電気代、ガス代、ガソリン代をはじめ、食料品や生活用品の値上げが続いています。毎日の出費を抑えるにはやはり節約がいちばん。なかなかやめられないお酒やタバコなどの嗜好品ですが、そろそろやめることを考えてみてはどうでしょう? お酒やタバコをやめるとどれだけ節約になるのか考えてみました。
お酒やタバコをやめると年間50万円の節約になる?
年末年始が近づいてきたこの時期、コロナ禍以前と比べると減ったかもしれませんが、いつもよりもお酒を飲む機会が増えてきたと思います。
いっぽうで、最近は物価の上昇が家計を圧迫しているのも事実。ここはなんとか節約をして出費をおさえたいところです。
家計防衛、資産形成のためになにをするか。
そこには「攻め」と「守り」の両方があります。
投資をする。副業をする。資格を取得する。独立・起業に備えた準備をする。そういったことが「攻め」ならば、「守り」の王道はやはり「節約」ではないでしょうか。
とはいえ、月の家賃や住宅ローン、教育費などの固定費はなかなか減らすことはできないもの。そうなると必然的に節約の対象となるのが嗜好品や贅沢品です。
お金のかかる嗜好品の代表といえば、お酒とタバコです。どちらも依存性が強く、好きな人はなかなかやめることができない。「お酒を飲んだりタバコを吸ったりすると気持ちが落ち着く」という人は多いでしょう。 なかには「これがないと生きていけない」という人もいます。
だけど、本当にそうでしょうか。
お酒やタバコがないと生きていけませんか?
世の中には、お酒は飲まない、タバコも吸わない、という人は大勢います。
つまり、人間はお酒やタバコがなくても生きていける生き物なのです。それ以前に、お酒やタバコを嗜まない人の方が健康で長生きする率が高いのです。
ここではお酒やタバコが人間の体に及ぼす害毒について詳しく言及するつもりはないので、家計に対する害毒=影響だけに絞って見てみたいと思います。
まずは自分自身の例を挙げてみます。筆者はタバコは吸いませんが、お酒はほぼ毎日飲みます。この記事を書く前の晩も、妻と2人でロング缶のチューハイを2缶にビールを1缶、合計3缶開けてしまいました。
金額にすると、およそ577円になります。
これが1ヶ月(30日)分だと、577円×30日=1万7,310円となります。
単純に計算しても1万7,310円。飲む量は毎日同じとは限らないので、かかる月は2万円くらいはお酒に費やしているかもしれません。
もし月に2万円だとして、1年だと24万円。
月に1万7,310円だとしても、20万772円です。
もしお酒をやめれば、この20万円のお金を節約することになります。
年間20万円あったら、子供に習い事の2つや3つはさせてあげられます(そんなにやらされたら子供の方が忙しくてたまったものでないでしょうが)。
いま決めました。お酒、やめます。
あくまでも筆者の話ですが、お酒をやめたら年間20万円の節約になります。お酒とタバコの両方を嗜んでいる方だったら、年間50万円、あるいはそれ以上の節約になるのではないでしょうか。
自分がお酒やタバコにいくら使っているのか。「まだ」というみなさんは、一度しっかり計算してみてはいかがでしょうか。
断酒に禁煙は難しい?
