ダブルワークや副業など、2ヵ所以上の会社から給料をもらっている人が増えてきました。今回の記事では「確定申告は必要?」「確定申告しなくていい金額は年間20万円?」などの疑問に答えつつ、確定申告の方法について分かりやすく解説します。
ダブルワークなど2ヵ所以上から給料をもらう例は多い
近年、ダブルワークや副業(複業)といった言葉を聞く機会が増えています。すでに、給料を2ヵ所以上から受け取る働き方をしている人も少なくありません。
例えば・・・
- 朝はコンビニ、昼間はスーパーでアルバイト
- 月・水は塾講師、木・金は花屋
- 正社員として働きながら、休日はコールセンターで勤務
- 3店舗でパートを掛け持ち
特にシフト制の仕事や短時間で終わる仕事などは、自分の都合に合わせて予定を組みやすいため、ダブルワークや副業にも適しています。
パート・アルバイトの掛け持ちだけでなく、会社役員の兼務、社員とパート・アルバイトの掛け持ちなど、働き方の幅も広がっています。
2ヵ所以上から給料をもらう場合、原則確定申告が必要
会社員やアルバイト、パート勤務の場合、勤め先が1ヵ所であれば、会社が年末調整をしてくれるため、一般的には個人が確定申告を行う必要はありません。
確定申告が必要な人は、次の通りです。
1. 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2. 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3. 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
(注) 給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
4. 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
5. 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
6. 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
7. 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
引用:国税庁HP No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
2ヵ所以上から給料をもらっている場合は、上記の「3」に当てはまるため、原則確定申告が必要になります。
ここでまず確認しておきたいのが「主たる給与」と「従たる給与」です。
主たる給与
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与
- 年末調整の書類を提出している会社から受け取る給与
従たる給与
- 上記以外の給与
簡単にいうと、年間給与の高い方が「主たる給与」です。
(例)コンビニA社、スーパーB社のダブルワークをしている◎美さん
A社 | B社 | |
1年に支払われた給与 | 30万(従たる給与) | 50万(主たる給与) |
給与所得者の扶養控除等申告書 | 提出しない | 提出する |
年末調整の書類 | 提出しない | 提出する |
この場合、◎美さんは、給与所得者の扶養控除等申告書を提出しているB社で年末調整を行います。
「年末調整してくれるなら、確定申告はいらないのでは?」と思う方もいるかも知れません。
しかし本来であれば、◎美さんが1年間に得た給与はA社+B社=80万です。しかし、B社の年末調整だけでは、50万に対してのみ所得税が計算されることになり、1社で80万の給与をもらっている人に比べて不公平感が出てしまいます。
公平に課税するためにも、確定申告が必要だというわけです。
2ヵ所以上で働いても確定申告が必要ないケース
ただし、「従たる給与」が年20万円を超えない場合は、通常確定申告をする必要はありません。年間の給与所得が同じ80万円の2人を例に挙げてみました。
Aさん | Bさん | |
主たる給与 | 70万 | 50万 |
従たる給与 | 10万 | 30万 |
確定申告 | 不要 | 必要 |
※注意
従たる給与が年20万を超えない場合も、下記のような場合は確定申告が必要です。
- 給与所得・退職所得意外の所得(コンサルなど)が年20万を超えた場合
- 医療費控除の適用を受けるための還付申告
- 災害などによる所得税の軽減免除
- ふるさと納税などの寄附金控除
扶養控除申告書を2ヵ所に提出してしまったら?
