新型コロナウイルス感染症の行動制限も緩和され、人と会う機会の増えたこの頃。この正月はひさしぶりに帰省するという人、親戚、友人への挨拶に出かけるという人も多いでしょう。子供のいる家庭への訪問となると、用意しなければならないのがお年玉。お年玉はいくら渡せばいいのか。最近の相場を調べてみました。
お年玉の相場はいくら?
自分の子や親戚、友人の子にあげるお年玉。自分がもらっていた子供の頃といまとでは金額に差はあるのか。少なすぎても多すぎてもいけないだろうし、ちょっと悩むところです。ここでは最近における一般的なお年玉の金額を紹介します。
赤ちゃん&乳幼児(0歳~2歳)
現代において基本的にお年玉は現金を子供本人にあげるものだとされています。このため、まだお金というものを認識していない、その価値を理解していない赤ちゃんや1、2歳児にお年玉を渡すことは少ないようです。もしあげるなら、現金ではなく小さなおもちゃや菓子、靴下や帽子といった小物類、絵本などを渡すといいでしょう。
それでも、相手によっては渡しておきたいという場合もあるかもしれません。そのときは、気持ちを伝えるという意味で、例えば5円玉ひとつ、500円玉ひとつ、というような少額のお年玉を渡すといいかもしれません。ただし、幼い子は硬貨を口に入れてしまうことなどもあるので、渡したあとはすぐに保護者に管理してもらうか、最初から親に渡すようにしてください。
未就学児(3歳~6歳)
相場は500円~2,000円。3~4歳の子であれば500円~1,000円。5~6歳は1,000円~2,000円程度。5歳、6歳ともなればお金の持つ意味を理解している子もいます。いずれにせよ、幼い子供にとってお年玉はお金を知るいいきっかけとなるので、しっかりと本人に渡してあげましょう。
小学生
低学年(1~2年生)は1,000円。中学年(3~4年生)は2,000円。高学年(5~6年生)は3,000円程度が相場。小学生も3、4年になってくるとお年玉の使い道を自分で考えるようになります。5、6年生になると自分自身で買物に出たりする子もいます。3,000円程度の金額は普段とは違う買物を体験するにはちょうどいい金額かもしれません。
中学生
相場は5,000円。中学1~2年なら3,000円でも構いませんが、卒業や高校入学を控えた中学3年生には5,000円を渡したいところです。
高校生
高校生の場合は5,000円から1万円が相場になります。お金の価値は十分にわかっている年頃なので、お年玉にありがたみを感じてもくれるはずです。
高校卒業後(18歳以上)
高校生より上となると、お年玉を渡すかどうか、人によって判断が分かれてきます。以前は成人となる20歳がひとつの目安になっていましたが、日本では2024年4月から成年年齢が18歳に引き下げられました。ただし、まだ感覚的には20歳は依然としてひとつの節目となっているので、そこを基準に線引きするのは有りかといえます。他にも18歳(高校卒業)や大学卒業(学生でいる間)までは渡すという考え方もあります。相場は1万円。
なお相手がすでに就職して社会人となっている場合は、通常、お年玉は不要です。
知っておきたいお年玉の基本
だいたいの相場は決まっているお年玉。とはいえ、相手との関係や距離感によっても渡す金額は変わります。例えば、コロナ禍で会えなかった孫に3年ぶりで会う、などという人なら、会えなかったぶんはずんであげようといった気持ちにもなるはずです。
注意しておきたいのは、お年玉にもルールがいくつかあるということ。慣習的なきまりなので絶対に守らねばならないものではありませんが、常識として覚えておきましょう。
①ポチ袋に入れて渡す
お年玉を渡すときはポチ袋(お年玉袋)に入れて渡します。ポチ袋がないときは、封筒でも紙ナプキンでも、とりあえずなんでもいいので包んで渡します。ポチ袋は干支にちなんだイラストなどが入っているものがあります。余っているからといって前年のものを流用するのはNGです。ポチ袋には、できれば渡す相手の名前を記入しておくといいでしょう。
②なるべくきれいなお札・硬貨で
理想はピン札ですが、用意できない場合は手持ちのお札の中でいちばんきれいなものを渡すといいでしょう。入れ方は三つ折りが基本。肖像が入った側を内側にして左側から右へと折ります。硬貨の場合はポチ袋の裏表に合わせて製造年月日の入った側(裏側)を下に入れます。
③忌み数は避ける
「死」が連想される4や「苦」が連想させる9が入る金額(例:4,000円、900円など)は避けた方が無難です。
④相手が喪中の場合は「お小遣い」として渡す
相手の家庭が喪中のときは喪が明けるのを待つか、お年玉ではなく「お小遣い」として渡すといいでしょう。もらう側の子供にしてみればあとで渡されるよりもいますぐ渡される方が嬉しいはずです。
⑤目上の人の子には現金以外のものを
お年玉は目上の人が目下の人に渡すのが昔からのきまりとなっています。上司や恩師、自分より社会的地位が高い人などの子供には現金ではなく物品の贈り物か、図書カードなどのギフトカードを渡しましょう。Amazonギフトカードなどは若い世代に人気があります。
そもそもお年玉とは?
いつもと違って多額の現金がもらえるお年玉は、子供にとっては年に一度の楽しみです。しかし、現金を渡すようになったのは戦後のこと。戦前はお菓子などをもらうことが一般的だったといいます。
では、そもそもお年玉とは何かというと、実は鏡餅のこと。古来、貴重な餅で作られた鏡餅は五穀豊穣を司る歳神様の魂が宿っている「御歳魂(おとしだま)」と呼ばれていました。鏡餅を飾る各家庭の家長は松の内が明けるのを待って鏡餅を家族や使用人に切り分けていたといいます。そうすることで歳神様による一年間の加護が得られると昔の人たちは考えていたようです。これが現代につながるお年玉の習慣の始まりでした。
古くは平安期から禁裏ではこうしたことが行われていたといいますが、一般的になったのは江戸時代になってから。この頃になると渡すものは餅とは限らず、武家の場合は刀などを渡していました。商家などでは金銭を渡すこともあり、これが昭和期以降の現金を渡すという習慣のもとになったのではないかと言われています。
もともと目上の人が目下の者に渡していたお年玉は、時を経るととともに大人が子供に渡すものという形になり、お年玉=子供がもらうもの、という習慣が一般的となっていきました。
現金であるお年玉を誰かから自分の子供に渡されると、気持ちとしてはお返しがしたくなります。お互いに子供がいれば渡しあうことも可能ですが、片方にしか子供がいない場合は直接的なお返しはできません。ただし、お年玉にはお返しをしなければならないというルールはありません。もらいっぱなしでも失礼にはあたりません。
誰でも子供の頃は大人からお年玉をもらう。そして自分も大人になったら誰かの子供にあげる。長い目で見れば「お返し」はしている。そう考えるといいでしょう。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。