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電気代10万円超の時代。ガス代も値上がり。いまからでも考えたい冬の光熱費対策

電気料金もガス料金も値上がりしているこの冬。暖房費の節約に努めている人も多いことでしょう。1年前と比べて光熱費はどれだけ値上がりしているのでしょうか。コスパ最強の暖房器具はなにか。光熱費を抑える工夫を考えてみました。

光熱費、1年前と比べてどれだけ高いか?

年が明けてこの1月、テレビの情報番組で「3人暮らしの家庭の電気代が10万円を超えた」というニュースが話題となりました。インターネットのSNSでも「電気代11万円で家のローンより高い」という個人の投稿に大きな反響がありました。電気代の値上がりは周知の事実なので予想はしていたものの、オーバー10万円と聞くとさすがに驚いてしまいます。

テレビで話題となったのは豪雪地帯の山形県米沢市でオール電化の家に住んでいる世帯で、昨年の1月の電気料金が5万7,479円だったのに対し、今年1月の請求額は10万1,822円。倍近い値上がりとあってはニュースになるのも無理はありません。

普通、ニュースというものはレアな現象が起きたときに「こんなことがありました」と報道されるものです。しかし、このニュースの場合はそうではありません。電気代は、電力会社によって多少の差はあれ、自宅などで電気を使用する人すべてにかかってくるものです。ここで報道された「倍近い値上げ」は、おそろしいことに他人事ではなく自分ゴトなのです。

筆者の家でも妻にこの話題を投げると、職場の同僚でやはり師走(12月)の電気代が10万円を超えたという人がいたといいます。筆者が住んでいるのは豪雪地帯から遠く離れた神奈川県です。件の同僚は7人家族なのでそれだけ電気の使用量も多いのでしょうが、それにしても比較的暖かい南関東で月の電気代が10万円というのは驚愕です。しかもこの家の場合はオール電化でなくて、ガスも併用しているのです。

値上がりしているのは、電気代ばかりではありません。ガス代も値上がりしています。我が家では冬は石油ファンヒーターを使用、お風呂も夏はシャワーで済ますことが多いけれど、冬は毎日湯船にお湯を張ります。よって、12月~3月は1年でもっともガス代がかかる時期となります。

電気代値上げの陰にかすんであまり騒がれていないガス代の値上げですが、実際のところ、いくら値上がりしているのでしょうか。去年と比べてどれだけ違いがあるのか、手元にあった昨年(2024年)1月の請求書と、現在手元にある最新の請求書である2024年12月分を見比べてみました。

11ヶ月前(2024年1月)の請求額は116㎥で1万6,708円。
これに対し、2024年12月の請求額は108㎥で2万1,492円。

値上がっていることは一目瞭然です。

毎月のガス料金は、基本料金と従量料金の合計額で算出されます。基本料金は11ヶ月前も現在も変わらずで1,232円。この額を引いた従量料金が値上がりしているのです。

従量料金とは、使ったら使った分だけ課金される料金のこと。2024年1月の従量料金は1万5,476円(1円未満の端数は切り捨て)で、2024年12月の従量料金は2万260円。その差は4,784円です。

では使用量はいうと、2024年1月は116㎥で、2024年12月は108㎥。前者の方が8㎥多いにもかかわらず、料金は4,784円も安かったのです。

毎月、なにげなく請求額を見ては「高いなあ」と呟くだけで終わっていたガス料金ですが、計算機片手に差額を弾き出してみると、そのずいぶんな値上がりぶりに顔が引きつってしまいました。

ガス代高騰の原因は、ウクライナ情勢やコロナ禍、世界的なインフレ、円安などにともなう 原料(LNG=液化天然ガス)価格の高騰です。原料費は、ガス料金では従量料金に含まれる原料費調整額に反映されます。これが上昇したことによってガス代が大幅に値上げしているのです。

ガス料金の従量料金は、1㎥単位で示されます。計算してみたところ、2024年1月は1㎥で133円41銭でした。これが2024年12月だと187円59銭。実に54円18銭もの値上がりです。

我が家のように毎月100㎥以上使う世帯の場合は、月あたり5,400円以上支出が増えることになります。ガスはお風呂とキッチンだけという家庭でも、例えば毎月30㎥で1,625円の値上がりとなります。ガスだけなら目を瞑ることのできる金額かもしれないけれど、電気代の値上がりと合わせると無視というわけにはいかない状況だと思われます。

