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個人事業主・フリーランスの年金はどうなる?制度と対策を知ろう

個人事業主やフリーランス、自営業者の場合、会社員のように退職金や厚生年金がありません。そのため老後について不安を感じる人も多いもの。本記事では、国民年金ならいくらもらえるのか、そして老後資金を準備するにはどうすればいいのか、具体的な方法について解説します。

個人事業主・フリーランスが受け取れる「国民年金」

おそらく最も気になっている「個人事業主が年金をいくらもらえるのか?」の答えは、令和3年度の場合、月額65,075円です。日本年金機構のサイトでは、厚生年金との比較の表が掲載されています。

 令和3年度(月額)
国民年金(老齢基礎年金(満額))65,075円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)220,496円

厚生年金は、平均的収入で40年間就業した場合の金額のため、全ての人に当てはまるわけではありません。ただ、国民年金の金額を2倍(仮に夫婦両方とする)にしても、130,150円。夫婦の場合、月額にして約10万円の差があります。

また上記はあくまで40年間、満額を支払った場合の計算です。すでに未納期間がある人は、上記よりも年金額が減少します。

Q.個人事業主は、国民年金保険料を払わないという選択肢もある?

国民年金の保険料は、収入に関係なく年度ごとに決められています(令和4年度は16,590円)。個人事業主やフリーランスは、収入が安定しないこともあり、払うのが難しいといった声も。

ただ、保険料の支払いは“義務”です。滞納による財産差し押さえの可能性もありますので、必ず払うようにしましょう。

所得が少なくて支払えないときは「免除制度」を使おう

一定金額以下の所得の場合は、「保険料免除制度」の申請書を提出します。承認されると、保険料の納付が免除になります。免除の額は全額、4分の3、半額、4分の1の4種類です。

20歳から50歳未満であれば「保険料納付猶予制度」を申請することもできます。この場合は、承認されれば保険料の納付が猶予されます。

Q.申請するメリットは?

A.免除期間も年金の期間に加算され、受け取りの際にも2分の1を受け取ることができます。保険料免除・納付猶予を受けた期間中の事故、ケガなどが発生した場合も、障害年金や遺族年金の受け取りが可能です。

「手続きなんて面倒」と放置してしまいがちですが、実際の手続きはとても簡単です。私も過去に手続きをしたことがあります。

必要な書類は次の通りです。

  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • 所得の申立書

ダウンロード先:日本年金機構ホームページ

市役所・区役所や町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所、もしくは郵送にて手続きが可能です。

個人事業主が自分の年金をつくる3つの方法

国民年金以外に、自分の年金を準備したい人向けに3つの方法を紹介します。

自分でつくる老後資産1:国民年金基金

国民年金基金は、国民年金に上乗せする年金のことです。加入資格があるのは、個人事業主・フリーランス・自営業者など「国民年金の第一号被保険者」のみ。

メリット

  • 掛金が全額社会保険控除料になる
  • 同一生計の配偶者、親族の掛金も全額所得控除の対象となる
  • 一生涯受け取り可能
  • プランニングの自由度が高い(口数制)

国民年金基金は「口数制」です。口数制の内容について、簡単に説明しておきます。

1口目は「終身A型」「終身B型」のいずれかを選びます。1口目は、基本的に減額できません。

 年金受け取り期間保証期間
終身A型65歳から死亡まで65歳から15年間
終身B型65歳から死亡まで保証期間なし

2口目以降は、次の7種類から選びます。加入した後も、掛金・年金の額は、工数単位で増減可能です。

 年金受け取り期間保証期間
終身A型65歳から死亡まで65歳から15年間
終身B型65歳から死亡まで保証期間なし
確定Ⅰ型65歳から15年間65歳から15年間
確定Ⅱ型65歳から10年間65歳から10年間
確定Ⅲ型60歳から15年間60歳から15年間
確定Ⅳ型60歳から10年間60歳から10年間
確定Ⅴ型60歳から5年間60歳から5年間

