった場合は、本来会社に伝えるべきですが「会社には言いにくい」という人もいるかと思います。また「伝えたけれど改善されない」といった悪質なケースも想定されます。

そういった場合は、地域の労働基準監督署に相談してください。

労働基準監督署は、管轄内の企業が労働関係の法律(労働基準法など)を守っているかどうかを監督する機関です。

企業が労働基準法違反や最低賃金法違反をしていないか、立ち入り調査をしたり、是正勧告をしたりすることができる立場です。相談は、匿名でも構いません。

できるだけ資料を揃え、わかりやすい状態で相談することで、労働基準監督署も動きやすくなります。企業が最低賃金以下の給料を支払うことは、違法行為です。「どうせ言ってもムダ」だと諦めることなく、相談することをおすすめします。

「労働基準監督署に相談すると、解雇されたり会社から嫌がらせをされたりするのでは?」と心配する方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、労働者が違反の事実を申告したとしても、そのことを理由に解雇など、労働者に対して不利益な扱いをすることは最低賃金法第四章雑則の第34条第2項により禁止されています。

最低賃金以下の給料で働かせることは違法!必ず相談しよう

月給制の場合、自分が最低賃金以上の給料をもらっているかどうか、一見わかりにくいものです。しかし、最低賃金以下の給料で働かせることは違法であり、泣き寝入りしてはいけません。

自分の勤務先の都道府県の最低賃金を調べ、今回紹介した方法で計算してみてください。

万が一、最低賃金以下の給料しか払われていないことが判明した場合は、必ず会社または労働基準監督署に相談することをおすすめします。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。