しかも、嘆かわしいことに2024年春以降は電気代、ガス代ともにさらに値上がりが予想されているのです。

2024年1月~9月は補助金で電気・都市ガス料金が値引き

ぞっとするような電気料金、ガス料金の値上げですが、国も手をこまねいているわけではありません。

たびたびニュースになっているのでご存知の方も多いでしょうが、政府は総合経済対策の一環として、2024年に「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を実施することを決定しています。

これは国が申請のあった電気.都市ガスの小売事業者に補助金を出し、小売事業者はそれに応じて一般家庭や企業の電気代、ガス代を値引きするというものです。

対象となるのは2024年1月使用分~2024年9月使用分。電気は低圧契約の一般家庭・企業等、及び高圧契約の企業等、ガスは都市ガスの年間契約料が1,000万㎥未満の一般家庭、企業等となります。一般家庭で年間契約料が1,000万㎥を超えるなどということはまずないので、普通の世帯であれば確実に補助金の恩恵に授かれるはずです。

補助金による値引きを受けるのに、電気やガスの使用者がとくに申請や申し込みをする必要はありませせん。1月(2月検針分)以降、9月までの電気代、ガス代は自動的にこの補助が適用された(値引きされた)金額が請求額となります。

気になる補助金額は、 2024年1~8月が、低圧契約の一般家庭・企業等の場合は1kwあたり7円、2024年9月が半額の3.5円となっています。

これを我が家に当てはめてみると、2024年12月の使用量が514kwだったので、1月もだいたい同じと考えて514×7円=3,598円の値引きとなります。月に300kwという家庭だったら、1~8月は毎月2,100円が補助される計算となります。

ガス代は、1~8月が1㎥あたり30円の値引き。9月は15円となっています。これも我が家に当てはめてみると、昨年の1月の使用量116㎥と同じだけ使ったとして、3,480円の値引きなります。正直、すごく助かります。とはいえ、昨年との差額である54円18銭には届かないのも事実。1㎥あたり54円18銭から30円引いて24円18銭、このぶんは昨年より多く支払うことになります。116㎥の使用量であれば約2,805円のアップです。

補助金が出ても、昨年と比較すると支出アップとなる電気代にガス代。それでもないよりはやっぱりずっとまし。経済産業省の試算では、平均的な家庭の場合、2024年1~9月の9ヶ月間で、1世帯あたり約4万5,000円の負担軽減になるとされています。

プロパンガス(LPガス)に補助金は出るのか?

ここまで述べてきたガスとはすべて都市ガスのことです。しかし、日本には都市ガスではなく、プロパンガス(LPガス)を使用している世帯もあります。その数およそ2200万世帯。地方では都市部を除く多くの家庭でプロパンガスが使用されているのです。

では、今回の補助金でプロパンガスは対象となるのか。

残念ながら答えは「NO」です。プロパンガス使用者からすると「不公平じゃないか」と言いたくなるかもしれません。「都市に住む人間ばかり優遇しやがって」などという恨み節も聞こえてきそうです。けれど、なぜプロパンガスが補助の対象とならないのか。そこにはそれなりの理由があります。

知っておきたいのは、同じガスでも都市ガスとプロパンガスでは違うということ。素人から見れば、どこからか導管を通って自分の家に来ているものが都市ガスで、ボンベに詰まっているものがプロパンガス、といったくらいしか違いがわかりませんが、両者はそもそも原料からして違います。

都市ガスの原料は液化天然ガス(LNG)、プロパンガスの原料は液化石油ガス(LPG)。液化天然ガス(LNG)の主成分はメタンで、液化石油ガス(LPG)の主成分はプロパンとブタンです。メタン、プロパン、ブタンはいずれも炭化水素化合物です。

ガスとして使用したとき、火力が強いのは液化石油ガス(LPG)です。よく街中の飲食店などで、都市ガスが通っているにもかかわらずプロパンガスのボンベが店の裏に置いてあったりするのは、この強い火力を求めてのことです。