※確定年金の年金額は、終身年金の年金額を超えることはできません。

細かなルールはあるものの、掛金が全額社会保険控除料になること、自分でプランニングできることは、大きなメリットと言えるでしょう。

民間個人年金もありますが、その場合、掛金の全額が保険料控除になるわけではありません。これはやはり、国の制度ならではです。

国民年金基金のデメリットについても説明しておきます。

デメリット

  • 減額はできるが脱退はできない
  • 基金が解散する可能性もある

一番大きなデメリットとして言われるのが、脱退ができないことです。ただ、口数を減らしたり、一時中断を申し出たりすることは可能です。将来受け取る年金は減額されますが、「手元に置いておく、貯金するといったことは苦手」という人にとっては、脱退できないことは、メリットになる可能性もあります。

また公式サイトには、基金が解散した場合の取り扱いについての記載があります。財政状況が悪化すれば、解散となる可能性がある点も理解しておきましょう。基金の解散が決まった場合、その時点での残余財産額を全員で分配することになります。これまで支払った掛金の額を下回る可能性がある点はデメリットといえるでしょう。

自分でつくる老後資産2:付加年金

付加年金は、毎月の国民年金保険料+400円を払うことで、将来の年金額に上乗せされる制度です。受け取り時には、毎年「付加保険料を納付した月数」×「200円」の金額が加算されます。

複雑ですが、もっと簡単に言うと、払い込んだ保険料の2分の1の額を、将来の年金に“毎年”加算されるというわけです。

20歳から60歳まで12ヵ月× 40年を払い込んだ場合、保険料は192,000円。実質の受け取り分は、年間96,000円です。

40歳から60歳まで納めた場合は、払い込み保険料96,000円、受け取り分は年額48,000円となります。始めた年は関係なく、約2年で元が取れる計算です。

付加保険料も、全額所得控除の対象です。一度申し込めば、国民年金と同じタイミングで支払うことになるため、うっかり払い忘れるといったことはありません。

デメリットをあえて挙げるとすれば、65歳までに死亡した場合、付加年金保険料は返還されない点や、受給開始から2年以内に死亡した場合、払込分が受け取り分を上回ってしまうことです。

ただ、自分の寿命は誰にもわからないことであり、平均寿命から考えると、プラスになる可能性が高いです。

ただ、付加保険料と国民年金基金は、両立することができません。あらかじめ、どちらを選ぶか考えておきましょう。

自分でつくる老後資産3:iDeCo(個人型確定拠出年金)

最後は、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。つみたてNISAと比較されることが多いiDeCoですが、“老後資産”を作る目的であれば、つみたてNISAよりも優れていると感じます。

簡単に言いますと、iDeCoは自分で資金を運用し、自分の年金を準備する制度です。個人事業主、フリーランスの場合は、積立金額を5,000円〜68,000円(月額)の中から1,000円刻みで選ぶことが可能です。運用商品に関しても、定期預金や投資信託など、リスク・リターンを考慮し、自分で選ぶことができます。

iDeCoのメリット・デメリットは次の通りです。

メリットデメリット
・掛金は全額所得控除
・投資で得た運用益が非課税
・受け取る時にも税制優遇あり
・運用手数料がかかる
・原則60歳まで解約できない

原則60歳まで解約できない点をデメリットに記載していますが、老後資金を目的とするのであれば、解約できないことはメリットとも言えます。

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個人事業主の年金についてよくある質問&まとめ

Q.個人事業主の年金はどうなる?どれ?

A.何も準備をしなければ、受け取れるのは国民年金のみです。

Q.個人事業主は年金、いくらもらえる?

A.国民年金を40年間満額掛けたとして、月額65,075円です。ただし、この数字は令和3年度の場合であり、将来的には変動が予想されます。

Q.個人事業主の国民年金の支払いはいくら?

A. 令和4年度の国民年金保険料は、月額16,590円です。前納制度を利用すると、少しオトクになりますよ。

個人事業主の場合、会社員以上に老後に向けた準備が必要だと言うことがお分かりいただけたのではないでしょうか。もちろん、現状で精一杯!という人もいるかもしれませんが、できる範囲のことから始めていくことをおすすめします。

中でも付加年金は毎月400円の負担で始めることができます。約2年で元が取れることを考えると、コスパも良いと考え、私も加入しています。

自分でつくる年金には、今回ご紹介したもの以外にも、さまざまな方法があります。情報収集し、自分に合った方法を見つけてみてください。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。