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個人事業主の開業届の必要書類は?書き方や提出の注意点もわかりやすく解説!

個人事業主・フリーランスとして開業届を出す場合、必要書類や書き方など気になることは多いもの。今回の記事では、具体的な書き方や開業届とともに提出しておいた方がいい書類について解説します。開業届を出すメリットについても合わせて紹介していますので参考にしてください。

【個人事業主の開業届】必要書類

個人事業主が開業届を提出する場合「個人事業の開業・廃業等届出書」と、身元確認書類が必要です。

マイナンバーカードをすでに所有している場合は、マイナンバーカードがあればOKです。お持ちでない場合は、マイナンバー確認書類(通知カードや住民票記載事項証明書、住民業の写しなど)と本人確認書類を持参します。

開業届を出すことで「青色申告」をする権利が得られます。もし、青色申告を考えているのであれば、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出しておきましょう。

青色申告には、次のメリット・デメリットがあります。

青色申告のメリット青色申告のデメリット
・最大65万円の青色申告特別控除がある
・青色事業専従者給与(家族への給与を経費にできる)
・最大3年分、赤字の繰越ができる
・「家事按分」制度が使える
・事前に申請書を提出しておかないと青色申告ができない
・記帳は複式簿記(手間がかかる)
・所得48万円以下の年も含め、毎年確定申告が必要

私も個人事業主として青色申告をしていますが、青色申告特別控除の恩恵は大きいです。また、自宅兼事務所の家賃や光熱費に関しても、事業分の比率のみ経費として申告できる「家事按分」も大きなメリットです。法人にはない制度のため、個人事業主の場合は、必要に応じて使うことをおすすめします。

さらに家族を雇用し給与を支払う場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を、アルバイトや社員を雇う場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を一緒に提出しておくとスムーズです。

開業届の入手方法・書き方

「開業届はどこでもらえる?」「どうやって書けばいい?」など、開業届に関する疑問が解消できるよう、順を追って説明します。

1:開業届を入手

開業届は、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることができます。印刷が難しい環境であれば、直接税務署に取りに行くことも可能です。

国税庁 [手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

2:開業届を書く

開業届を手に入れたら、実際に埋めていきます。

提出先と日付提出先→提出先(納税地管轄)の税務署名 日付→提出日
納税地自宅または事務所の住所を記載 基本的に納税地=住所 電話番号は固定電話・携帯電話どちらでもOKです
上記以外の住所地・事業所等納税地は自宅住所、別に事務所を構える場合などは記入します
氏名・生年月日自分の名前、生年月日を記入
個人番号マイナンバーカードや通知カードにて確認の上記入
職業事業内容に基づく職業を記入
屋号なければ空欄のままでOK
届出の区分新規事業の場合は「開業」に○
所得の種類家賃収入など不動産から所得を得る場合は「不動産所得」、山林から所得を得る場合は「山林所得」、そのほかは「事業(農業)所得」に○
開業・廃業等日開業日を記入
事業所等を新増設、移転、廃止した場合新規開業の場合は、空欄のままでOK
廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合新規開業の場合は、空欄のままでOK
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無開業届と共に「青色申告承認申請書」「課税事業者選択届出書」を提出する場合は「有」、提出しない場合は「無」を選択
事業の概要事業内容を記入(具体的に)
給与等の支払いの状況従業員を雇用する場合のみ記入 専従者→家族従業員 使用人→家族以外の従業員
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無給与を支払う人が、常時10人未満の場合、源泉所得税の支払いを通常の毎月10日から、年に2回まとめての支払いに変更可能 まとめて納付を希望する申請書を提出する場合は「有」を選択
給与支払を開始する年月日従業員への給与支払いを始める年月日を記入
関与税理士顧問弁護士がいる場合は記入、いない場合は空欄

多くの人が悩むポイントは「職業」「事業の概要」ではないでしょうか。この部分には、特定のルールはないため、余計に悩んでしまう人もいるでしょう。ここで参考になるのが、総務省が定めている「日本標準産業分類」です。

職業が重要な理由

開業届に書いた職業は、確定申告書にも記入することになります。ここでの記入内容が、個人事業税にも関わってくるため、注意しましょう。

個人事業税とは、個人が営む事業のうち、地方税法等で定められた70の業種に対してかかる税金です。事業内容によって税率も異なりますが、税金を下げたいからと虚偽の業種を書くのは絶対にNGです。

下記に、事業税の一例を紹介しています。

区分税率事業の種類(一部)
第1種事業5%物品販売業、製造業、飲食店業など
第2種事業4%畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業5%医業、コンサルタント業、デザイン業など
第3種事業3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業など

3:開業届を提出

開業届は「管轄の税務署に郵送」「管轄の税務署に直接出向く」のどちらかの方法で提出します。税務署の受付時間は、8時半〜17時まで。税務署の閉庁日や受付時間外にも「間外収受箱」に投函することで提出が可能です。

郵送の場合、必要書類を添付する必要があります。国税庁「番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い」のページから、「本人確認書類(写)添付台紙」のPDFをダウンロードし、活用すると便利です。

ここまで、用紙を印刷し記載・提出する方法を紹介しましたが、マイナンバーカードを持っている場合、「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を使って開業届の電子申告が可能です。

開業届の控えは絶対もらっておくべき!

