テレワークや副業で働くことが当たり前になった現在、いっそ独立してフリーランス(個人事業主)になろうと考えている方も多いのでは? フリーランスの魅力は自由なところ。いっぽうで、これまで会社が代行してくれていた社会保障などの手続きや確定申告は自分でしなければなりません。年金もそのひとつです。
フリーランスになったら国民年金への加入を
会社などの勤め先をやめてフリーランスになったら、まずやっておきたいのが国民年金保険(以下、国民年金)への加入(切り替え)です。会社員時代は給料から天引きされていた年金保険料ですが、これからは自分で直接支払っていくことになります。
国民年金への加入はいたって簡単です。会社を退職した場合は以下のものを揃えて、できれば退職した月もしくは翌月中までに自分が住所を置いている市区町村の役所の年金窓口に行ってください(翌月以降でも可能ですが、スムーズな切り替えのためにも手続きは早めにしておくことが望ましいです)。
- 年金手帳もしくは基礎年金番号通知書
- 離職証明書、離職票、雇用保険被保険者離職証明書など勤務先や退職年月日がわかる書類(退職時に会社で発行してくれます)
- マイナンバーカードまたは通知カード、運転免許証など本人確認ができるもの
国民年金と厚生年金の違いは何?
国民年金は20歳から65歳未満の誰もが加入を義務付けられている基礎年金で、保険料の支払いは自分で行います。いっぽうの厚生年金は会社員に加入が義務付けられているもので、基礎となる国民年金に厚生年金の保険料が上乗せされた年金保険となります。保険料は給料天引きで、上乗せ分の半分は会社が負担します。
- 会社員:厚生年金(国民年金 + 厚生年金) ※保険料は給料から天引き。厚生年金分の保険料の半分は会社が負担
- フリーランス:国民年金 ※自分で直接支払う
会社を退職してフリーランスになるということは厚生年金からの脱退を意味します。これまで上乗せされていた分がなくなるので毎月支払う保険料は減るけれど、年をとってから受け取る年金の額も減る、ということになります。
厚生年金の脱退の手続きは退職時に会社側が行うので、自分からとくにすべきことはありません。会社からそれを証明する書類を受け取るだけで済みます。
国民年金の金額はいくら?
国民年金の保険料は毎年少しずつ変わります。令和4年度の月額保険料は1万6590円で、前年の令和3年度は1万6610円でした。
年額にすると令和4年度は19万9080円。1年で約20万円を支払うことになります。
納付方法は、現金納付、口座振替、クレジットカードの3種類。加入時にとくに手続きをしていなければ、自宅に郵送で納付書が届きます。支払いは金融機関やコンビニなどで可能です(現金での支払いのみ)。口座振替、クレジットカード納付にする場合は年金事務所に申し込むことになります。
国民年金を安くする方法
国民年金の保険料は前納することによって割り引かれます。前納には6ヶ月前納、1年前納、2年前納の3種類があって、それぞれ割り引かれる金額が違います。また現金納付・クレジットカード納付と口座振替では金額が変わります。
令和4年度の前納額は以下の通りです。
- 6ヶ月前納(令和4年4月~9月分、10月~令和5年3月分)
口座振替の場合:9万8410円(割引額は1130円)
現金納付・クレジットカード納付の場合:9万8730円(割引額は810円) - 1年前納(令和4年4月~令和5年3月)
口座振替の場合:19万4910円(割引額は4170円)
現金納付・クレジットカード納付の場合:19万5550円(割引額は3530円) - 2年前納(令和4年4月~令和6年3月)
口座振替の場合:38万1530円(割引額は1万5790円)
現金納付・クレジットカード納付の場合:38万2780円(割引額は1万4540円)
前納制度の利用には年金事務所への申し出が必要となります。令和4年4月分からの口座振替、クレジットカードによる前納の申し込み期限は令和4年2月末となっているため、今年度分はいまからだと利用できるのは令和4年10月から令和5年3月までの6ヶ月前納のみになります。また口座振替には前納の他に「早割」があり、利用すると毎月50円が割引になります。
経済的に苦しくて年金が払えない場合
フリーランスになりたてのときは、思うように売り上げが伸びずお金のやりくりに頭を悩ますこともあるかもしれません。もし「年金が払えそうにない」と思ったら、役所の窓口で「免除」の相談をしてみてください。非課税かどうかなどその人の状況によって、4分の1免除、半額免除、全額免除などの免除が受けられる可能性があります。申請の受付は毎年7月からとなっています。
忘れずにいたいのは、保険料が免除されると、受け取る年金の額が減るということです。現在の国民年金は20歳から満額を払った場合、毎月約6万5000円が受け取れることになっていますが、免除を使うとその額が目減りします。
将来のことを考えると、なるべく免除は避けたいところ。もし免除してもらった場合、保険料は10年前まで遡って支払うことができるので、お金に余裕ができたら納付しておくといいでしょう。
フリーランスとして仕事が軌道に乗ったら、国民年金だけではなくプラスαを考えてください。なぜならば、厚生年金と国民年金では受け取る金額に差があるからです。その差は人によりますが、平均すると毎月8万円以上。もし未納期間があったり、免除を受けていたりすると、その差はもっと開きます。
フリーランスは厚生年金には加入できませんが、「付加年金」や「国民年金基金」など国民年金に加算して保険料を支払うことができる制度があります。これらを利用することで将来の年金受け取り額を増やすことができます。他に個人型確定拠出年金(iDeCo)なども利用して、老後に備えてください。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。