ここ数年、よく耳にする「SDGs(持続可能な開発目標)」。なんとなく知っているつもりになっているだけ、ということはありませんか? この機会にもう一度おさらいしておきましょう。
SDGsとは?その意味と目標を確認
SDGsとは “Sustainable Development Goals” の略。日本語だと「持続可能な開発目標」となります。
現在の世界には、新型コロナウイルスによる感染症やウクライナ戦争はもちろん、気候変動や貧困、人権問題等さまざまな問題があります。こうした問題は放置しておくと社会や地球環境を悪化させ、人々が安心して暮らしていける世の中ではなくなってしまう可能性があります。
こうした諸問題を世界中の人々の力で2030年までに解決の方向へ持っていこうという取り組みがSDGsです。
元となったのは2000年9月に国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」です。2015年には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として国連サミットの全加盟国が合意。2017年には世界のリーダーが集まる「ダボス会議」でSDGsは経済にも効果があることが確認され、社会を発展させるキーワードとして世界中に広まりました。
これに合わせて日本でも2017年に政府がSDGsに取り組む企業や団体を表彰する「ジャパンSDGsアワード」をスタート。国が号令をかける形でSDGsを推進しています。
SDGsの17の目標
国連では「持続可能な開発目標」として以下の17の目標を掲げています。
- あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 飢餓をゼロに
- あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
- 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
- レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
- 国内および国家間の不平等を是正する
- 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
- 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
- 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する
こうした目標に加え、169の具体的なターゲットを設定。これらを「誰一人置き去りにすることなく」実現する。それがSDGsのめざすところとなっています。
SDGs 日本の取り組みは?
現在、SDGs達成への取り組みは世界中で進んでいます。コロナ禍やウクライナ戦争など、それを妨げる事象や逆行するような動きはあるものの、脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現やESG経営などとともに21世紀のトレンドとして各国の政府や民間企業、団体、個人が目標達成への努力や挑戦を重ねています。
日本でも、前述したようにSDGs達成に向けて制度改正や新しい事業への取り組みが進められています。
省庁では内閣府や金融庁、消費者庁、法務省、総務省、文部科学省、環境省、防衛省などがそれぞれの領域で目標達成のための指針を設定。制度化や会議の開催などを行っています。
またJICA(国際協力機構)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)、JAMSTEC(海洋研究開発機構)などの独立行政法人や、ユニセフ(国際連合児童基金)、UNDP(国際連合開発計画)、日本ユネスコ国内委員会 国際連合広報センター、日本青年会議所などの国際団体、経団連(日本経済団体連合会)などもさまざまなSDGs関連事業に取り組んでいます。
これに合わせて民間企業や団体もSDGs達成に向けて各種の事業や施策を展開、まさに国を挙げての取り組みとなっています。
身近なところでいうと、レジ袋の有料化やペーパーレス化など。こうした脱プラスチックの動きはSDGs達成への取り組みのひとつです。SDGsは大きな組織が取り組むだけではなく、個人の生活にまで浸透しているものなのです。
SDGs 日本に対する評価は?
日本もかなり頑張っている感じがするSDGs。では世界の他の国々と比較するとどうなるでしょう。2016年以来、毎年世界の国々のSDGsへの取り組みを評価している「サスティナブル・ディプロップメント・レポート(Sustainable Development Report)」の2024年版(2024年6月発表)では、日本の達成度は対象国165カ国中の18位となっています(2024年は19位)。
18位というのは悪くないはないような気もしますが、正直、もう少し努力が必要な気がします。
参考までに1位から17位を見てみると、1位がフィンランド、2位はスウェーデン、3位がデンマークとトップ3を北欧諸国が独占しています。
4位はドイツ、5位はベルギー、6位はオーストリア、7位がノルウェー、8位がフランス、9位はスロベニア、10位がエストニア、以下、オランダ(11位)、チェコ(12位)、アイルランド(13位)、クロアチア(14位)、ポーランド(15位)、スイス(16位)、イギリス(17位)とつづき、イギリスの次に日本がきます。
アジアではトップ20にランクインしているのは日本だけ。残りはすべてヨーロッパ諸国が占めているといった構図です。ちなみにアメリカっは32位、中国は57位です。ロシアは46位ですが、今年(2024年)は転落が予想されます。
過去における日本の最高位は2017年の11位。このときもトップ10に入ることはできませんでした。
SDGs 日本の評価が低い理由
同レポートでは、17の目標ごとにその国の達成度が示されます。それを見ればその国の課題が一目でわかります。日本が毎年のように指摘されているのは、気候変動対策、海洋保全、ジェンダーや社会の不平等などの分野です。弱点となっているこうした分野への取り組みを強化しないことに、はトップ10に入るのは難しそうです。
日本の「弱点」「欠点」である「気候変動対策」。これは地球温暖化に直結している話です。この分野においては日本は他のランキングでもおしなべて評価が低く、ドイツのNGOジャーマンウォッチが発表した「気候変動パフォーマンス・インデックス(Climete Change Performance Index 2022)」では温室効果ガス主要排出国60カ国中の45位となっています。
日本人としては、これだけSDGsだ脱炭素だと声を合わせているのになぜこんなに評価が低いのだろうと思ってしまうのですが、問題はまさにそこにあります。この種のレポートが常に指摘しているのは「日本は具体的な目標設定や取り組みが足りない」ということ。早い話、かけ声ばかりで行動がともなっていないというのです。
とくに日本はいまだ二酸化炭素を大量に排出する火力発電に頼るところが大きく、世界の人たちに「日本は本当にやる気があるのか?」と疑いの目を向けられてしまっています。もちろん、そこには東日本大震災の影響で原発を稼働しにくいといった日本特有の事情などがあります。けれど、世界から見るとそれすら努力不足になってしまうのかもしれません。
SDGs 個人できることは?
発電事業や脱炭素といったものは自分ひとりではなかなか変えることが難しい。それでも個人単位でできることはさがせばあります。
日頃からマイバックを使うこと、電気を節約すること、ゴミを減らすこと、クルマの利用を控えて公共交通機関や自転車、徒歩などに切り替えること。これらはすべてSDGs達成に役立つことです。
ジェンダー差別をなくし、社会を公平にしていく。これも個人レベルで取り組めることです。他者に対して優しい自分になる。自分と違う人も受け入れることのできる自分になる。そうすることで社会は変わります。翻ってみれば、個人が変わらない限り、社会は変わらないのです。
SDGsは目標達成まであと8年です。いまは「行動の10年」であり、取り組みを加速させなければならない時期を迎えています。
世界の中でSDGsをリードする日本になってほしい。そんな素敵な日本をめざして一人一人が意識を変えて取り組んでいく必要があります。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線及び最新トレンドの記事を中心に執筆。