ただし一般家庭で使用するぶんには火力の差はそれほど影響しません。家庭用のコンロは都市ガス用とに分かれており、都市ガス用は火力が弱いぶんガス穴を多めにする(ガスの使用量を増やす)などの対策が講じられていて、普通に使うぶんにはプロパンガスとの差を感じることはほとんどありません。

日本が輸入している液化天然ガス(LNG)の主な産出国はオーストラリア、インドネシア、マレーシアなど。液化石油ガス(LPG)の産出国はアメリカ、カタール、サウジアラビア、クェートなどです。

液化石油ガス(LPG)は原油の精製過程で発生するガスのため、使用量の25%は日本国内でも生産されています。火力が強いのは液化石油ガス(LPG)ですが、CO2排出量が少なく環境に優しいのは液化天然ガス(LNG)です。このため液化天然ガス(LNG)は供給量の4分の3は産業用として使用されています。火力発電もその多くは液化天然ガス(LNG)が担っています。

話を戻して、なぜプロパンガスには補助金が出ないのか、その背景には液化天然ガス(LNG)と液化石油ガス(LPG)の価格上昇率の違いがあります。

液化石油ガス(LPG)の販売小売価格は、この20年で1.5倍ほど値上がっています。上昇率としては比較的緩やかといえます。ところが液化天然ガス(LNG)は、コロナ禍や新興国の需要アップの影響などで値上がりが続いていたところへもって、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した安定的な供給網の崩壊によって、2024年8月にはスポット価格(随時契約価格)で前年比10倍という高値をつけました。

そこで政府も液化天然ガス(LNG)を使用する都市ガスや、それによって発電される電気料金の補助に乗り出したのです。実際のところ、プロパンガスも1年前と比べると1割程度値上がりはしていますが、液化天然ガス(LNG)の高騰ぶりに比べれば許容範囲内といった判断が下されたといった形です。

もうひとつ、理由があるとすれば、都市ガスの事業者が全国に約300あるのに対し、プロパンガスは1万7000と非常に多いことが挙げられます。これだけ多くの業者に補助金を交付したとしても、それがちゃんと消費者に還元されるのかどうかは保証の限りではない。こうしたことから今回は補助が見送られたという可能性はあります。

もっとも、プロパンガスに対して政府が何もしていないかといえば、そんなことはありません。政府の総合経済対策のなかにはプロパンガス事業者の業務効率化を支援するといった政策が盛り込まれています。

プロパンガスは一般に、都市ガスに比べて1.8倍高いといわれています。しかもその販売価格は業者によってそれぞれ異なり、予告なく値上げされることも少なくありません。

筆者もプロパンガスを利用したことがありますが、個人的な肌感覚では都市ガスに比べて1.8倍どころか2倍~2.5倍ほど高く感じていました。

高い理由の大半は人件費にあります。ガス菅で供給される都市ガスと違い、プロパンガスは人が運ぶボンベで供給されます。ボンベの交換や検針などに費やされる人件費が高い小売価格となって消費者を苦しめているのです。

むろん、苦しいのは消費者だけでなく事業者にしても同じです。1万7000の業者の大半は中小零細企業です。そこで政府はこれらの業者に対して業務効率化のための予算を組むこととしたのです。

具体的には、遠隔での検針やガス栓の開閉が可能なスマートメーターの設置や、配送車両、充てん所の自動化などの設備の導入など。こうしたことを行う事業者に対して補助金を出すとしています。一般の消費者にはすぐに還元されないものかもしれませんが、これによって割高に感じるプロパンガスが少しでも安くなることを期待したいところです。

寒い時期の暖房は工夫で乗り切ろう

新型コロナウイルス感染症の流行はなかなか終息せず、インフルエンザも流行しているこの冬、電気代やガス代が高いからといって部屋を寒くして風邪などひいたら元も子もありません。

ここで考えたいのがコスパのいい暖房。できれば目から鱗が落ちるような、あっと驚く最強

術をお知らせしたいところです……が、残念ながら学問と同じで暖房に王道はなしです。部屋を暖かくするには、どうしても暖房器具が必要となりす。暖房器具をなるべく使わないようにするには、壁や床に断熱材を入れるという方法がありますが投資額がばかになりません。電気を自分でまかなう太陽光発電という選択肢もあります。しかし、これも100万円単位の初期投資が必要です。

