コロナ禍になり多くの企業が従業員に副業を推奨するなど、それまで副業を考えていなかった人にとっても、副業や起業、フリーランスでの活躍ということにリアリティが出てきたと思います。ただ、その場合も、「資金がない」「初期投資がない」というのは大きな問題です。
実際は、創業当時に限らず、 多くの場合、企業や個人事業主は事業運営にあたって、補助金や助成金を活用しています。
10万円などの小さなものから1000万円程度の大きなものまであるので、国や地方公共団体の助成金や補助金の存在を知っておくと良いでしょう。 しかし補助金用の事業計画書や各種資料の作成は非常に煩雑であり、経験の無い方はその複雑さには辟易し、頓挫してしまうこともあります。
今回は、補助金を見つけた際、誰に作成代行を頼めばいいのかをご説明します。
補助金の基本情報
国や地方公共団体は、政策を推進するために、政策目的に沿った事業を資金面で援助しています。この資金援助を、助成金・補助金制度と呼んでいます。
新型コロナウィルスの感染拡大により、疲弊している中小企業・小規模事業者の方々は、国が差し伸べてくれている援助に目を向け、自社の事業を見直すとともに、更なる競争力を付ける良い機会と捉えるところも多く、新型コロナウイルスに関連する補助金や助成金は非常に多く出ています。
そもそも政府は、国民が経済的に豊かな生活をおくるため、国民総生産(GDP)を拡大するべく、色々な政策を実施しています。その一環として、事業者に助成金・補助金を給付し、設備投資や従業員の能力開発等を促し、事業発展によって労働者、つまりは一般消費者の賃金を押し上げようという狙いがあるのです。
助成金・補助金に共通した特徴
助成金・補助金は、基本的に返済の義務はありません。いわば、「もらえるお金」ということになります。ここが、金融機関等からの借入れとは違う点です。
国や自治体は、国や自治体の政策目標に合致した事業を行う事業主を資金面で後押しします。
補助金の場合は、国民から徴収した税金などから資金が捻出されるため、費用対効果はもちろん、実現可能性・継続性が問われます。「5年で返すように」など、返済義務という足かせをつけることで補助した事業が潰れてしまっては、元も子もないのです。
また、助成金・補助金は、原則として後払いです。
給付の申請を行い、先に事業を実施し、後からかかった費用を「請求払い」するシステムのため、事業を遂行するために発生した費用は、事業者が立て替える必要があります。つまり、予め手元資金は用意しておかなければなりません。
補助金特有の特徴
助成金も補助金も、国や地方公共団体等が事業主を応援する事業という点では、両者に明確な相違はありません。しかし、採択基準には大きく異なる点があります。
助成金も補助金も、公募が開始されてから一定期間中に、申請書を提出します。助成金は、事業所が受給条件を満たしていれば、支給されると考えておいてよいでしょう。これに比べて補助金は、申請書類が形式的な要件を満たしているかに加え、添付した事業計画に対して審査が行われます。
審査では、提案された事業が補助金の目的と合っているか、および他の提案よりも政策の推進に貢献できるかについて見られます。従って、申請者が全員採択されるということはありません。実際に採択率が40%台程度になった補助金もあります。
申請すれば誰でももらえる助成金とは異なり、補助金は受給の難易度が高いのです。
補助金の申請代行は専門家に依頼するべき?
補助金の申請にあたっては、はじめに「採択」という関門がある、ということはお分かり頂けたと思います。だからこそ、どのくらいの難易度であるか、最初にイメージしておきましょう。
補助金の採択率
今回は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の採択率を例に取ります。通称、「ものづくり補助金」と呼ばれるもので、中小企業・小規模事業者向けとしては、代表格とも言える補助金です。
ものづくり補助金総合サイトの中にデータポータル※1があり、同補助金の申請・採択状況のデータがまとめられています。
「申請件数の推移」では、第1次から第12次までの採択率が示されています。
それを見ると採択率は、大体30~60%程度で推移しています。直近の第12次締切では、通常枠と特別枠、それにグローバル型を合わせて申請件数が3,254件で、採択率は58.6%。採択された事業者は1.907件となっています。
また、「支援者の関与」というデータを見ると、例えば第10次締切を見ると、事業者自身で申請していることを意味する、「支援者なし」の採択率は48.9%です。しかし「支援者あり」の採択率は、最高で74.8%もありました。その差は25.9%にもなります。支援者の有無が採択率を大きく左右していることがお分かりいただけるでしょう。
ここで言う「支援者」とは、報酬を得てサポートする者であり、専門家を指します。つまり、採択率を上げるには専門家の手を借りるべき、という解答がデータから得られます。
※1 ものづくり補助金総合サイト・データポータル
https://portal.monodukuri-hojo.jp/dataportal.html
申請代行を依頼するには、どんな専門家がいるか?
