補助金・助成金

ものづくり補助金に個人事業主は申請できる?/個人事業主・小規模事業者が活用できる補助金を紹介

国や地方公共団体は、政策を滞りなく遂行するために、補助金・助成金と称し、企業に対して様々な資金援助を行っています。

活用できれば、これからの事業展開にとって、強い味方となる補助金・助成金ですが、果たしてそう簡単に支給されるものなのでしょうか。そもそも、個人事業主は給付の対象になるのか、また支給限度額など、関心を寄せている事業者の方も多いでしょう。

この記事では、補助金の代表格とも言える「ものづくり補助金」を例に取り上げ、個人事業主は果たして申請が可能か、採択に際して不利な点はないか、などについて検証していきます。また併せて、個人事業主及び小規模事業者が活用できる他の補助金についても解説します。

ものづくり補助金に、個人事業主は申し込める?

まずは、ものづくり補助金とはどのような性格の支援であるか、どのような事業者が対象となるか、確認しておきましょう。

「ものづくり補助金」の概要をおさらい

ものづくり補助金の正式名は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。公募要領※1が掲げる事業概要では、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後、数年に渡って直面するであろう制度改革等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が革新的サービスの開発、試作品開発、生産性プロセスを改善するための設備投資等を支援すること」を目的としています。

ものづくり補助金は、[一般型]、[グローバル展開型]の2つに分類されます。ただ、[ビジネスモデル構築]は、中小企業30社以上のビジネスモデルの構築及び、事業計画策定のための面的支援プログラムの補助を念頭に置いているため、この記事では割愛します。

[一般型]

該当する事業概要は、中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」あるいは、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム等を支援するものであることです。

補助金支給金額の幅は、100~1,250万円で、補助率は通常枠では、中小企業社が1/2、小規模企業者・小規模事業者が2/3となっています。

補助対象となる経費は、通常枠では機械・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費などです。

 [グローバル展開型]

該当する概要は、中小企業者等が、海外事業の拡大や強化を目的とし、革新的な製品・サービス開発、あるいは生産性プロセス・サービス提供方法の改善に必要な、設備・システム投資等を支援するものであることです。ただしその支援が、海外への直接投資、海外市場の開拓、インバウンド市場の開拓、海外事業者との共同事業のいずれかに合致しなければなりません。

補助金額は、1,000~3,000万円と比較的高額です。補助率は、中小企業者が1/2、小規模企業者・小規模事業者が2/3です。

補助対象経費は、[一般型]の通常枠で定める経費に加えて、海外旅費等が含まれます。

最後に対象となる補助事業の要件ですが、発注・納入・検収・支払等の事業のすべての手続きが、事前に定める期間内に完了することです。期間は、一般型では交付決定日から10カ月以内、グローバル展開型では、交付決定日から12カ月以内とされています。

さらに、以下の要件を満たす、3年から5年の事業計画を策定していることも条件となります。

  • 給与支給総額を年率平均で、1.5%以上増加する。ここでいう給与支給訴額とは、非常勤を含む全従業員及び、役員に支払った給与のことです。
  • 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
  • 事業者全体の付加価値額を、年率平均で3%以上に増加する。※ちなみに付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却日を足したものです。

対象となる事業者

公募要領によると、本事業の対象者は、日本国内に本社及び事業の実施場所を有する、中小企業者(組合関連以外)、中小企業者(組合関連)、特定非営利活動法人とされています。個人事業主は、この内の中小企業者(組合関連以外)に該当します。そして、資本金及び常勤の従業員数が、下記の数字になる会社、あるいは個人であることが要件です。

  • 製造業/建設業/運輸業 資本金:3億円 従業員数:300人
  • 卸売業 資本金:1億円 従業員数:100人
  • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 資本金:5,000万円 従業員数:100人
  • 小売業 資本金:5,000万円 従業員数:50人
  • ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) 資本金:3億円 従業員数:900人
  • ソフトウェア業/情報処理サービス業 資本金:3億円 従業員数:300人
  • 旅館業 資本金:5,000万円 従業員数:200人
  • 上記以外の業種 資本金:3億円 従業員数:300人

個人事業主は採択には不利か

ものづくり補助金の事業の狙いは、公募要領には、「中小企業・小規模事業者等が、数年に渡って直面するであろう制度改革に対応するため、(中略)生産性を向上させることを目的に設備投資等を支援する」と定義されています。小規模事業者には、個人事業主も含まれており、補助対象者になります。それにもかかわらず、個人事業主の中には、ものづくり補助金の活用をためらう方が少なくないように見受けます。

