政府は9月12日に県民割の全国拡大販である「全国旅行支援」を10月11日(火)より開始すると発表しました。新型コロナウイルスの流行で我慢していた遠方への旅行がしやすくなるとあって注目を集めています。
全国旅行支援とは?
全国旅行支援とは、日本全国を対象とした観光需要起策であり、10月10日(月)まで実施される県民割(地域ブロック割)の全国拡大版です。これまで実施は決定されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で二度延期。感染者数が減ったことで、政府もやっと開始に踏み切れたようです。
以前に実施されていた「Go To トラベルキャンペーン」との違いは、各都道府県がそれぞれ行う「地域観光事業」であること。国が一律で行なった「Go To トラベル」と違い、各都道府県ごとに独自のルールや利用方法があります。そのため「県民割の拡大版」という言い方がされているのです。
県民割との大きな違いは、旅行会社の主催するツアーなどでも割引が受けやすい点です。県内、あるいは同じ地域ブロック内の隣県などへの旅を想定した県民割の場合は、利用は日帰りまたは1~2泊の旅行が中心でした。それもあって割引対象となるのは宿泊代金や宿泊施設の日帰りプランなどに限られていましたが、全国旅行支援では遠方への旅行での利用が可能となったため、ツアー代に含まれるバスや飛行機、新幹線代などの交通費なども割引対象となります。
割引率は最大40%で、割引上限額は5,000円(1人1泊)。交通付のツアーなどの場合は最大8,000円。
この他に県民割と同じく買物などに使える地域クーポン券が平日は3,000円、休日は1,000円分つきます。
例えば、2泊3日で1人4万円(往復の交通費込み)のツアーを利用した場合だと、自己負担となる費用は以下のようになります。
4万円ー1万6,000円(交通付商品割引8,000円×2泊分)=2万4,000円(割引率40%)
もし5万円で2泊3日のツアーだと自己負担額は3万4,000円(割引率32%)となります。
※他に地域クーポン券が2日分付与(平日なら6,000円分、休日なら2,000円分、平日と休日を跨ぐ場合は4,000円分)。
40%という最大割引率の恩恵を受けるには1日あたり2万円程度のツアーを利用するといいようですが、上限額自体は変わらないので割引率にはそれほどこだわらなくてもいいでしょう。それよりも、できれば平日を利用して3,000円の地域クーポン券をゲットすることを考えたほうがお得です。
なお、往復の交通は自家用車などを利用し、ホテルや旅館でのみ使用した場合は、1泊あたり5,000円が割引上限額となります。
交通付か宿泊のみか、どちらの場合も地域クーポン券(平日3,000円、休日1,000円)は付与されます)。
GoToトラベルとの違い
全国旅行支援がいつ終了するのか。はっきりとわかっていませんが、終了後は「GoToトラベルキャンペーン」が再開されることになっています(キャンペーン自体の名称は変更される可能性有り)。国ではすでにそのための予算を確保してあるので、よほどのことがない限り、再開はされるはずです。
「県民割とか、全国旅行支援とか、GoToとか、似たようなものがたくさんあって、ややこしくてかなわないよ」
「結局、どれがいちばんお得なわけ?」
こんなふうに思う人は少なくないでしょう。実際、全国旅行支援とGoToトラベルはなにが違うのでしょうか。
対象が全国なのはどちらも一緒。ただし、全国旅行支援の場合は実施の判断を都道府県が行うため、場合によっては「うちは実施しない」と言い出す都道府県があるかもしれません。
割引上限率はGoToトラベルが最大30%なのに対し、全国旅行支援は40%。これだけ見ると全国旅行支援の方がお得です。
いっぽうの割引上限額はというと、GoToトラベルは最大1万円。全国旅行支援は8,000円と、こちらはGoToトラベルに軍配が上がります。
クーポン券については、どちらも平日3,000円/泊、休日1,000円/泊。
ざっと比べてみると、たいした違いはなし。強いて言うなら、GoToトラベルは予算が多めの旅行向き、全国旅行支援はそれよりもリーズナブルな旅に向いているといった感じです。
いずれにせよお得なことに変わりはないので、そのときに実施されているキャンペーンを利用すればいいだけのことです。
いまツアーに予約してもあとから割引が適用される?
10月11日(火)より開始される全国旅行支援。では、現在実施されている県民割はどうなるのでしょう。2つの施策はおそらく途切れることなくスムーズに移行されると予想されます。
旅行会社にとっては遠方への旅行者が増えるであろう全国旅行支援は、待ちに待っていたビジネスチャンスです。
ここで問題なのは開始時期がはっきりしていないこと。旅行を申し込む側からすると「いま予約すると損するかも」「往復の交通がついたツアーなのだから、全国旅行支援が始まってから予約したい」といった意識が働くはずです。とはいえ、あまり予約を先延ばしにすると、行きたいツアーの予約が埋まってしまうおそれもあります。
もちろん、旅行会社も手をこまねいているわけではありません。例えば、楽天トラベルではいつ始まるかわからない全国旅行支援に対し「あとから割引適用」というサービスを始めています。これは、かりに今日ツアーの予約を通常料金で行なったとして、後日、全国旅行支援が始まった場合でも割引申請することで「あとから割引」が適用されるといったものです。
流れとしては、
①国内宿泊or国内ツアーを予約
②全国旅行支援の実施が決定した場合、楽天トラベルから割引適用対象者に申請受付開始の案内をする
③利用者(客側)は案内に沿って個人ページで適用条件を確認、旅行前日までに割引申請ボタンを押す
④適用完了(個人ページで申請の確認が可能)
というようにたいへん簡単なものとなっています。
ただし、詳細な条件については全国旅行支援開始後に都道府県や政府から発表という形になっているため、現在発売されている旅行商品のすべてに適用されるかどうかは不明です(割引適用外のツアーなどもある)。
現在、各旅行会社ともさまざまな対応を検討しているところなので、気になる人は各社のホームページやSNSの情報をチェックするといいでしょう。
また行きたい旅行先があったら、その都道府県の「全国旅行支援」に関する情報を確認しておくことがおすすめです。
忘れてはならない新型コロナワクチンの接種証明
全国旅行支援も、利用には県民割同様、新型コロナワクチンの3回分の接種証明、またはPCR検査等での陰性証明が必要となります(12歳未満は監護者同伴を条件に検査不要)。細かな部分で都道府県によって条件が異なるので、旅行前に確認しておくといいでしょう。
健康に気をつけて、秋の旅をお楽しみください。
文・中野渡淳一
文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。