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助成金や雇用調整助成金の申請は専門家に依頼するべき?

政府は、国民が経済的に豊かに暮らせるように、国内総生産(GDP)を拡大するべく、様々な施策を実施しています。その一環として、事業者に支援金を援助することで、設備投資や従業員への投資を促進させ、事業を発展させることにより、労働者すなわち一般消費者の資金を増やすという狙いがあるのです。

この支援金は、大きく2つに分類できます。1つは「助成金」です。もう1つは「補助金」と呼ばれるものです。今回は、助成金にスポットを当て、その基本的な性格や申請方法、申請代行を依頼する専門家などについて解説します。また併せて、代表的な助成金についても、いくつかご紹介しましょう。

助成金の基本情報

これは、補助金とも共通したことですが、2点の特徴があります。

1点は、基本的には返済義務のない資金である、ということです。つまりは、「もらえるお金」という訳ですね。

ここが、金融機関等からの融資とは、決定的に違う点です。ではなぜ、国や地方公共団体は、このような都合のよい制度を設けているのでしょう。それは、自ら立案した政策の目的に合致した事業に対して資金援助し、政策を推進することが目論見だからです。

ですから、政策の意図を理解していれば、毎年、どのような助成金がもらえそうか、おのずと見えてきます。

助成金独自の性格についても、見ておきます。

まずは財源です。

例えば厚生労働省が支給する雇用・労働関連の助成金は、企業が支払っている雇用保険料、そして、一部は一般会計から受け入れた資金から捻出されます。従って、この制度を利用できる企業も、雇用保険の運用事業の事業主ということになります。また、どの雇用関係助成金も、共通して以下のような企業には助成金の受給資格がありません。

・不正受給をしてから3年以内に支給申請をした事業主、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした企業

・支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない企業(支給申請日の翌日から起算して2ヵ月以内に納付を行った企業を除く)

・支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった企業

など

次に、採択基準です。

基本的に補助金とは違い、厚生労働省系の助成金は、受給しやすいと言えます。これは助成金が、採用しづらい人材の雇用を促進する目的で設定されているからです。その事業所が、人材雇用に必要な条件さえクリアすれば、100%受給されます。ここが、補助金とは異なる点です。補助金は、申請書が受給条件を満たすだけではなく、事業計画の内容が厳しく審査されるのです。

助成金の申請手順

助成金の、実際の申請手順についても確認しておきましょう。

助成金の申請では、実施計画申請書の提出と支給申請の2つの手続きが必要な場合があります。

  • 実施計画申請書の提出

助成金の支給要件に適った実施計画を策定し、提出します。

  • 助成金事業の実施

実施計画を実行に移します。

  • 支給申請

助成金の支給を、申請します。

  • 助成金の支給

支給要件を満たしていれば、助成金が支給されます。

小項目2:助成金申請を専門家に頼むには?

では、助成金の申請にあたっては、どのような専門家に任せればよいのでしょうか。

どのような専門家がいるか

書類の作成及び、申請代行に関しては、専門家に依頼するのが一般的です。

中小企業診断士や税理士、行政書士や社会保険労務士など、いわゆる「士業」と呼ばれる人たちが

存在します。

この中で、社会保険労務士は、労働保険や社会保険の専門家です。厚生労働系の助成金の財源は、前述したように雇用保険等であるために、その申請に関しては、保険に精通した社労士が相応しいとみなされているのです。

厚生労働省系の助成金の書類作成や申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。他の士業では、取り扱うことはできません。これは社労士法により、以下のように規定されています。

「労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成及び行政機関への提出等は、社労士法により、社労士の業務と定められており、社労士又は社労士法人でない者は、他人の求めに応じて報酬を得て、それらの業務を業として行ってはいけません。」

全国社会保険労務士会連合会ホームページ

申請代行の相場はいくら?

社労士が助成金の申請代行を請け負った場合、通常は成功報酬型が多いようです。同じ成功報酬でも、報酬に着手金が入っているか、また、その社労士が企業との間に顧問契約を結んでいるかどうかによって、金額は変わってきます。

助成金申請代行の報酬が、着手金を含まない場合は、成功報酬の相場は、支給された助成金の10~15%とされています。一方、報酬が着手金と成功報酬とで構成されているなら、着手金は2~5万円、成功報酬は支給された金額の10~15%ぐらいです。

社労士の報酬形態は2通りで、顧問契約を結んでの月額制と、単発でのスポット契約があります。

助成金の申請代行、就業規則の作成などはスポット契約になります。自社が社労士と顧問契約を結んでいるのなら、助成金が支給された際の成功報酬は、5~10%程度です。

主な助成金

最後に、代表的な助成金について解説します。

雇用調整助成金

急激な景気の変動、産業構造の変化により、事業活動の縮小を強いられた事業主が、一時的な休業等や出向によって、労働者の雇用維持を図る時、休業手当や賃金の一部を助成する制度です。助成内容は、休業を実施した場合の休業手当、あるいは教育訓練を実施した際の賃金負担総額、出向を行った時には出向元事業主の負担額に対する助成がなされます。大企業であれば1/2、中小企業なら2/3です。対象労働者1人当たり8,265円が上限で、支給限度日数は1年間で100日、3年間で150日です。

雇用調整助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促すため、正社員化、あるいは処遇改善の取り組みを実施した企業に対し、助成する制度です。

助成額は、以下の通りです。

  • 有期契約労働者を正規雇用した場合

1人当たり570,000円<大企業の場合は427,500円>

生産性の向上が認められる場合は、720,000円<大企業の場合は540,000円>

  • 有期契約労働者を無期雇用した場合

1人当たり285,000円<大企業の場合は213,750円>

生産性の向上が認められる場合は、360,000円<大企業の場合は270,000円>

  • 無期雇用から正規雇用に転換した場合

1人当たり285,000円<大企業の場合は213,750円。

生産性の向上が認められる場合は、360,000円<大企業の場合は270,000円>

キャリアアップ助成金

まとめ:プロの力を借りて、自社にマッチした助成金を活用しよう

今回は、助成金の基本知識や特徴、申請代行にはどのような専門家が存在するか、などについて解説しました。

ご覧頂いたように、助成金の申請は、自社で行っても難しいことはありません。

ただ、厚生労働省系の助成金は、色々な種類があり、自社にあてはまる資金を探すのは一苦労です。専門家に申請代行を依頼することにより、申請に要する些末な事務処理から解放され、本業に専念できます。また、自社にメリットのある受給方法を、アドバイスしてもらえることもあります。