ものづくり補助金総合サイト※2では、2019年度補正予算事業・2020年度補正予算事業の、これまでの採択状況のデータを掲載しています。その中に、「申請者の規模(従業員数)」という資料があります。これには、企業規模別に見る申請者数の割合が表示されており、興味深い調査結果が導き出されています。

それによると、第6次から第9次までの合計で、従業員数0~5人の小規模事業者(個人事業主含む)の割合は、全体の43.8%を占めています。次に6~20人規模の企業が33.3%、21~50人規模の企業が14.1%、51~100人規模が5.8%、101人以上が3.1%と続きます。一方、採択率は、0~5人規模が44.1%、6~20人規模が53.5%、21~50人規模が54.8%、51~100人規模が60.2%、101人以上の規模が54.5%という状況です。21~50人規模、51~100人規模の企業がやや高めの採択率となっており、0~5人規模と51~100人規模で比較すると20%ほど採択率に違いがあることが分かります。

しかし、中規模事業者者や個人事業主だからといって、補助金の給付が受けられないというわけではありませんので安心してください。

ものづくり補助金総合サイト データポータル

ものづくり補助金以外にもある、個人事業主が活用可能な補助金

ものづくり補助金以外にも、個人事業主が申請可能な補助金をピックアップしてみました。

小規模事業者持続化補助金

※小規模事業者持続化補助金は、第11回受付締切【2024年2月20日(月)】をもって終了が予定されています。以下は参考としてお読みください。

2020年度第3次補正予算において、「小規模事業者持続化補助金」<低感染リスク型ビジネス枠>が措置されました。

この補助事業は、小規模事業者が経営計画並びに補助事業計画を作成した上で行う販路開拓・生産性向上を応援する制度です。新たなビジネス・サービス、生産プロセス導入等の取り組みを支援することを目的としています。新型コロナウィルスの感染防止と、事業の継続を両立させるため、対人接触の機会を減らし、ポストコロナを見据えた前向きな投資を後押しするため、それに要する経費の一部を援助します。

補助対象者は、以下に該当する小規模事業者、および要件を満たす特定非営利活動法人です。

商業・サービス業常時使用する従業員の数5人以下
宿泊業・娯楽業常時使用する従業員の数20人以下
製造業その他常時使用する従業員の数20人以下

補助対象事業は、ポストコロナを踏まえ、新しいビジネス・サービス、生産プロセスの導入等を行い、新型コロナ感染防止に努め、同時に事業継続のために、対人接触の機会を減少させる取り組みに投資する事業です。

補助上限額は50万円~200万円、補助率は2/3です。
※賃金引上げ枠のうち、赤字事業者については補助率は3/4となります。

補助の対象となる経費は次の通りです。

機械装置等費

機械装置の導入費用、移動販売車両の購入費など、事業遂行に必要な機械等購入に要する経費。

広報費

補助事業計画に基づいて、新しいビジネス・サービス、生産プロセスの導入などの取り組みを広報するために必要な費用。

ウェブサイト関連費

ウェブサイトやECサイト等の構築・更新・改修をするために必要な費用。
補助金交付申請額の1/4が上限となります。

展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む

新商品等を展示会に出展、もしくは商談会に参加するために必要な費用。

旅費

補助事業計画に基づく販路開拓などを行うための旅費。
展示会会場との往復旅費も含みます。

開発費

新型コロナ感染防止と、事業の継続を両立させるため、新ビジネス・サービス、

生産プロセスの導入等に関する新商品の試作品、包装パッケージの試作・開発に伴う原材料、設計・デザイン、製造、改良、加工するために係る費用。

資料購入費

補助事業遂行にどうしても必要な、図書等の資料を購入するための費用。

雑役務費

補助事業遂行に必要な業務・事務を補助するため、補助事業期間中に臨時に雇った人間のアルバイト代、派遣労働者の派遣料金、交通費としてかかる経費。

借料

補助事業の遂行に直接必要な機器・設備等のリース料、レンタル料として支払う経費。

設備処分費

作業スペースの拡大など、販路拡大等の目的で事業者が所有する設備機器等を廃棄処分する際、もしくは返却する際に修理・原状回復するための費用

設備処分費

補助事業の行うため、作業スペースを拡充、改修することを目的に、当該事業者が所有する既存設備を解体・処分するのに係る経費。

その他、委託・外注費など。

申請者の業種・業態において該当する業種別ガイドライン※3を参照し、実施する必要最低限の新型コロナウィルス感染拡大防止対策を行うため、必要とする経費。

業種別ガイドライン

事業再構築補助金

2020年度第3次補正予算に措置された、事業の再構築を支援する補助金です。

補助事業の目的は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据え、経済・社会の変化に対応するために、新分野への展開、業態転換、事業・業種展開、事業再編などの取り組みを通じ、事業規模の拡大、事業再構築に意欲を示す中小企業を支援することにより、日本経済の構造転換を促進させることです。