提案したいのは、現在の自宅の暖房をもう一度点検してみることです。暖房器具は何をお使いでしょうか。通常、一般家庭で使う暖房器具には以下のようなものがあります。

・エアコン
・電気ストーブ
・セラミックファンヒーター
・こたつ
・オイルヒーター
・ホットカーペット
・石油ファンヒーター
・石油ストーブ
・ガスファンヒーター

電気代、ガス代、灯油代といった燃料代で見比べると、このうちもっとも安く済むのはエアコンです。エアコンは立ち上げのときこそ電力を必要としますが、設定温度に達したあとはそれほど電気代はかかりません。リビングでもベッドルームでも個室でも、部屋全体を暖めるのに適しています。

次に燃料代が安いのは石油ストーブ、石油ファンヒーターです。どちらも部屋全体を暖めるのに適しています。ストーブは対流式で大型のものだとさほど燃費がよくありませんが、そのかわり暖かさは絶大です。15畳以上の部屋であっても暑いくらい暖まります。小型の石油ファンヒーターは電気も併用するため燃費がかなり良く、個室の暖房に向いています。欠点があるとすれば消すときに石油臭くなること、換気、給油が必要な点。それと立ち上がりに少し時間を要することです。

部屋をすぐに暖めたい。そういうときにいちばん活躍してくれるのはガスファンヒーターです。立ち上がりの早さは暖房器具ナンバーワン。電源スイッチを押したと同時に強力な温風が出てきます。燃費も設定温度次第ですが悪くはなく、リビングなど広い部屋の暖房に向いています。ただ、こちらはガス栓がないと使用できません。家を建てる際やガスを引く際にはキッチン以外の場所(リビングやダイニングの壁など)にもガス栓をつけてもらうことをおすすめします。

オイルヒーターは燃費や即効性などで劣るものの、安全性は抜群。小さな子のいる家などでは重宝されています。その他、セラミックファンヒーター、電気ストーブ、ホットカーペットなどはスポット的な場所での使用がおすすめです(こたつは、言うまでもなくスポット的な暖房しかできません)。

上記は燃料代での比較ですが、暖房器具には本体価格というものがあります。賃貸などで最初からエアコンが付いている場合はともかく、エアコンは自分で買うとなるといちばん小さな6畳用でも安くて5~6万円はします。これに対して石油ストーブは小型のもので1万3,000円、ガスファンヒーターは2万1,000円程度から購入できます。価格的にはエアコンがもっとも高値ですが、夏の冷房も考えるともはや必需品。ここはあえて燃料代と本体価格は切り離して考えた方がいいかもしれません。

自分の家にどんな暖房器具があるのか。それをどんな形で使っているのか。推奨したいのは、メインの暖房器具をエアコンにして、他の暖房器具や家電製品でそれを補助するといった方法です。

3LDKの我が家ではLDKにはエアコンとガスファンヒーター、ホットカーペットを設置しています。部屋が寒いときはガスファンヒーターで一気にあたため、そのあとはエアコンにバトンタッチ、どうやらこれがいちばんコスパのいいやり方のようです(ホットカーペットは必要に応じて使用)。

この他、LDK以外の各部屋にはエアコンを設置。よく使う部屋には石油ファンヒーターと電気ストーブも置いてあります。脱衣所には電気ストーブ、トイレにはセラミッックヒーターを置いています。

できる限り節約したい暖房費。とはいえ、猫や犬がいるからエアコンは一日中切れない、子供がいてすぐにドアを開けっ放しにされてしまう、在宅ワークが増えて暖房器具を使う機会、時間が増えた、などなど、さまざま事情で節約が難しいご家庭も多いことでしょう。それでもあきらめずに、暖房器具の組み合わせをする、設定温度を低めにする、厚着をするなどの小さな工夫を重ねて値上げに対抗してみたいものです。

電気代、ガス代に頭を悩まさないのにいちばんいい方法は、実は他にあります。収入を上げることです。これはまた別の機会に触れることとしましょう。

文・中野渡淳一

文筆業者。著書に『怪しいガイドブック~トラベルライター世界あちこち沈没記』『漫画家誕生 169人の漫画道』。この他「仲野ワタリ」名義で『海の上の美容室』「猫の神さま」シリーズ等小説作品多数。『moneyscience』では生活者目線で最新トレンドの記事を中心に執筆。