では実際に、補助金の申請代行を依頼する場合、どのような専門家が存在するのでしょう。
補助金申請の代行を請け負ってもらえる専門家としては、「認定支援機関=経営革新等支援機関」の認定を受けている、商工会や商工会議所、金融機関、弁護士、税理士、公認会計士、行政書士、中小企業診断士、社会保険労務士などが挙げられます。
経営革新等支援機関とは、税務・財務、及び金融に関する高度な知識を有し、実務経験が一定レベルと認められた企業・団体及び専門家が、経済産業局並びに財務局から認定されたものです。
これらの専門家は、それぞれの得意分野を活かして、資金繰りや資金調達支援、財改善支援、経営改善計画書の作成支援等を行っています。中でも、経営改善計画の策定支援は経営上の課題を抱えた事業者には広く利用されています。他には経営革新計画の立案や、助成金・補助金申請業務も、経営革新等支援機関で行っています。
経営革新等支援機関にアドバイスを受けながら、補助金申請には必須の事業計画を作成することは、事業の現状を把握し、直面する課題と正しい対応策を導き出すことに繋がります。
中小企業庁のホームページでは、「認定経営革新等支援機関」検索システム※2
があり、各事業主の方にあった専門家を探すことが可能です。
代表的な補助金
ここでは、中小企業・小規模事業者に人気のある補助金を、3つご紹介します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
「ものづくり補助金」の名で親しまれていますが、正式名称を見れば分かる通り、「ものづくり」とつくからといって、製造業に限られた補助制度ではありません。商業やサービス業、IT業など、幅広い業種で活用できます。
中小企業・小規模事業者が、今後数年に渡って直面するであろう制度変更に対応するため、彼らが取り組む革新的サービス・試作品の開発、生産プロセス改善ための設備投資等を支援するものです。
第14次締切分の申請開始日は2024年3月24日(金)17時〜、申請締切日は2024年4月19日(水)17時となっています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
公募要領(14次締切分)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者等が取り組む販路開拓等の費用の一部を補助することにより、彼らの生産性向上と持続的発展を図ることで、地域の雇用や産業を守ることを目的としています。販路開拓等の取り組みとは、新市場への参入に向けた販売の工夫や、新規顧客層の獲得を意識した商品開発等を指します。
補助率は2/3ですが、「賃金引上げ枠」の赤字事業者については3/4に引き上げられ、審査時の加点も行われます。
補助上限額は次の通りです。
通常枠:50万円
賃金引上げ枠:200万円
卒業枠:200万円
後継者支援枠:200万円
創業枠:200万円
インボイス枠:100万円
対象経費:機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会 等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費
2024年2月現在、募集中の公募は第11回となります。
第11回
- 申請受付締切日:2024年2月20日(月)
- 事業支援計画書交付の受付締切:2024年2月13日(月)
小規模事業者持続化補助金は、第11回受付締切をもって終了が予定されています。
令和元年度補正予算・令和 3 年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型> 公募要領
事業再構築補助金
ポストコロナ・ウィズコロナの時代を見据え、経済・社会の変化に対応するために、新分野への展開、業態・事業・業種転換、事業再編など、事業再構築に意欲を示す中小企業等を支援する制度で、これにより、日本経済の構造転換を目的としています。
また、事業再構築により事業規模を拡大したり、海外展開を積極的に行って新規市場の開拓に努める中小企業等には、強力に支援を行う方針です。
[スケジュール]
応募締切:2024年3月24日(金)18時まで(厳守)
補助金額をご紹介します。
[通常枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数20人以下】100万円~2,000万円
【従業員数21~50人】100万円~4,000万円
【従業員数51人~100人】100万円~6,000万円
【従業員数101人以上】100万円~8,000万円
[大規模賃金引上枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円
[回復・再生応援枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円
【従業員数6〜20 人】100 万円 ~ 1,000 万円
【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円
[最低賃金枠]
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500 万円
【従業員数6〜20 人】100 万円 ~ 1,000 万円
【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円
[グリーン成長枠]
中小企業者等:100万円~1億円
中堅企業等 :100万円~1.5億円
[緊急対策枠]
中小企業等、中堅企業等ともに
【従業員5人以下】100万円~1,000万円
【従業員6~20人】100万円~2,000万円
【従業員21~50人】100万円~3,000万円
【従業員51人以上】100万円~4,000万円
補助率についても確認しておきましょう。
[通常枠]
中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
[大規模賃金引上枠]
中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
[回復・再生応援枠]
中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3
[最低賃金枠]
中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3
[グリーン成長枠]
中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
[緊急対策枠]
中小企業等 3/4(※1)
中堅企業等 2/3(※2)
令和二年度第三次補正 令和三年度補正・令和四年度予備費「事業再構築補助金」 公募要領(第9回)
(※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3)
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2)
まとめ:専門家の力を借りて、より採択精度の高い書類作成を
今回は、補助金に関して、申請代行は専門家に依頼するべきか、依頼するのであれば、どのような専門家が存在するか、について考察しました。
補助金の申請だけであれば、事業主本人でも十分可能です。ただ、採択を意識した申請書類の作成は、本業の片手間にできるほど簡単なものではありません。
提出する事業計画は、専門家で組織する審査委員会が厳しく審査します。問われる内容は、事業の目的、市場における新規性・競争優位性、市場性・成長性、実行能力、具体性、リスク要因、事業の社会的意義などです。
専門家のアドバイスを仰ぐことで、より採択精度の高い申請書類を作成することが可能になるのです。
新規事業や技術の革新性や優位性を示すには、事業者が熱をもって語るのが望ましいでしょう。しかし、客観的なデータを駆使して、新事業を実行する意義を総合的に説くには、外部のプロによる知見とスキルを借りる、という選択肢もあります。