補助事業の対象者は、日本国内に本社を置く中小企業者、及び中堅企業者となります。ただし、中小企業者においては、資本金あるいは従業員数が、下記に記した数字以下となる会社、または個人であることです。

  • 製造業/建設業/運輸業 資本金:3億円 従業員数:300人
  • 卸売業 資本金:1億円 従業員数:100人
  • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 資本金:5,000万円 従業員数:100人
  • 小売業 資本金:5,000万円 従業員数:50人
  • ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) 資本金:3億円 従業員数:900人
  • ソフトウェア業/情報処理サービス業 資本金:3億円 従業員数:300人
  • 旅館業 資本金:5,000万円 従業員数:200人
  • 上記以外の業種 資本金:3億円 従業員数:300人

本事業では、以下の6つの事業類型があり、それぞれ補助金額、補助率が異なります。

<通常枠>

新分野への展開や、業態・事業・業種転換、事業再編あるいはこれらの取り組みを通じ、事業規模の拡大を目指す中小企業を支援します。

補助金額は、従業員数が20人以下の場合、100~2,000万円。21~50人の場合は、100~4,000万円。51~100人以下の場合は、100~6,000万円、101人以上の場合は100~8,000万円です。

補助率は、中小企業者等は2/3。ただし、補助金額が6,000万円を超える場合は1/2。中堅企業等は1/2。ただし、補助金額が4,000万円を超える場合は1/3。

補助対象経費は、建物費、機械装置・システム構築費(リース料含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費などです。

<大規模賃金引上枠>

多くの従業員を抱え、継続して賃金の引き上げに取り組み、従業員数を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援するものです。

補助金額は、従業員101人以上で8,000万円~1億円、補助率や補助対象経費は通常枠と同じです。

大規模賃金引上枠で不採択になった場合は通常枠で審査されますが、再審査については事業者側で行う手続きはありません。

<回復・再生応援枠>

新型コロナウイルスの影響を受け、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業などの事業再構築を支援するものです。

補助金額は、従業員数が5人以下の場合、100~500万円。6~20人の場合は、100~1,000万円。21人以上の場合は100~1,500万円です。

補助率は、中小企業者等は3/4、中堅企業等は2/3。

補助対象経費は通常枠と同じです。

回復・再生応援枠で不採択になった場合は通常枠で審査されますが、再審査については事業者側で行う手続きはありません。

<最低賃金枠>

最低賃金引上げの影響を受け、減資の確保が難しい業況の厳しい中小企業等を支援するものです。

補助金額は、従業員数が5人以下の場合、100~500万円。6~20人の場合は、100~1,000万円。21人以上の場合は100~1,500万円です。

補助率は、中小企業者等は3/4、中堅企業等は2/3。

補助対象経費は、<通常枠>と同じです。

最低賃金枠で不採択になった場合は通常枠で審査されますが、再審査については事業者側で行う手続きはありません。

<グリーン成長枠>

研究開発・技術開発、または人材育成を行いながらグリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に向けての取り組みを行う中小企業等の事業再構築を支援します。

補助金額は、中小企業等で100万円~1億円、中堅企業等で100万円~1.5億円です。

補助対象経費は、<通常枠>と同じ。

グリーン成長枠で不採択になった際に通常枠の審査を希望する際は、売上高減少要件を満たすことを示す書類の再提出が必要です。

事業再構築補助金 公募要領(第9回)

まとめ:補助金を賢く利用して成長戦略に役立てよう

今回は、個人事業主はものづくり補助金の給付を受けられるのか、また申請はできても採択には不利ではないのか、などの疑問にお答えしました。併せて、個人事業主及び小規模事業者が申請可能な、他の補助金についても解説しておきました。

補助金や助成金は、企業を資金面で支援することにより、国の施策を円滑に進めるための制度です。個人事業主や小規模事業者であっても、十分に給付を受ける資格はあります。ただ、補助金は助成金とは違い、厳正な書類審査を経て、面接を通って初めて採択がくだされます。また、採択が決定した後も、交付申請書の提出、補助事業開始後の実績報告書の作成及び提出、確定審査が実施された上で支給額が決定して、ようやく給付金が振り込まれるという具合です。

これだけの行程をクリアし、無事に補助金の給付を受けるには、ハードルの高さに尻込みしてしまう個人事業主及び、小規模事業者の方も多いのではないでしょうか。しかし、補助金は助成金と同様に、返済不要なお金です。国の政策を理解し、正しく申請すれば、自社の成長戦略に資する資金調達手段です。

もしも、本業に手一杯で、書類作成に割く時間も労力もないというなら、外部のプロの手を借りるという選択肢もあります。

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