普通徴収の人にとって、毎年6月は住民税の納税通知書が送られてくる季節です。給与から天引きされているサラリーマンの方も、「もう少し住民税を安くする方法はないか」と考えることが多いのではないでしょうか。
今回の記事では住民税の仕組みに加え、節税方法についても解説しています。
【住民税の基本】納付方法・納付期限
住民税の納付方法には、会社員や公務員が該当する「特別徴収」と、自営業者などが該当する「普通徴収」の2つがあります。
特別徴収 | 普通徴収 | |
対象 | 会社員、公務員など | 自営業者、個人事業主など |
支払い方法 | 給与からの天引き | 納税通知書 (金融機関やコンビニ窓口など) |
普通徴収の場合、一括(納付期限:6月末)または分割(第1期納付期限:6月末、第2期納付期限:8月末、第3期納付期限:10月末、第4期納付期限:翌年1月末)のどちらかで納税します。
住民税=「所得税割+均等割」です。
所得割とは、前年の所得金額をもとに計算されたもの。均等割は、所得に関係なく負担額が決まっているものです。
つまり、住民税を節税したいなら「所得割」のルールについて学ぶ必要があります。
住民税を控除する方法は、「所得控除」「税額控除」の2種類です。
- 所得控除:住民税の額を決めるための「所得」を減らすためのもの
- 税額控除:所得税から一定額を引くためのもの
どちらも住民税を節税することに変わりはありません。「先に減らすか」「後に減らすか」の違いだと考えるとわかりやすいでしょう。
所得控除14種類をカンタンにおさらい
まず知っておきたいのは、14種類の所得控除です。中でも注目は「iDeCo」。支払った金額が全額所得控除となるため、節税になると人気です。
控除 | 内容 | |
雑損控除 | 災害・盗難・横領などで一定の損失を受けた場合 | 次の2点のうち、いずれか多い金額 ・(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10% ・(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円 |
医療費控除 | 1年間に支払った医療費 | 次の2点のうち、いずれか多い金額 ・実質の医療費-10万円 ・実質の医療費-総所得金額等×5% |
セルフメディケーション税制 | 健康診断の受診などの条件を満たしている人が、年間1万2千円を超えて特定一般用医薬品等を購入した場合 | 購入費用のうち、1万2千円を超える額(最大、年間8万8千円) ※医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか片方のみ利用可能 |
社会保険料控除 | 1年間に支払った社会保険料(健康保険料・国民年金保険料・介護保険料など) | 支払った金額 |
小規模企業共済掛金控除 | 小規模企業共済等掛金、iDeCoの掛金など | 支払った全額 |
生命保険料控除 | 生命保険料、共済掛金の支払い分 | 最高12万円(支払い額により別途計算) |
地震保険料控除 | 家屋や家財等の地震保険料の掛金(常時住んでいる家であることなど条件あり) | 最高5万円(支払額により別途計算) |
障がい者控除 | 本人または同一生計配偶者、扶養家族が障がい者である場合 | 27万円 特別障がい者:40万円/人 同居特別障がい者:75万円/人 |
寡婦控除 | 本人が寡婦の場合 | 27万円 |
ひとり親控除 | 本人がひとり親の場合 (かつ合計所得金額が500万円以内) | 35万円 |
勤労学生控除 | 本人が勤労学生の場合 | 27万円 |
配偶者控除 | 控除対象配偶者がいる場合 | 13~38万円(申告者の所得により異なる) 70歳以上の配偶者の場合、計算別途(16~48万円) |
配偶者特別控除 | 合計所得1,000万円以下かつ生計を同じとする配偶者がいる場合 | 最高38万円(申告者と配偶者の所得により異なる) |
扶養控除 | 控除対象扶養親族がいる場合 | 38~63万円(年齢、同居の有無により異なる) |
基礎控除 | 原則、住民税納税者全員に当てはまる(ただし合計所得金額が2,500万円超の人には適用されない) | 0~48万円 |
※基本的に、上記は本人または本人と生計を同じくする親族が対象です。
サラリーマンの場合、会社が行ってくれる年末調整で使えるのは、次の4点です。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
一方、次の控除を利用したい場合は、自分自身で確定申告をしなければいけません。
- 医療費控除(セルフメディケーション税制も同様)
- 雑損控除
確定申告を忘れてしまうと、節税になりませんのでご注意を!
サラリーマンも使える「税額控除」
税額控除1つ目は、ふるさと納税を行い、寄附金控除を受ける方法です。
例えば、1万円の寄付をした場合「10,000―2,000=8,000」、つまり8,000円が寄附金控除額です。
控除には「基本分」と「特例分」の2種類があり、今回の例でいえば、8,000円にそれぞれ決まった税率をかけます。
寄付をした自治体が5ヵ所以内であれば、「ワンストップ特例制度」を使うことができます。この場合は、確定申告は必要ありません。
ただしワンストップ特例制度を使う場合、所得税からの控除はありません。実際にふるさと納税をした翌年の住民税に控除が適用されるため、間違わないようにしましょう。(例:令和3年にふるさと納税→令和4年の住民税に控除)
2つ目は、住宅借入金等特別控除です。「住宅ローン控除」の名称の方が、馴染みがある人も多いでしょう。一定の要件を満たした場合、住宅ローンの年末残高の合計額等から計算した金額を、所得税額から控除することが可能です。
住民税に関するよくある質問
Q.住民税は扶養控除でいくら安くなる?
A.扶養控除の金額は、扶養している親族の年齢により異なります。住民税と所得税では、控除額が異なるため注意してください。
区分 | 住民税 | 所得税 |
一般(16歳以上19歳未満) | 33万円 | 38万円 |
特定(19歳以上23歳未満) | 45万円 | 63万円 |
一般(23歳以上70歳未満) | 33万円 | 38万円 |
老人(70歳以上) | 38万円 | 48万円 |
同居老親等(老人扶養親族のうち、同居) | 45万円 | 58万円 |
住民税の税率は10%のため、最大で控除額の10%が節税できると考えるとわかりやすいでしょう。
(例)
18歳高校生1人、75歳の親1人(同居)の場合、33万円+45万円=78万円です。つまり、住民税が最大78,000円減額になる計算です。
Q.1年間の所得が48万円なら、住民税がゼロ円になるのはなぜ?
A.2020年1月、基礎控除額が48万円に変更されました。その結果、48万円―48万円=課税所得が0円に。同時に住民税も0円になるというわけです。
Q.年収1000万なら住民税はいくら?
A.同じ年収1000万円でも控除を受ける内容により異なるため、一概にいくらということはできません。ここでは、専業主婦の妻、高校生の子どもがいるケースを例に挙げてみました。
- 給与所得控除(195万円)
- 配偶者控除(33万円)
- 扶養控除(33万円)
- 基礎控除(43万円)
- 社会保険料控除(130万円)
1000万円 ―(195万+33万+33万+43万+130万)=課税所得566万円
556万円×10%+(1500円+3500円)=56万1000円
毎月給与から天引きされる住民税は、46750円ということになります。
上記は、ふるさと納税やiDeCoなど、住民税の節税につながることを何も行っていない状態です。節税したい人は、まずはふるさと納税から始めてみませんか?
住民税まとめ:まずはふるさと納税で節税を
社会福祉や子育て支援、道路など私たちの身近な暮らしをより良くするために役立っている住民税ですが、年単位で考えると、決して安い金額とは言えません。物価高や給与所得の減少など、明るい話題が少ない今日この頃。法律のルールを守り、ふるさと納税などを活用し、賢く節税していきましょう。
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。