開業届を提出する際、忘れてはいけないのが「控えをもらうこと」です。控えに関しては、税務署が自発的に渡してくれることはないと考えておいた方がいいです。少なくとも、私は控えの重要性を知らず、再発行(正式には少し異なります)をすることになりました。

開業届の出し方により、控えの受け取り方が異なります。

郵送する場合

開業届を提出する際に、開業届の控えと、切手を貼った控え用の返信用封筒(自分の住所・氏名を記入)を同封しておきます。

持参する場合

開業届の控えを持参し、提出の時点で受付にて受領印を押してもらいます。

e-Taxを使う場合

郵送・持参とは異なり、書面での控えを受け取ることはできません。自分でe-Taxソフトの「受信通知」と、送信済の開業届の申告データをプリントアウトし、保存しておきます。

開業届と「個人事業開始申告書」はどう違う?

「開業届」「個人事業開始申告書」共に、事業を始めたことを官公庁に届け出るための書類です。ただし、それぞれ関係する税金が異なるため、提出する場所も違います。

  • 開業届→所得税(国税)
  • 個人事業開始申告書→個人事業税(都道府県税)

各都道府県税事務所だけに提出するケースと、各都道府県税事務所と市区町村役場の2ヵ所に提出するケースがあります。

個人事業開始申告書の入手方法・書き方

個人事業開始申告書は、各都道府県により多少型式が異なります。「個人事業開始申告書」+「お住まいの都道府県」にて検索すると、ダウンロード先が出てきます。

基本的な記入内容は次の通りです。

  • 事業所(事務所)の住所・電話番号
  • 事業所(事務所)名称・屋号
  • 事業の種類
  • 事業主の住所・氏名
  • 事業主のマイナンバー
  • 開業日
  • 提出日

屋号は、必ず決めなければいけないものではありません。ない場合は、空欄のままにしておきます。

個人事業開始申告書の申告期限は、都道府県により異なります。

(例)

  • 東京都:事業の開始の日から15日以内
  • 大阪府:自治体により異なるが開業後速やかに提出

個人事業開始申告書を提出しないとどうなる?

開業届に関しては、広く知られていますが「個人事業開始申告書」は、存在を知らなかったという人も多いです。実際、個人事業主として活動している人の中にも「提出していない」「知らなかった」という声も。

開業届同様、提出しなくても罰則はありません。「それなら提出しなければ事業税を払わなくていいの?」と思う人がいるかもしれませんね。残念ながら、そんなことはなく、確定申告の際に、都道府県税事務所に自動的に通知されます。

開業届に書いた「職業」や確定申告書に書く「職業」と、確定申告書の内容から、事業税は自動的に計算されます。申告書を提出した・していないに関わらず、地方税法等で定められた70の業種に当てはまる場合は、納税通知書が届きます。

「出しても出さなくても一緒」と思うかもしれませんが、記入には手間も時間もかかりません。開業届と一緒に提出準備を進めておくことをおすすめします。

個人事業税の計算式は、次のとおりです。

所得金額-各種控除額)×税率=個人事業税

ここでの所得金額には、青色申告特別控除が適用されないため注意が必要です。また、各種控除額には、290万の事業主控除が入るため、個人事業税は、事業所得が290万円以下の場合は発生しません。

開業届を出すメリット

開業届は、実際のところ事業開始から1ヵ月以内の提出義務があるのみで、提出しないまま事業を営んでいても罰則はありません。しかし、提出することで得られるメリットも複数あります。

1: 青色申告ができる

個人事業主の場合、青色申告または白色申告を選び、確定申告を行います。ここで青色申告をしたいならば、開業届は必須です。

前述していますように青色申告は、最大65万円の控除や家族への給与を経費にできるなど、節税の面から見ても大きなメリットがあります。青色申告をしたい場合や、家族への給与を経費にしたい場合は、開業届提出時点で次の2点の書類を出しておくとスムーズです。

  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出

2:経営のセーフティネットに申し込める

個人事業主にとって「経営がうまくいくかどうか」の悩みは尽きないものです。また、会社員と違い、退職金はありませんから「老後の退職金代わりの積み立てをしておきたい」と思う人もいることでしょう。

開業届を出しておくことで、セーフティネットかつ節税にもつながる「小規模企業共済」に申し込むことが可能となります。小規模企業共済に申し込めるのは、個人事業主だけでなく、小規模企業の経営者なども含まれますが、何より大きな点は、起業したばかりで事業収入がない状態でも申し込みができる点です。

  • 掛金は1,000円〜70,000円まで、500円単位で決められる
  • 自由に減額・増額できる
  • 掛け金の全額が所得控除できる
  • 退職金代わりに貯められる
  • 掛金の範囲内で貸付制度が利用できる

デメリットとしては12ヵ月未満の解約の場合、掛け捨てリスクが発生することや、20年以内の任意解約では元本割れすること、受け取り時点では課税されることなどが挙げられます。

解約リスクを考えると、開業と同時に入らず、事業が軌道に乗ってから加入という方法もあります。個人事業主である私も、その方法を選択しました。

開業届を出すことで信用度が高まる

個人事業主の場合、開業届を出すことによるメリットは大きいと考えます。今回紹介したメリット以外にも、屋号で銀行口座を開設できる、創業支援金などの補助金を使用できるなど得られる恩恵は大きいものです。億劫がらず、開業届を出すようにしましょう。

文・柚月朋子

フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。