本来、1ヵ所にしか提出できない「給与所得者の扶養控除等申告書」ですが、2ヵ所に提出してしまった場合、「従たる給与」である勤務先に理由を話し、取り下げを行う必要があります。
取り下げ後にやるべきことは、従たる給与の金額により、次のように異なります。
従たる給与が年20万円未満の場合
- 「主たる給与」の会社に扶養控除申告書を提出済
- 「主たる給与」の会社が年末調整を行っている
この場合、確定申告は不要ですが、住民税は申告が必要です。
従たる給与が年20万円を超えている場合
従たる給与が年20万円を超えている場合は、「主たる給与」の会社に扶養控除申告書を提出していても、確定申告が必要です。
確定申告には「主たる給与」の勤務先から受け取った「源泉徴収票」が必要です。申請まで紛失しないように気をつけてください。
2ヵ所以上から給料がある場合の確定申告書類の書き方
確定申告と聞くと「面倒」「手間がかかる」といったイメージがあるかもしれませんが、実は年々簡素化が進み、楽になっているんです。ここではあらかじめ準備が必要な書類と作成方法について紹介します。
確定申告に必要な書類と申告書類の作成方法
【確定申告に必要なもの】
- 確定申告書
- 給与所得の源泉徴収票
- マイナンバー
- 身分証明書
- 通帳(口座番号がわかるもの)
【対象者のみ必要なもの】
- 社会保険料、生命保険料等の控除証明書
- 在学証明書(勤労学生控除の申請をする人)
確定申告を行う場合、マイナンバーカードを持っているならば、スマホでできるe-Taxがおすすめです。そのほか、インターネット上の国税庁確定申告書等作成コーナーで申告書を作成して印刷した上で、管轄の税務署に持参または郵送する方法もあります。
確定申告書にはA・Bがあり、それぞれ申告したい所得により使用する申告書が異なります。
確定申告書A | 確定申告書B |
・給与所得 ・公的年金 ・雑所得 ・配当所得 ・一時所得給与所得 | ・事業所得 ・不動産所得 ・利子所得 ・配当所得 ・給与所得 ・公的年金 ・雑所得 ・譲渡所得 |
今回は、給与所得のため確定申告書Aを例に挙げています。
確定申告はe-Taxや国税庁のサイトがおすすめ
e-Taxまたは国税庁確定申告書等作成コーナーを使う場合、必要な場所に数字を入力することで、自動的に計算を行ってくれます。さらに、令和3年分の確定申告以降は、お手持ちのスマホのカメラで源泉徴収票を撮影することで、記載内容の自動入力が可能になりました。
ここでは、源泉徴収票の記載内容を確定申告書Aの第一表に書く方法について、簡単に説明しておきます。
【収入金額等】
源泉徴収票の給与合計額「支払金額」を「給与㋐」に記入
【所得金額等】
源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を「給与①」欄に記入
【所得から差し引かれる金額】
源泉徴収票の「社会保険料等の金額」「生命保険料控除額」「地震保険料の控除額」や、基礎控除48万円などを記入
確定申告書A 第二表は、第一表の内容をそのまま記載します。大きな違いは数字だけでなく、社名、保険料の項目など具体的な内容を記載する点です。
難しい計算などは必要なく、必要書類を揃えておけば、転記するだけで終わります。
2ヵ所以上から給料をもらっているなら、基本的に確定申告が必要
2ヵ所以上の会社から給料をもらっている場合、基本的には確定申告が必要です。「従たる給与」が年20万円を超えない場合など、不要なケースもありますが、医療費控除や寄附金控除を申請するためには、確定申告が必要です。
控除できるものは控除し、大事な自分の資産を守りましょう!だからこそ確定申告の一連の流れは、覚えておいて損はありません。
【今回のポイント】
- 「従たる給与」が年20万円を超えなければ確定申告は不要(ただし、医療費控除などを申請したい場合は確定申告が必要)
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」は1ヵ所の勤め先しか提出できない
- 確定申告には、源泉徴収票が必要
- 確定申告はe-taxや国税庁確定申告書等作成コーナーを活用すると簡単
文・柚月朋子
フリーランスとしての経験やポイント投資からスタートした経験を活かし、年間200本以上の記事を執筆・監修。投資初心者にわかりやすい記事執筆が目標。