やめれば年間数十万円の節約が実現できる断酒に禁煙。「そうは言うけど、やめられないのよ」と苦笑いする愛煙家や酒好きのみなさんもいることでしょう。
よく知られていることですが、アルコールやニコチンは摂取すると、脳内に神経伝達物質であるドーパミンが放出されます。ドーパミンは快感や幸福感を与えてくれるため、人はお酒を飲んだり、タバコを吸ったりすると「落ち着く」「気持ちがいい」と感じるのです。
1日働いたあと、お酒を飲んだときに感じるあの解放感。緊張した時間の合間の喫煙がもたらしてくれる、「ふうっ」と一息つく感じ。これは確かになかなか捨てがたいものがあります。
しかし、極論をいえばそのすべてはドーパミンによって支配されている感覚に過ぎないのです。だったら、お酒やタバコでなくてもドーパミンを放出してくれるなにかをさがしてみてはどうでしょう。
断酒や禁煙に挑戦しようというとき、よくすすめられるのがノンアルコール飲料や炭酸飲料、飴やガムといっ代替品です。最近はニコチン0の電子タバコなども人気のようです。こうしたものを口にすることで気を紛らわしてストレスを減らす。それも難しいようなら、酒量やタバコの本数を減らすといった方法もあります。これには人それぞれに合ったやり方があるかもしれません。
ここで注意すべきは依存性。ドーパミンを放出することにつながる行為の多くは酒やタバコと同じで依存性が高いので注意が必要です。とくにギャンブルや課金制のスマホゲームなどはかえってお金を使うことになりかねないので避けた方がいいでしょう。
逆に体によくておすすめなのは、ランニングやジョギングです。「ランナーズハイ」という言葉があるように、ランニングをしていると人は楽しさや恍惚感に浸れます。「走っていて苦しいはずなのにどうして?」と思うかもしれませんが、ランニングは実はお酒やタバコと同じで、その最中は脳内にドーパミンが大量に放出されるのです。
運動をしなくても、実は人と話すだけでもドーパミンは放出されます。自分にとって気持ちのいい話、誰かにマウントをとるとか自慢話などをしているとき、その人の脳内にはドーパミンが駆け巡っています。けれどこれは気持ちがいいのは自分ばかりで、話し相手は面白くないかもしれないので、なるべくなら控えた方がいいでしょう。
いちばんいいのは、ある日突然、きっぱりとやめてしまうことです。難しそうに聞こえますが、ちょっとしたきっかけがあれば可能だったりします。例えば、引っ越しをした、結婚した、配偶者が妊娠した、子供が生まれた、というライフステージが変わる節目などは、断酒や禁煙のチャンスです。
究極の代替品は睡眠や温浴
お酒やタバコを摂取すると「気持ちがよくなる」「落ち着く」と人は言います。しかし、実はこれにはちょっとしたマジックがあります。
ここで言う「気持ちがよくなる」「落ち着く」は、実は額面通りのものではなかったりするのです。というのも、ドーパミンがもたらす快楽や幸福感、陶酔感は、人を興奮状態にする類のものだからです。
人間には交感神経と副交感神経があります。交感神経が働くのは緊張状態や興奮状態にあるとき。逆に副交感神経が刺激されると、人は心底リラックスして眠たくなったりします。ドーパミンが刺激するのは前者の交感神経。お酒やタバコがもたらす気持ち良さは、実はリラックスとは逆の興奮状態がもたらす気持ち良さなのです。
ここでひとつ質問です。
みなさんは眠るのは好きですか?
「嫌い」という人は皆無だと思います。なかには、「眠るのがもったいないくらい毎日がむちゃくちゃ楽しい」という人生の絶頂期のようなときを迎えている方もいるかもしれませんが、たいていの人は「毎日もっと寝たい」「ぐっすり寝たい」と思っていることでしょう。
では、なぜ人はぐっすり眠りたいと願うのでしょう。
答は2つあります。ひとつは体が睡眠を必要としているから。そしてもうひとつは「眠ることは気持ちがいいから」です。
だったら、もっとぐっすり寝てみてはどうでしょう。そのためにはお酒やタバコをやめてみることが効果的です。交感神経を刺激するお酒やタバコは、睡眠を誘う副交感神経にとっては敵です。とくに夜に摂取すると睡眠の障害となってしまいます。
人間の体は単純一様にはできておらず、就寝前の晩酌などは眠気を促してくれたりするし、実際、寝つきはよかったりしますが、結局のところそれは浅い眠りにしかならず、夜中に何度も目が覚めたり、トイレに行きたくなったり、喉が渇いたりします(そして水を飲んで、またトイレに行くことになる)。
反対に、いい睡眠をもたらしてくれるのは、ぬるめのお湯での入浴です。よく言われているのは、39度程度のお湯に15分ほどつかること。すると体はリラックスして、その後の睡眠の質がよくなります。
質のいい睡眠がとれている人は、いうまでもなく健康です。ちゃんと眠れていれば仕事の効率も上がります。そしてなにより、睡眠にはお金がかかりません。
同じ「気持ちが良くなる」なら、お酒やタバコではなくて睡眠を大切にしてみる。たっぷり気持ちよく寝て、年間数十万円の節約にもなる。今日からスタートしたい断酒と禁煙です。いろいろ言いましたが、もちろん「飲む」や「吸う」は本人の自由です。そのうえで、もし「お金をためたい」「節約したい」「ぐっすり眠りたい」が、「飲みたい」や「吸いたい」という気持ちを上回ったら断酒と禁煙にチャレンジしてみてください。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。