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コーヒーも電気料金も! 値上げの春に消費者ができる対抗策は?

春の到来は嬉しいもの。だけど、それが出費の増大をともなうとなると気分もいまひとつですね。今年の春は食品やエネルギーを扱う企業の多くが10%前後の価格改定(値上げ)を実施します。消費者は甘んじて受け入れるほかないのでしょうか。家計を直撃する物価の上昇にどう向き合えばいいのか。今日からできることを考えてみました。

毎日使う生活必需品がそろって価格改定

3月以降に予定されている値上げで、とくに目を引くのは食品や消耗品です。

サラダ油などの食用油を製造・販売している昭和産業では1kgあたり40円以上の値上げ。マヨネーズなどでは味の素で2~10%、キューピーが3~9%。ハム、ソーゼージだと伊藤ハムが4~12%、プリマハムが5~12%(2月に実施済み)。カップ麺だと日清食品が6月から5~12%の値上げを予定。同じくサンヨー食品も6月から10~12%の引き上げを予定しています。

日清食品のカップヌードルでいうと、これまでの希望小売価格193円が214円になります。100円台だったものが200円台になるのは、消費者にはかなりのインパクトがあります。

他にも醤油やコーヒー、缶詰、冷凍食品、また食品以外でもティッシュペーパーやトイレットペーパーなども値上げが決まっています。こうなると値上げしないものをさがすのがたいへんなほど。実際、各社とも数百品目が同時に値上げという事態が起きています。

電気料金もガス料金も値上げ

食品や消耗品だけでなく、この春は電気料金やガス料金も値上げします。3月の電気料金は標準家庭の前月比でいうと、東京電力が283円の上昇、関西電力が55円、中部電力で292円。ガスは都市ガス大手4社が、東京ガスが222円、大阪ガスが226円、東邦ガスが229円、西部ガスが168円の上昇となっています。

これ以上の値上げはあるのか?

そもそも、どうしてこんなに物が値上がりするのでしょう。単純に言うと「原料の値上げ」が製品の値上げにつながっています。世界的な原油価格や小麦価格などの上昇がエネルギーや食品価格の上昇に直結しているのです。

値上げの理由は他にもあります。コロナ禍による物流網の乱れ、輸送コストの上昇、円安や経済力の低下、これらの要因がいくつも重なって、これまで耐えてきた企業もさすがに値上げに踏み切らざるを得なくなったというのが実情です。

もうこれ以上の値上げは勘弁。そう叫びたくなるような現状ですが、不安定な世界情勢を見ると、物の値上げは今後も続きそうです。ただし、値上げされても買えるうちはまだいいかもしれません。この冬は物流の機能不全でマクドナルドのマックフライポテトがSサイズのみの販売となって話題となりました。

不足しているのはポテトだけではありません。世界の市場を俯瞰すると、最近の日本は食肉や水産物での「買い負け」が目立ってきています。経済力の相対的な低下により、いままでは買えていたものが、もっといい値をつける他の国に買われてしまい、日本には入ってこないという状態になりつつあるのです。

値上げするなら賃金アップも

商品が値上げされるのなら、その分収入もアップしてほしい。これが消費者の本音でしょう。政府も昨年来、経済団体や企業に対して従業員の賃上げを促しています。これに対して多くの大企業や中小企業が「実施したい」という意欲的な回答をしていて、民間の調査では2024年度に賃上げを予定している企業は全体の約7割に及ぶといわれています。

2月28日にはゲーム大手のバンダイナムコエンターテインメントが4月から全社員の基本給を平均5万円引き上げる新報酬制度を発表しました。同じバンダイナムコホールディングス傘下のバンダイでは、全社員の月給を平均27%引き上げることを決定。月の給料が5万円アップするのなら、10%程度の物価上昇には十分対抗できそうです。

ただし、こうした大胆な賃金アップを実施するのは一部の企業のみ。大半はできても3%程度の賃金アップで終わってしまいそうです。こうなると、結論として、やはり当面の間は自分たちで値上げに対抗するしかなさそうです。

値上げラッシュには知恵と創意で徹底抗戦!

頭の痛い値上げですが、手も足も出ないかというと答えは「ノー」。食品やエネルギーといったものは努力や工夫次第で節約できるものです。

まずは生活全般、ライフスタイルを見直してみましょう。

食事を例に挙げると、子どもが大好きな鶏の唐揚げやトンカツなどの揚げ物。揚げるとき、油を大量に使っていませんか? 油を半分や3分の1に減らしてみましょう。それでも十分おいしく揚げることができるはずです。あるいはいっそのこと油で揚げずに作ってしまう。最近のオーブンや電子レンジにはそうした「油を使わない揚げ物」を作る機能を持ったものが少なくありません。

ポイントは、ためこんでばかりいないで積極的に使いましょう。「32ポイント(32円分)しかない」といったときでも、単品の買物なら1割以上の実質的な値引きになります。

例えば、ミスタードーナツではこの3月からドーナツ単品で各10円の値上げを実施します。でも、もし同店で使える楽天ポイントなどのポイントがあれば、消費税込み価格から32円分のポイント利用分が差し引かれます。これなら値上げも気にならないのでは?

電力やガスも自由化の時代。なんとなく大手と契約したままという人は、より安いプランを提供している会社をさがしてみるのも一手です。

値上げを嘆く前に、やれることにはなんでも挑戦してください。そこから新しいライフスタイルが生まれるかもしれません。

文・中野渡淳一

文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。